2000年8月22日 2003年3月16日追加

個別指導の場での特別なニーズ教育
ADHD


落ち着きがない、気が散る、順番を守れない、じゃまをする、話が聞けない、
忘れ物が多い、すぐに暴力をふるう。


低学年ではまだまだクラス全体にこうした子も多いが、ほとんどの場合、やがて
は落ち着いてくるようである。
しかし、
ADHD児はそれが頻繁でいつまでも尾をひき、学年が進んでも、授業に集中で
きない、すぐに立ち歩く、集団行動での問題行動等がなくならないといった事も
少なくない。


これらの問題行動は躾の失敗やその子の我が侭というわけではなく、脳機能障
害に起因するものだと捉えるなら、教育の場ではどんな対応をとっていく事が必
要なのであろうか。


ADHD児には、
「ある程度の落ち着きのなさは あるものなのだ」という視点で 対応していく事が
必要なのかもしれない。
少なくとも、脳の機能がまだまだ未発達な低学年期には、
注意の集中や持続ができない子、多動で立ち歩く子をたびたび叱責する事に使
うエネルギーを、それらの子でも参加できる授業の形態や中身を作る事に振り
向けて行く事の方がより有益なのではないかと思われる。


個別指導の場でその下地作りをするという視点で、その内容をまとめてみた。
通常の学級や家庭では何ができるのかも、後のほうに少し書いた。 



個別指導の場では、以下の事を目標にしたい。
■学習への意欲を育てる・・・・・・(不注意・多動性)
■注意・集中の力を育てる・・・・・(不注意・多動性)
■自己モニタリングの力を育てる・・(衝動性)

■学習への意欲を育てる
国語や算数などの教科の指導に力を入れる事を提案したい。
通級などの個別指導の場は、他からの刺激が少なくADHD児の苦手な注意の
集中も多動もコントロールしやすい場である。どの子も、通常の学級ではなか
なか見られないで  あろう注意力と集中力と穏やかな一面を見せてくれる。


