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堀田幹子さん(岸和田市・家族)
 皆さんこんにちは。私は昨年11月に岸和田保健所より、難病患者の夫の介護について考える機会をいただきました(「難病事業地域関係機関研修会」で講演)。
 夫の堀田敬也はALSを発症して7年目、気管切開をして5年目になります。
 介護は主に私がしておりますが、なかなか完璧にはできず、夫はずいぶん不満のようです。なぜそうわかるかと言いますと、一日中鳴っている私を呼ぶコールです。最近では光センサーをつけている眉の上の筋肉も動きが悪くなり、誤作動もあるとは思いますが、とにかく一日中と言っていほど鳴っています。
 コールのつどベッドをのぞきに行っても、あくびなどの反射で筋肉が動いて鳴っていることが多いので、最近は私の方がコールに鈍感になってしまい、吸引して欲しかったり、トイレが間に合わなかったりで、結局夫には不満は残るし、私自身は余分な仕事を抱えてしまうことになっています。
 ALSは進行する難病です。進行に応じた介護を必要とするわけです。私もさまざまな方に在宅での介護のノウハウを教えていただきました。本日のような総会やKAMONの交流会も、大変有意義なことだと思っています。患者、家族や支援者の方々は皆さん前向きで、本当は相当深刻なのに元気で頑張っておられる様子には本当に励まされます。自分たちも「頑張らなくては」と思うばかりです。夫も、もう少し寛容な心と忍耐強く人を育ててくれたらと思うのですが、無理な話でしょうか。
 昨年12月から新しい医療チームを岸和田保健所の難病担当係で探してくださり、スタートいたしました。今度は医療と看護は、別の所から来ていただいております。看護は2カ所のステーションからとなっています。新しい先生は、以前の先生と同じように在宅医療に熱心に取り組んでおられるらしく、新しい気持でお世話になっています。カニューレ交換も、徐々に出血も少なく、痛みも少ないのではないかと喜んでいます。しかし、2カ所の看護ステーションの看護師さん達にも、夫は相変わらず厳しく接しています。私も、夫の要望を伝えるため、その場を離れることもできません。2〜3回来てくれた看護師さんだったので、どうしてもしなければいけない用事のため、お願いして家を出たところ、帰ってきた私に、「指導もせずに逃げた!」と言うので、ケンカになってしまいました。
 今のところ何とか回転しているようですが、夫はこれからも考え方は変えずにやっていくと言っていますので、どのようになっていくのか、心配は尽きません。成るようにしか成らないと思い、不完全ではありますが、できるかぎりの介護をやっていくつもりです。
 公的機関のサービスも、申請すればまだまだ受けられると聞いています。しかし、人との関わりが困難なため、新たな苦労が待ち受けているのは言うまでもありません。
──患者も、支援してくださっている皆さまも、介護する家族も、みんながニコニコと機嫌よく、トラブルもない、そんな理想的な介護の仕方、だれか教えて!
 ……ありがとうございました。(拍手)
   “あの”堀田さんのこと
清野博子さん(大阪府立女性総合センター館長)

 清野と申します。会報の編集のボランティアをさせていただいています。

  近畿ブロック設立20年ということを先ほどお聞きしましたけれど、実は以前、私は新聞記者をしておりましたころ、高槻の中林基さんと出会いまして、私がつくっている紙面に毎週1回、中林さんの絵を掲載させていただきました。それがもう20数年前のことになりますから、私とALS患者さんとのおつき合いは、近畿ブロックより長いのかなあと思いましたが、そういう関係でALSの患者会の方々とは、いつもではなくて私の勝手な都合のいいときだけおつき合いをさせていただいているという、大変わがままな関係です。

 先ほどから司会、進行をしていらっしゃる水町さん。ご覧になっていて皆さん方もお気づきだと思いますけれども、とてもとぼけた性格、感じの方でいらっしゃいますが、結構人使いが荒いんですよね(笑い)。実は昨日もメールをいただきまして、岸和田の患者さんの堀田敬也さんのことに関して何かコメントせよというご指名でございました。

