| ハイボリューム・ベンチレーションのエッセンス | |||
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| こういうようにハイボリューム・ベンチレーションというのは、無気肺をつくらない、その意味から肺炎を抑えることができるということがありますが、いざ一旦風邪などをこじらせて悪化させたときに放置すると危険だということは、これは理解していただかないといけないと思います。その辺の認識の問題も含めて、換気量800ccとか900ccという形でやる場合は、よほど呼吸器のことをよくわかっているドクターでないと手を出さないほうが良いのではないかと最近は思っています。600ccぐらいの緩めの管理で、少々問題が起こってもあまり大変な状況をつくっていかないというレベルがいいのかなあと今は思ってますが、600ccでもおそらく無気肺は、たまに出ますけれども、治療によって改善し得る範囲じゃないかなというふうに思ってます。もちろん600ccでもいったん肺炎を起こすと気道内圧が上がりますから、それを放置すると、レントゲン写真を撮れば、肺が真っ白の状態になる。そういうことを避けるために、悪くなったときにはボリュームを下げて、気道内圧を下げる。少しでも白くなっていたら、抗生剤だけではなくてステロイドを使う。大体これがハイボリューム・ベンチレーションに関するエッセンスです。 | |||
| 鼻マスク式呼吸補助装置(NPPV)に厳しい思い出 | |||
| もう一つは鼻マスク式呼吸補助装置(NPPV)ですけれども、現在これが非常に話題になってます。私たち呼吸器科医の立場からいいますと、これが最初出てきたときに「大変だ」と思いました。たとえば肺気腫とか、慢性気管支炎のひどい方に、急性期は挿管して人工呼吸器につなぐのですけれども、目を覚まさせて、管を抜いてNPPVを着けると暴れるんです、「苦しい」と言って。「頼むから外してくれ」と頼まれることもあったりするなど、そういう意味で厳しい思い出がありました。 | |||
| 鼻マスク式呼吸補助装置を積極的に使用 | |||
| そういうことで、ALS患者さんにこれを導入するのは、私もちょっとためらわれたのですが、最初に導入した患者さんは、CO2が80%ぐらいに上がっている状態で、本人が「苦しい」と言い出したのでこれを着けたんですけれども、3時間後には鼻歌を歌ってるんですね。それを見て、これはALSの患者さんにはすごく合うのかなと思って、それ以後、積極的に私もこれを使っていくというやり方をさせていただいております。 | |||
| 在宅人工呼吸件数は増加 | |||
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これはちょっと古いデータですが、2001年のデータでは1万件ぐらい、在宅人工呼吸が非常に増えている、しかしその多くはNPPVのものだというデータがございます。もちろん気管切開の在宅も増えてまして、2001年のデータでは2500件という数字になっています。合わせて合計1万を超しているという現状があります。さらに今はもっと増えているのではないかと思います。 |
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| NPPVはわからないとよく聞きます | |||
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これは最初バイパップという名前、商品名が有名になりました。これは鼻マスクを着けている状態です。で、この方はニップネーザル、これはテイジンの機種です。やはり鼻マスクでこのような形で使います。 人工呼吸器の場合だと、たとえばダイヤルで1回換気量を何ぼにする、回数を何ぼにするということで、簡単に決められるんですね。ところがNPPVがわかりにくいのは、決めなければいけないことが多いので、どれが一番いいのか、医者もなかなかわからないということをよく聞きます。ぼくら呼吸器科医でも、慢性気管支炎等の患者さんに接合するというのは非常に難儀だったのですけれども、ALS患者さんは例外的に簡単なんです。IPAPとEPAPを決めていきますが、これは吸気のときの圧と、呼気のときの圧です。EPAPは一番低い値でいい、それも2.0がいい。ここに固定してしまえば、あとの呼吸状態で、このIPAPを調整するだけでいい。それだけでほとんど適合します。いま医大から、どうしても合わないということで私たちのほうに回ってくる患者さんが結構多いのですけれども、間違いなく医大側で合わせた値よりも低い値で必ず合います。そのコツはEPAPを2.0にすることです。 それはなぜかといいますと、慢性気管支炎等は、息が吐きにくい状態があるのです。それによって換気が落ちてくるので、EPAPを上げないといけない。つまり呼気の圧を上げて気道を広げてやらないといけない。そうでないと気道がふさがるという問題があります。ところがALS患者さんは、肺は本当はきれいなんですね。少なくとも慢性気管支炎等の患者さんの肺に比べたらずっときれいなので、全く圧をかけなくてもいいぐらいという状態があります。 |
