8.因果鉄道各駅ガイド
〜『電氣菩薩』(上巻)刊行の現在から読み直す『因果鉄道の旅』〜

注)
 以下の文章はHP管理人が執筆したものです。ご本人から公式ホームページ掲載の許可を頂いておりますが、根本さんご本人の文章ではありません(一部注釈は除く)。そのため、ご本人の見解やニュアンスその他とは異なる可能性もありますので、その点をあらかじめご含み下さい。

虚構(漫画)と現実(因果者探求)の垣根は完全にブチ壊され、虚実がひとつになった根本敬の現在

 ケンゾウ(女王様):「どうだレイコ、処女(アナル)を奪われた気持ちは!」
 レイコ(奥崎謙三):「あ〜、あ〜、ケンゾウさん、いいわあ、あ〜」

 かの神軍平等兵・奥崎謙三氏が出所後、異常なハイテンションの中で撮影された映像『神様の愛い奴』。これは人類史上最も神様に愛された奥崎謙三が、万人を一様に生かす理想社会・ゴッドワールド建設のために、そして、地獄のニューギニア戦線で戦死した多くの戦友を供養するために、セックスをトコトンやりまくるもの。
 まるで根本さんのマンガのような話ですが、それが生の現実として目の前に起きたのです。女装した奥崎先生が男装のSM女王様にレイプされ、ペニスバンドが菊門から出し入れされた瞬間を、根本さんは「特殊漫画家にとっての虚構(漫画)と現実(因果者探求)の垣根は完全にブチ壊され、ひとつになった至高体験である」と述懐しています(青林工藝舎刊『心気一転土工!」』を参照のこと)。

虚実一致の果てに出現した、「飛び出す特殊漫画」という新しい創作/表現領域
 こうして虚実の壁を超えた結果、根本さんの全創作活動(日常活動も含む)は、過去の活動と連続性はあるものの、「ここまでスゴくはなかったよな」と嬉しい悲鳴を上げざるを得ないほど、虚構(漫画及び創作活動全般)と現実(因果者探求も含む日常生活全般)が同時多発的に一致しはじめました。その相乗効果と気軽さとさりげなさは赤軍的地下暴れです。
 端的な例としては、最初は「ごく普通」に出所した奥崎先生をお持てなししていただけなのに、気が付いたら女装した奥崎先生に延々怒られて、「セックスをお願いします」と何度も土下座している根本さん及びスタッフ、という光景。これ自体が従来の常識をうち破った、前衛的な 「特殊漫画」ではないでしょうか。
 根本敬原作の漫画(としか思えない)の登場人物や出来事が単なる虚構に留まらず、水木しげる先生が描くところの妖怪(根本敬注※因みに水木先生は『さむくないかい』が出た当時、『ガロ』でその広告を目にした際、登場人物らに妖怪を感じ、御自ら青林堂へ「送ってくれ」という電話をかけたそうです)が人間と化したかのごとく、紙から飛び出し、21世紀日本の現実社会を動き回り、思わず「まるで漫画みたいだ」と呟いてしまうようなマヌケな珍騒動(時には怖い事件もあり)を世の中に起こしまくる。
 根本さん自身やその周囲の関係者だけではなく、それを本で鑑賞しているだけの読者もうっかりすると、まるでキツネやタヌキに化かされたように、気が付いたらその珍騒動に巻き込まれてクダラナイ経験をしたり、ひとり歩きして暴走する主人公のために時にはひどい目にあったりする。
 そうしたマヌケ(魔抜け)なシチュエーションを、社会的現実や事実として出現させること自体が、現在の根本さんの創造活動の新境地(ステージ)であり、登場人物からそこで起きる騒動までが、根本さん原作の新たな創作物、(昔存在した、「飛び出す絵本」というものに類推・比喩を借りれば)「飛び出す特殊漫画」と形容すべきものではないでしょうか。
 この前人未踏のアヴァンギャルドな「飛び出す特殊漫画」は、「紙の上に描かれたものが漫画である」という従来の定義をやすやすと突き抜けて、「漫画か、文章か」とか、「フィクションか、ノンフィクションか」とか、「ウソか、マコトか」とか、「日常か、非日常か」とか、「幻覚や神秘体験(狂気)か、理性的な判断(正気)か」とか、「しょせんマスコミや業界に取り込まれて消費されてしまう、資本主義社会における商品のひとつにすぎないのか、あるいは高尚で特権的(超越的)な現代アートなのか、それとも価値判断や意味付けをひたすら拒否するのみの、アンチのためのアンチのようなカオスなのか」といった枠組みをぶち壊した果てに誕生したものです。
 このステージに突入した時、漫画の方もよりラジカルな(前人未踏な)表現へ向かい、文章系の単行本も『電氣菩薩』に集約されるように、一般人が理解できるギリギリの合理性の中で、因果者が持つ強烈な狂気と魅力を最大最凶かつユーモラスで楽しく伝えております。そして「映像夜間中学」に代表されるトークショーやライブイベントでは、貴重な映像や音源その他の資料素材を駆使し、根本敬という人物を中心に膨張かつ収斂する「因果のほつれや毛玉」としか形容の仕様がない世界を、参加者に体感してもらえるよう、精力的に行っております。