 と言いますのは、会報の57号で、堀田さまの奥さまが、泉南府民センターで開催された「難病事業に係る地域関係機関研修会」で講演なさったときの講演録を、会報用に編集するよう、これも水町さんに言われて編集したんですが、そのときに原稿を拝見して私はとてもびっくりして、このまま会報に載せていいんですか、と水町さんにメールしました。と言うのは、ご主人さまが、とても厳しく医療の方や看護師さんの方々におっしゃっていることを掲載したら、都合の悪いこともあるんじゃないかと思ったわけですが、水町さんから「いや、堀田さんのところは、そういうご主人であることをきちんと受け止めて、家族や皆様方がしっかりと介護されているから大丈夫です」と言われたので、その編集をしました。

 で、きのうのメールでは、「あの堀田さんの原稿です」と、“あの”がついたのですね。「あの堀田さんの原稿に関してコメントしてほしい」ということで、私も一生懸命に奥さまの読み上げられた原稿をあらためて拝見しました。奥さまの原稿には私、とても重要な問題提起がたくさん含まれていると思います。

 一つは、主治医とは一体何か、ということなんですね。主治医というのは、病気に対する治療をなさる、そのお医者さんということではなくて、患者さんに対する主治医であらねばならないと思います。

 今、かかりつけ医をもちましょうということがしきりに言われています。実は、後期高齢者医療制度、大変問題になっておりますけれども、そこでもかかりつけ医をもちましょうということが制度としてあります。ただこの場合は、わずか6千円の診療報酬しか出ないので、これは大変問題があるということが指摘されています。けれども、かかりつけ医をもつということは、一つ一つの病気に対してタテ割りでお医者さんがかかわるのではなくて、一人の患者さんの全存在を主治医としてまず受け止めて、診てさしあげていくことがかかりつけ医の本来の役目だと思います。

 それから数年前から医薬分業になっておりまして、薬局のほうでもきちんとカルテをつくって、いろんな病院から処方されてくる薬を一元的に管理をしてくださっています。そういうことも、それぞれの病気に対する薬ということではなくて、一人の患者さんに対して、どこからどういう薬が処方されているか、これとこれとを併用しても大丈夫かということを、きちんと薬剤師さんが専門的能力においてチェックされているという意味でとてもいい制度だと思います。そういう意味で、主治医というのは患者さんのすべてにかかわる存在でなければいけないと思います。

 もう一点は、ご主人がスタッフの方に大変厳しい注文をなさるということを、奥さまは大変気にされておられまして、せめてもう少しソフトに対応してくれたらいいなということを原稿にも何度も書いていらっしゃるんですね。けれども私は、ご主人が厳しくおっしゃることに拍手を送りたいというふうに思います。なぜならば、もちろん、一患者と医療スタッフといえば力も情報量もすべて医療スタッフのほうがはるかに大きな力をもっているわけですね。だから医療スタッフの言うがままに、お医者さんの言うがままに、良い子の患者さんになることは、それも一つの道かもしれませんけれども、でもきちんと自分の要求を伝えるということは、まさにご自分の命にかかわることですよね。看護師さんにとってはささいなミスと言うかもしれないけれど、患者さんにとっては命にかかわることであり、やはり自分の命は自分で守っていかなければいけない。それはご自分のことだけではなくて、ひいてはたくさんのALSの患者さんたちの共通の利益にもつながるというお気持ちをご主人はおもちになっていて、で、厳しくおっしゃっているんだと思います。

 和中会長のお言葉の中にも、「強情な患者です」というお言葉がありましたが、私は、強情で口うるさくてやっかいな、そういう患者さんであることが結局は、医療スタッフのプロ意識を育てることになるんだと思います。医療スタッフが緊張して堀田さんの家にこられるということですが、まさにその緊張感の中でプロはプロとしての技をみがいていくのだと思います。緊張感がなければ技というものはなかなかみがかれないと思うんですね。