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テイジンのニップネーザル |
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| ただもう一つの問題がありまして、実は2.0が使えるこういうNPPVの機種というのは非常に少ないのです。現状でみなさんが使える機種は、先ほどお見せしたテイジンのニップネーザルしか実はない。ニップネーザルでEPAP2.0を使って、あとは呼吸を見ながら合うか合わないか、ファイティングが起きないか、その辺で一番低いIPAPを決めるとまずいけます。ほとんど酸素の付加もなくいけるようになります。 | |||
| 球麻痺のない患者さんの気管切開=声の喪失は起こらない | |||
| もう一つは気管切開の問題です。私は、気管切開イコール人工呼吸器ではないということを、以前から強調しております。それと、気管切開は声の喪失ではないということですね。この二つによって気管切開を拒否する方がよくいらっしゃるのですが、「それはあなたの勘違い」ということですね。そのように説明させていただいております。球麻痺のない患者さんというのはしゃべれたり、飲み込んだりできるんですけれども、それでもやっぱり痰が出せない状況というのは必ず起こってきます。そのときに痰を出すために大変苦しい思いをされる。苦しい思いをされるのは患者さんだけではなくて、介護者も苦しいという状況が出てきます。それを気切するだけで20分かかった痰取りがわずか5秒でできるという状況になります。スピーチカニューレを使ってふだんはフタをしておけばいい。そうすれば今までどおり鼻マスクを使って、今までどおりしゃべることも飲み込むことも可能になります(スライド6)。 | |||
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| 「生きていこう」と決めた患者さんには早期の気管切開 | |||
| それでも、やっぱりこういう方々も悪化するときがあります。突然悪化することもあります。そのときにALS患者さんの挿管というのは、実は大変むずかしいんです。口が開かないときがあるのですね。こういう場合でも、気切を先にしておけば家族でも緊急用のカニューレを入れて、アンビューバックを押して助けることもできるということです。私たちはやはり「生きていこう」と決断してくれた患者さんの命に対しては、つまらないことで絶対に落としてはいけない、と思っています。そのために安全には安全をという形でそういう体制をとっていかなくてはいけないと思っていますが、一つは気管切開を早期に行うことが、間違いなく安全を担保することになると思っています。 | |||
| 気管切開した後の声の問題 | |||
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もう一つは声の問題です。今、カニューレを着けても、ここ(カニューレの入り口)に一方向弁を着けることによっていくらでも声は出せます。この方は大きな声は出ませんけれども、最初は声が出なくなるから気管切開はいやだと言われていた方ですけれども、苦しくなって気管切開をされた。まだこの段階では酸素を気切孔から流すだけで済みましたけれども、声を取り戻したいという希望があったんですね。ちょっと聞いてください。(ビデオ) もう一つは、たとえばここにいま一方向弁を着けてますけれども、その上に気管カニューレからニップネーザルで管理しています。この場合、カフなしカニューレで、空気は入るけれども出ないという状態でしてやると、またこれでも声は出ます。 この方法は一時的にはできるのです。ところが、時間をおくと抜けてくる風で鼻が痛くなってくるということで、長時間はなかなか難しいところがみられます。それでもう一つの方法は、カフエアーを少し抜けばしゃべれます。 約4年間鼻マスクを続けてこられた患者さんは、今年2月に気管切開されて、そのあと訓練してカフエアーを少し抜いてしゃべるというのが獲得できました。そうなってくるともう鼻マスクには戻りたくない。いま施設に入っておられますが、コミュニケーションできるということは介護者にとっても非常にやりやすいということで、今こうして維持できています。 ここに着けている気管カニューレと接続するマウントは、ふつうのマウントじゃなくて、吸引器を入れる孔を開けたままにして、開放している状態です。そこからリーク(空気漏れ)を起こさせるために、開けた状態で使います。球麻痺がなければ、しゃべれるということも人によってはできるんだということになります。 |
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