自分もできるようになり、認められたいという意欲」
「自分にもできたという成就感、自己有能感、自信」


わかる事出来る事は、クラスの中で自信を失いがちなこの子達に最も必要な
もののひとつである。指導の際には以下の工夫が考えられる。



(指導の工夫)
・初めにその日の学習予定を知らせる。

・一枚の問題数を少なくしたプリントを数枚用意するという形式にする。

・興味関心のある事を教材に取り入れる。

・得意な学習と苦手な学習を適度にミックスさせる。

・注意の集中がしやすい視覚教材を多用する。

・集中しやすいパソコンソフトを活用する。

・終了時にはゲームをするなどの褒美を用意する。

・情報(友達や大人、本やTVからの)活用の意識付けをする。

・学習スキル(暗記、ノートのとり方、まとめ方、読み方、 間違いの見つけ方
 等)の練習をする。

■注意・集中の力を育てる
楽しめるゲームを活用する


聴覚的な注意・集中力                                   
・関心のある話題の聞き取り


・スリーヒントゲーム

・連想ゲーム

・クイズ

・特徴を聞いて指定された人を当てるゲーム

・指示にしたがって行動するゲーム


視覚的な注意・集中力  
・そっくりさんゲーム


・ます目の数を利用した絵の描き写し

・文字の暗号解きゲーム

・特徴を読みとって指定された人を当てるゲーム                    

・指示を読みとって行動するゲーム


その他
・パソコンソフト        

■自己モニタリングの力を育てる
衝動性の問題の解決の為にはこの力の育ちは重要である。

自分は周囲からどう見られているのかに気付くセルフモニタリング」
「自分ができる事と今はできない事を理解し今後を見通す力」


叱ったり謝らせたりする事だけでは力は育たない。
指導の場面で、以下のような内容を取り入れていきたい。



不適切行動の振り返り
・事実の確認。

・その時の本来的な解決法の学習。

・言葉で気持ちを伝えた方が、他の人にも受け入れてもらい安く、自分
 も快適であるという事の認識。



自己と他者への気付き
注意散漫や刺激の入りにくさから自己と他者の関係のモニターが困難で
あると言われる。
・自分は何ができ、何ができないのか。


・相手がどの様な人であるか。

・対人、社会的文脈の中で、今自分はどの様な状況にあり、何を期待さ
 れるているのか。



自己決定力
・自律的な自己決定の場等のロールプレイング等で、 自分自身で判断し
 行動する場面を数多く経験する。

 この事は自分にはこのようなことができるという自己有能感の育成に
 もつながる。



スキルの実践
小集団でのゲーム等を通して
・社会的ルールを学ぶ。


・自分の考えや感情を相手に適切に伝える。

・相手の気持ちを感じ取る。

通常の学級や家庭での対応
通常の学級で

把握と記録 どんな場面が苦手か
どんな場面では集中できるか
どの位なら持続できるか
 


注意の集中 ・課題提示









・口頭指示



・板書


・刺激の制限
(聴覚・視覚)
具体的に(例)    
× ていねいに書く
〇 マスから出ないように書く
× 静かに待つ
○ 〜が済んだら〜をする   etc

今の状態に合わせ、段階的に(例)
× 教室から出ない
○ 予め、行く場所や時間を決めておく。  etc

可能な限り文字や図など視覚的提示と併用
フラッシュカードも有効
ひとつずつ、順番に

単純明快に
色チョークなどで重要事項を強調

今の課題だけを机上に
新しい教材は事前に見せて馴れさせる
窓際の席は避ける
掲示物の量や場所の制限
注意の持続

・時間の意識化



・課題の提示方法



・見通し



・教材提示、指示、補助
時計、砂時計、タイマーの活用
回数、10かぞえるまで、〜をやってから等の具体的指示

細分化、分量の調整で達成感を
短時間ごとに課題を変える 
順番の配慮(交互、最後は気分良く終われるように) 

分量や順序、注意点を事前に予告(一覧表、スケジュール表)
終わった課題は消し、残っている課題を明らかに

完成品を見せイメージ化
肩をたたく等のサインで注意の喚起を頻繁に(他児の前で叱るのは避ける)



衝動性 ・ソーシャルスキルトレーニング

・他児への指導と援助の働きかけ
学活で交代、順番、待つ等のルールを取り入れた遊び
相談の仕方、ルールの確認




多動性
・外遊びの時間の確保 

・気分転換
おにごっこ等の動きの多い遊び

授業中も身体を動かす課題の取り入れ


成就感、自己有能感

・意志の尊重

・成功経験



順番を決めたり選択したりする場の設定

得意、興味・関心のあるものの取り入れ
本人のペースを大事にして待つ
頑張れた行動を思いきり誉める
仕上げを本人にやらせる等補助場面の工夫


注意と叱責
回数は少なく
強く(友達の心や身体を傷つける言動)
短く(他の場面は叱るより良い方法を手短に伝える方が効果的)

家庭で
・まずは親が冷静に。子供と話をするときは言い争いにならないように自己
 のコントロールを。

・絶対に許してはならない事と今は許しても良い事を区別する。
 前者には短い厳しい叱責、後者には簡潔で やさしい説明や注意をする。

・特に友達に怪我をさせたりした場合等には親も一緒に謝りに行くなどして
 行動の良し悪しと事の重大性をしっかり認識させる事も大切。

・一方で本人の良い所を、できる限りほめる事も重要。

・問い詰めて、混乱をさせないように。
 それらの問題行動は、彼らにとっては 状況が理解できなかったり、思わ
 ず手が出てしまったり等、自分ではコントロールできなかった結果として
 の本人にすれば”正当”なものであるという場合が多いからである。

LD、ADHD、
高機能自閉症やアスペルガー症候群の
子ども達の理解と指導の為に