 在宅療養の場というのはとても閉鎖的な場で、圧倒的な力をもっている医療スタッフ、専門家グループに、一患者、一家族はどうしても圧倒されてしまいますが、そうならないためにも、やはりこういう近畿ブロックのような交流会がとても大事だと思います。水町さんも先ほど「ALSのことを一番よく知っているのは、ALSを生きてきた人たちだ」とおっしゃいましたが、ALSを生きてきた人たちは本当にいろんなことを知っておられますので、この交流会でそういう知恵をお互いに交換して、一人ひとりの患者さんたちができるだけ良い介護を受けることができるような、そういう状況になればいいなと思っております。

 あと一点だけお話しさせていただきたいのは、私は長い期間ALSの患者さんたちとおつき合いさせていただいておりまして、ALSというのは本当に厳しい残酷な病だとは思いますが、逆に、こんなことを言ったら怒られるかもしれませんが、非常にすばらしい、すごい病気だなといつも感動しているんですね。

 中林さんの絵を掲載させていただいた経験からいっても、最初のころの絵は、もちろんご不自由なからだで描いていらっしゃるので、わりと素朴なタッチの絵でした。それが1枚1枚、毎週毎週描いていくうちに、本当に繊細なすばらしい絵をお描きになるようになられました。

 あるとき、高菜の葉を1枚描いた絵を新聞に掲載いたしました。高菜の葉にはプクプクと小さなふくれ上がりの部分があるんですが、そこが見事に描かれてまして、何人もの読者から「今日の絵を見て本当に心がふるえました」というお電話をいただきました。中林さんの肩書きに、難病と闘っていらっしゃるとか、そういうことは一切書かずに、ただ中林さんの絵であるということしか書いていないので、病気の方がお描きになった絵という注釈つきではなくて、1枚の作品としてその絵がたくさんの読者にすごい感動を与えたんですね。

 会報の表紙の絵を描いていらっしゃる杉本さんの絵にしても、最初のころに見せていただいた絵は、あじさいのとてもきれいな色調ではありましたが、フワッとした感じの花だけが描かれていた絵でした。それが毎回表紙を拝見するたびにすばらしい絵にどんどん深まっていくのですね。

 ALSという病気は、先ほど西村さんのビデオの中にもありましたが、頭脳と感性、感覚だけはきちんと研ぎ澄まされていくというのがありまして、本当にそうだと思います。

 今、私、会報の編集をさせていただいて、皆さま方の原稿を拝見しているのですが、この原稿がまたすばらしいのですね。今日、副議長をされた前原千珠さんの原稿を、最近ずっとレイアウトさせていただいていますが、おそらく今まで原稿をお書きになった経験はないと思います、だけどそれはすばらしい原稿なんです。私が新聞社にいたころに、こんなすばらしい記事を書く記者がいたらどんなに助かっただろうかと思うくらいの原稿です。もちろん中身のすばらしさも感動的ではあるのですが、やはりALSという病気を生きている、その現実がすばらしい文章を生み出していくのだと思います。

 私がぜひお伝えしたいと思うのは、ALSを生きている患者さんお一人おひとり、そしてそれを支えていらっしゃるご家族の皆さん方の生き方がたくさんの人に勇気を与えているということをぜひお伝えしたいと思いまして、ひとことお話をさせていただきました。ありがとうございました。(拍手)

 蛇足ですが、今、私、大阪府立女性総合センター、いわゆるドーンセンターの館長をしておりまして、実は橋本知事のもと、今存亡の危機に陥っております。皆さま方から存続のためのたくさんの署名をいただきましてありがとうございました。機会がありましたら、応援をよろしくお願いします。 (拍手)
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