因果航海日誌
根本敬さんの、とりこじかけの明け暮れをご紹介します。

3.根本敬「映像夜間中学」西日本補講ツアー〜其の一、京都編(2003.8.2-3)

 初日(8月2日)の京都みなみ会館は、一階がパチンコ屋(昔は一階も映画館だった)で、古いがムーディーな映画館。楽屋で待機中、上映していたのは「シティ・オブ・ゴッド」。スラムの子供達が本物の銃で殺し合い、本物のギャングとして出世していく単館上映ブラジル映画の話題作で、聞こえてくるサントラがなかなか良い。スペイン語による日本のムード歌謡コーラスみたいな曲からJB迄、バラエティに富む。
  会場側のビデオ係の人が「夜間中学」の模様を記録(ビデオ)させてくれという。みなみ会館のホームページにも出すため、と。内心少し嫌だったが「ハイ、いいですよ」とまるでココロヨサソウな良い返事で了承。
 が、翌日聞けばビデオがちゃんと作動せず、撮れていませんでしたという。「画面に出てくるのは奥崎筆頭に皆、妖怪ですからね。そういう事があっても不思議はないですよ」と俺は言った。係の人は「我々(映像)の世界でも霊が出るとか、そういったいわくのある現場に行くと、やはりビデオや電子機器が急に作動しなくなったり、妙なものが映っていたりという話はよく聞きます」と答えた。
 それから昨年晩秋、かなりの舌癌で大手術をし、三途の川のほとりから生還した、幻の名盤解放同盟員(湯浅、船橋)もメンバーであるところの、ノイズもしくは即興演奏バンド、わかたけ。そのバンマス浜田さん(47歳)が楽屋に現れ、思わず固い握手。ギュウッギュウッと手を握るその指先からは生きようという力が強く感じられた。
 元来、喋り好きの浜田さんだが、今はもう喋れないので筆談。チラシの裏に言いたい事を次々に書くが、言葉は練れている。こちらもそれに応え、答を紙に書いていく。
 が、途中で浜田さんの饒舌ともいえるアクションから、喋れないだけで耳は聞こえる、つまり俺は紙に書く必要はなく、口で喋って答えれば良いと気付いた。
 「筆談」という言葉に対する先入観。こういうちょっとした事に囚われ、当たり前の事柄に気付くまで、多少なりとも時間を要する自分の脳であった。(続く)

  浜田さん
 浜田さんと根本さん