『因果鉄道の旅』 -『電氣菩薩』をメイン鉄道とする因果者探求三部作
 そうした経緯を経た現在、因果者探求の原点である『因果鉄道の旅』という著作の持つ、先駆的な意義と現在的な可能性と魅力が再浮上して参ります。
 根本さんが因果者探求を文章中心で紹介した著作は、三つあります。『因果鉄道の旅』『人生解毒波止場』『電氣菩薩』(現在は上巻のみ発行)ですが、根本さん自身のコメントにもあるように、『電氣菩薩』は『因果鉄道の旅』の流れを汲むものであり、いわば因果鉄道のメインラインです。それに対して、『人生解毒波止場』は電波系とドヤを中心に、ソフトタッチにまとめた外伝的趣があり、メインラインにおける支線ともいえます。

『因果系宇宙の歩き方1』としての『因果鉄道の旅』
 『因果鉄道の旅』では、因果者としか形容の仕様がない「妖怪」たちを徹底的に取材し、その人が持つ混沌を全面肯定した上で、その人を中心として広がり、時には他人にすら襲いかかってくる特殊な「宇宙」の因果律や世界観を我々一般人にも理解可能な形で、しかもエンターテイメントたっぷりに明らかにしたものです。
 敢えて要点をまとめると、本質的に人の数だけ、否、一人で複数の世界を持つ人もいますから、とにかく地球の総人口以上の、無数の世界(宇宙)がこの地球上には混在してあり、その宇宙は一つ一つ異なるものです。その中で一人一人は他人の宇宙と関係や影響を受けつつも、基本的にはその当人を中心にした宇宙の中で、その宇宙法則や因果律にしたがって、人生を過ごして参ります。
 また、それぞれの人は固有の性質を持っています。その性質が時空に働きかけると、運命を呼び、運命がまた性質に次なる影響を与えるのですが、その循環活動を「ホシ」と呼びます。ホシには磁力の強弱があり、例えば因業凶悪な内田氏のホシの周囲にいた、食堂のおばさんのような薄幸なホシが「飛んで火にいる夏の虫」状態で取り憑かれることも実際に起こり得ます(詳細は『因果鉄道の旅』を参照のこと)。
 根本さんはこの本で、読者が、無数の他人の宇宙(ホシ)と連関しながらも、一人一人が自分固有の宇宙に生きていることをまず自覚するよう提案しています。そのことを根本さんは、「本当の事いう。己のホシを知らなきゃダメ。お宝はそこにある」と独特の表現で皆さんにさりげなく提示していることに、ぜひご留意願います。
 また、自分のホシを知る方法として、「犬も歩けば棒に当たる」という諺を引用しながら、「自分が偶然出会った棒が、実はその人のホシを象徴していることが多い」とし、「各自が出会った棒を10本くらい並べてみれば、自ずと見えてくるだろう。これはライターや作家や漫画家になろうとして、自分なりのテーマや方向性を模索している人に役に立つかもしれない」と述べられています。特に漫画家や作家志望の人には、このアドバイスをぜひ生かしていただければと思います。
 「イチローに読ませたい本」と松尾スズキさんが推薦されたり、スチャダラバーさんや小山田啓吾さんが何度か紹介してくれたこの『因果鉄道の旅』。渚ゆうこさんは上京初の誕生日に友人からプレゼントされたのがこの本である、というイイ話もあります。
 根本さんが現在進行形で描く「アヴァンギャルドな新しい創作活動」のとりこ仕掛けを読み解くためにも、『因果系宇宙の歩き方1』というべき『因果鉄道の旅』をぜひ再読願います。

