最初のページです
私が考えるALSの呼吸管理戦略
(スライド7)私が全般的に考えている一つの戦略なんですが、ALSの方々に対してどういうふうに呼吸管理を進めていくかというのを表現したのがこの図です。

やはりまず何といっても球麻痺がある方とない方、これはもう全然ちがうということがあります。球麻痺のない方はかなりNPPVを持続できますけれども、最後は気管切開とNPPVを併用しよう。そうすることによって鼻マスクは装着しますけれども、今までと同じ生活ができる上に痰は取りやすい。それから球麻痺のある方は、なかなかそういうわけにはいかなくて、こういう気管切開のバイレベルをしようということを提唱していました。

ところが先ほどごらんになったように、気管切開部からのNPPVでもバイレベルでしゃべれるんですね。そうすると、わざわざマスクにしなくてもいいじゃないかという方も出てきました。たとえば先ほどしゃべっていた若い患者さんは、肺活量は計ってみると5%もないのです。それでもあのように球麻痺がなければ維持できるということがあります。バイレベルを使う利点は空気が漏れても、ある程度補充できるということです。あれを普通の人工呼吸器でやってしまいますと、肺に入ってる空気が漏れてしまう。バイレベルを使うことによってそれが補充されて、しゃべることができるというふうにご理解いただきたいと思います。球麻痺のない方は鼻マスクにこういうふうにしてもいいんだということです。球麻痺のある方はこういうバイレベルの器械を直接気切孔から入れるということになります。

人工呼吸器の事故対策 @無線アラーム

あとは、やはり事故の問題。これは本当に問題だと思います。カニューレのところから外れる、こういう事故はずっと以前から起こっていまして、全国で年に10人とかいう形で亡くなっていますが、改善されません。多くの方はこのような形でテープで留めるうな対応をされていますが、もちろん万全ではない。私たちは病院として、もし事故を起こしてしまえばこの医療が否定されることになりかねないと思って、かなり神経を使っています。一つは今、無線アラームを装着しています。これは個室等に入っているとアラームが聞こえにくいという問題があります。ここにアラームの鳴るスピーカーからマイクで音を拾って、詰所のほうへも鳴らすというシステムです。無線で飛ばすのですね。有線のほうはメーカーから供給されますが、そのたびに線を張りめぐらせたり、コネクタが曲がったり折れたりして使えなくなることがありまして、高価な上にすぐ使えなくなって、とても困るということが多かった。

私と一緒にずっとこの問題をやってるエンジニアの徳永さんですが、彼に作ってもらったのが、この無線アラームです。最近いろいろ引き合いがあって、「よく売れてるよ」と言ってました。

人工呼吸器の事故対策 ASPO2アラーム

それともう一つは、これはタイコヘルスジャパンから出されている無線のSPO2(血中酸素飽和度)のアラームです。病院のリスクマネジメント委員会の中で、自分の手でナースコールを押せない呼吸器の患者さんは絶対に着ける。要するに例外を認めないということにしています。どんなことが起こっているか、起こったときの記録です(スライド8)。

ここで外れたのですね。一気に下がってきます。SPO2が100%から50%まで約1分半で下がってきます。これでアラームが鳴った記録が残っています。あわてて看護師が走っていって、すぐアンビューを押して、回復していますけれども、もうちょっと遅かったら心停止ということになってしまうわけです。   (スライド8↓)

在宅の方はある意味で安全なんです。横に介護者がいるわけです。誰かが見ている。一番危ないのは実は病院なんです。横に看護師が始終いるわけがない。呼ばれない限り看護師は来ない。異常が起こらない限り看護師は来てくれない。病院はそういう意味で一番危険なんです。在宅よりももっと危険なんです。その危険さを埋め合わせするために最低限こういう装置を持つ必要があると思っています。

医療機器メーカーの対応は
メーカーとしては恐らく対応しようと思ってると思います。たとえばこれはポーテックスのカニューレの新しいタイプですが、外れないように引っかけるところがあります。ちょっと工夫すればすぐにできるのですが、それをなかなかやろうとしません。それはなぜか? それは自分たちで勝手な規格を作って、それで事故が起こったら責任問題になってしまうからなんですね。前にメーカーに作らないかと聞いたことがあります。そうしたら、規格がある中で規格どおりに作ったら自分たちの責任ではないけれども、規格にプラスアルファをして何か問題が起こったら、即自分たちの問題になる、だから作れない、というような事情を聞いたことがあります。したがって各メーカーにしてみたらかなり難しいのかなというふうに思ってます。そういう意味では国が音頭をとっていただきたいところなんですが、なかなか動きが悪いという状況があります。