因果鉄道各駅ガイド
 ではここで、『因果鉄道の旅』に収録された因果者を、人間鉄道になぞらえれば駅となりますが、始発駅から各駅を簡単にご紹介したいと思います。詳細は『因果鉄道の旅』でお楽しみ下さい。

K教諭K教諭
 典型的な文部省推薦の、清潔で健全な学級(担任及び同級生とその親たち)の中で、拷問のような孤独な日々を過ごしていた若き日の根本少年。そんな無限地獄を天然のズルムケ下品パワーで一瞬にしてブチ壊してくれた命の恩人。吉田佐吉のモデルでもあり、根本敬の因果鉄道の始発駅である。
 根本さんの卒業後、K教諭の活躍(?)は『週刊朝日』に取り上げられたが、そのタイトルも「暴力教師に支配されたこの不気味な教育現場」。職員室で酒をガバガバ飲んで、校長先生をバンバン殴り、同僚を刃物で脅し、授業をさぼって競馬に行き、女生徒の体に触り、父兄から金品を騙し取る等々。八面六臂の大活躍であるが、特に根本さんが喝采したのは、すべての教師が蛇ににらまれたカエルのごとく、おっかなくて逆らえず、教室では健全正義そのものの担任の先生がK教諭のパシリ、犬の一頭に過ぎなかったこと。根本さんはK教諭以来、親父のズルムケな下品パワーやその破壊力を信奉するようになった。

内田研究内田研究
 根本さんの大学時代の同級生。同じ二十歳前後の若者であるにも関わらず、障害を持つ定食屋のババアをセックスと暴力で支配して、長年コツコツ貯めたお金ばかりではなく、福祉の金にもたかり、店を潰して、夜逃げすると、潜伏先まで追いつめる執念深さと陰惨さの持ち主。
 同時に底抜けにマヌケで陽性で、同性や同世代の女や押しの強いババアにはまったく逆らえず(きちんとした大人は当然)、石野真子のファンで「マコちゃん、マコちゃん、マンコちゃん」と言って赤面し、照れ隠しに口一杯に空気を含んだ顔がペコちゃんそっくりで、「おっ、石野真子そっくりだぞ」と言うとニタニタ笑ってまた赤面するという、どうしようもないほど程度は低く、くだらない人物。
 決して他人とは争えない小心者であるが、自分より弱い者には悪魔のようになれると同時に、都合の悪い情報は無意識に捨象し、自分の好都合だけで自分の世界を作り、そこに浸りきり、一日中テレビでアイドルの歌番組を見たり、鏡の前で髪をとかしたり、コーラをがぶ飲みして、石野真子の「ワンダーブキウギ」を聴いているだけの男。
 そんな男が町中の噂を独占するほどの騒動を引き起こすと、根本さんは同級生の船橋英雄(後の幻の名盤解放同盟員)と一緒に「内田研究」を行い、濃密なミニコミも発行。この時の活動が後のフィールドワークの基礎となったという。「この男との出会いがまさにビックバン」と根本さんの弁。
 ちなみに現在の内田氏は実家で家長として君臨し、たまに東京に来ては根本さんや船橋さん、山野辺氏と旧交を温め、職業はデザイン会社でアルバイト(と内田氏には説明している)の根本さんに「まったく、お前もいい加減に真っ当な人生を歩めよ」と説教をし、「俺も昔はいろいろあったよなあ」と目を細め、カラオケで「あなた」や「昴」を熱唱しているそうだ。

山野辺君山野辺君
 大学の同級生。いつもダブダブのズボンを履き、若いのに脂ぎっていて、モルモットのような人物。自意識や他人への意識は乏しく、習性だけで生きている生物。大学時代からの友人であるにも関わらず、山野辺氏は根本さんの職業を知らない。というよりも、そもそも向こうは根本さんに、「ご兄弟は」「出身は」といった類の質問をしたことが全くない。15年つき合って、名前で呼ばれたことも2〜3回しかなく、ある日唐突に「根本君」と呼ばれて、「ああ、知っているんだ」と根本さんがびっくりしたくらいである。
 極めつけは大学卒業後、内田氏が上京し、皆で渋谷で飲んだ時、センター街の脇道にある中華料理屋を見て、「へえ〜、渋谷にも中華料理屋があったんですね」と衝撃の発言。現代日本で生を全うしながら、渋谷にも中華料理屋があることを発見して驚いたり、感心することは、なかなか真似できることではない。

蛭子能収蛭子能収
 昔からエビスさんのファンだった根本さんは、漫画のイメージからエビスさんを「神経質で怖そうな人」と畏敬していたという。ところがガロのパーティーで初対面した当人は、中国から連れてこられた熊みたいであり、映画「フリークス」に出てくるピンヘッドそっくりであることに大ショックを受けたという。
 根本さん曰く、エビスさんは動物性原理の塊であり、自意識やプライドなど人間的な意識がものすごく乏しい。自意識欠如の無意識過剰な人物であるが、そうでありながらも芸能人であり、高額所得者で社会的には成功者である。この常人には超えがたい矛盾を易々かつ無意識に乗り超え、日々生活していることがエビスさんのすごさのひとつであるとのこと。
 ちなみにエビスさんと安易に関わると事故や不幸な目にあうという怖い法則(因果律)がある(特にサイン本をもらってはダメ、ゼッタイに)。直接ではないが間接的には何人も殺している、推定有罪の妖怪でもあり、その類の話は『電氣菩薩』を参照のこと。

ユン・ソンスク老人ユン・ソンスク老人
 根本さんたちが釜山で出会った、謎の韓国人フリーガイド。すごく日本語が堪能の老人であるが、初対面でいきなり、「今、日本ではオマンコのことをワレメちゃんと言うんですよね?」と何の脈絡もなく尋ねてきたという。
 やだらにエロ話を連発し、「わたしゃ二十歳まで童貞だった」と衝撃の初体験告白も、これまた何の脈絡もなく始める素晴らしさ。ちなみにガロビデオ『因果境界線』にはユンさんの貴重な初体験話がライブ録音で収録されております。必聴です!
 ちなみにユンさんに再び会いに渡韓した際、幻の名盤解放同盟が当時編集に関わっていた『官能旋風』という三流エロ雑誌の見出しに、ユンさんの名フレーズである「ワレメちゃん」を連発使用。「ワレメちゃんぐっしょり」「ワレメちゃんばっくり」などの見出しが満載の、ユンさんのためのスペシャルエディションをわざわざこしらえて、ユンさんにプレゼントしたそうです。
 このスペシャルバージョンの『官能旋風』は現在、根本さんの手元にも残っていないため、もしもお持ちの方がいらっしゃったら、ぜひご連絡下さい。お譲りいただければ幸いです(条件などはご相談に応じさせていただきます)。

文(ムン)さん文さん
 ソウルオリンピックの頃、韓国絡みのレコード企画がちょっとしたブームになり、同盟もその手の仕事で渡韓したところ、B&Bの洋八そっくりの親父が部屋に入ってくるなり、「僕ベトナム戦争行って、国際梅毒になったよ」と大声でエロ話の連発。
 戦争体験の話というと普通は悲惨なものが多いが、文さんはベトナム戦争に行って、現地の売春婦とやりまくり、実戦前に国際梅毒にかかって療養している間に戦争が終結した経験の持ち主で、売春と国際梅毒以外の戦争体験がないという希有な人物。
 肝心の国際梅毒とは、「ふーん、あなたが罹った梅毒はそんなもんですか。私のはそんじょそこらのものじゃないですよ。何て言っても国際梅毒ですから」というニュアンスのもの。
 ちなみに文さんは「日本のトルコ(現・ソープ)は高い」と指摘。「3発はやらないと損をする。1発目はとにかく出す。2発目が勝負。3発目は集中力」だそうである。期待されながらもなかなか結果を出せない今年の原ジャイアンツ(結局、原は屈辱的な、事実上の解任)やサッカーのジーコジャパンにぜひ聞かせたい金言である。

サバヒゲサバヒゲ
 自称・超能力演歌歌手。川端康成の愛人のスージーとつき合っていたと豪語し、宇宙パワーで歌手になった男。年齢もサバヒゲ(サバ読み)しており、出会った時は根本さんたちと同世代だと言い張るものの、どう考えても10歳以上年長であったそうだ。
 最初はチャネリングができるとか、将来を占えるという程度であったが、同盟との邂逅により、「僕の前世はキリストなんです。でも空海という可能性も捨てきれない」と悩んだ末、「霊的な魂のレベルでは空海の生まれ変わりであり、肉体的な遺伝子のレベルではキリストの血を引いている」と確信。あらゆる奇跡が行えるところまでパワーアップした。
 前世を見ることができるというので湯浅さんが占ってもらったところ、「う〜ん、鶏肉と豚肉がぶら下がっているのが見えますね。あなたの前世は肉屋です」と断言する驚異の霊能力だ。
 常磐ハワイアンセンターにサバヒゲが出演した時、応援にかけつけた同盟と飲み会になり、サバヒゲは「皆さん、僕の後援会として、サバを食べる『サバを食う会』というのを作りましょう」と発言。それを聞いた船橋さんが「サバヒゲさんは空海の生まれ変わりですから、『サバを食う会』なんですね」と何気なく指摘したところ、「空海で食う会。あーっ、こんなところにも因縁が働いている」とビックリ仰天し、ブルブルと小刻みに震えながら涙ぐんでしまったそうだ。

しおさいの里の本多さん本多さん
 千葉の田舎で犬500匹を買っている、元・金庫破りのロマン派。病気にかかった犬がウヨウヨし、野原には寒風が吹き荒れ、500匹の犬が狂ったように吠えまくる戦場のような現場で、行き当たりばったりで犬の世話をするものの、焼け石に水状態。
 だが、本多さんは犬の救済そのものが目的ではなく、「人の真似ができない無限の大事業をしたいんです」と熱く語る。「山を買い、捨て犬や捨て猫を全国から引き取り、治療を施す。犬の宿舎、猫の宿舎、ボランティアの人達とその家族が住める大きな建物も建てたい。そして孤児院も作って、全国から孤児を集める。で、私が教育して、国のお役に立てる立派な人物に育てない」という無限の大事業のために、日夜闘い続ける本多さんであった。
 ちなみにしおさいの里にいるボランティアのジジイの一人がエサ用のたらいをわざわざ洗剤できれいに洗い、それを横で見ていた根本さんに「こんなことは無駄だと思うだろう?でもやるんだよ!」と叫んだことがあの名言誕生の秘話である。

勝新太郎勝新太郎
 改めて説明をするのが不要なほどの大スター。根本さんは中学生の時、友人に「勝新が『マイウェイ』を唄うのを見ちゃった」と聞かされた時、水爆のような弾けたイメージが脳裏に浮かんだという。そして『ザ・マン・ネバーギブアップ』(後に解放歌集として発売)を聞いて、「自分が追求しているラインの人」と改めて確信。
 『宝島』のインタビューで勝新に初めて会った時、コカイン事件にふれて「刑事になって取り調べるのも俺だし、取り調べられるのも俺。つかまえるのも俺で、隠れて吸っているのも俺。裁判官が俺で検事が俺で弁護士も俺。出てくる玉緒も俺で、カメラを回しているのも俺で、ヨーイ、スタート、カットと言っているのも俺」と言いながら、座頭市になったり、大宮喜三郎になったり、朝吉になったり、始皇帝になったり、提婆達多になったりし、聞いている根本さんや湯浅さんやその場にいたスタッフ全員が勝新になり、ビールもコップも皿も皿の上のチーズやサラミやクラッカーもライターも灰皿もタバコもテーブルもイスも窓も窓から見える景色も夕日さえ、すべて勝新になったという。
 そんな勝新が「空気の中に電氣菩薩みたいなものがいるんだよ」と重大発言(『因果鉄道の旅』の本文では菩薩と表記)。この電氣菩薩が勝新であり、老荘における道(タオ)であり、仏教における空であり、禅問答における仏性である、と感じ入る根本さんであった。

 と、ここで「電氣菩薩」という言葉が出たところで、この先の駅は『人生解毒波止場』『電氣菩薩』へと続きますが、それはまた別の機会に。

因果系宇宙の旅は、人間鉄道に乗って、サービスの彼岸へたどり着く。
かくして根本敬は磨かれた。
本当の事いう。己のホシを知らなきゃダメ。お宝はそこにある。