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停電にバイレベルは止まる
停電で問題になるのが、バイレベル(NPPV機器)が止まるんですね、一瞬で。内蔵電池がないわけです。それでぼくたちはバイレベルを使うに当たっては必ずこれを付けろと(スライド9)。これが何か知ってる方はいらっしゃるかと思いますけれども、パソコンの無停電装置です。要するに電池なんですね。これを付ければ、この程度の機械であれば1時間半は止まりません。その間に他の電源を持ってくるとかの対応が可能になるということです。私たちも経験がありましたが、停電して、その場で苦しみ始めるものだから、あわててしまいました。  

気管切開の場合には簡単にアンビューを使用して支えることはできますが、NPPV(鼻マスク)の場合はなかなか難しいです。そういうことで、必ず無停電装置は付けるというふうにしてます。

アンビューバックは忘れない

これは絶対に忘れてはいけないというのが、このアンビューバックですね。特に在宅人工呼吸器の場合、機械はいつ止まるかわからない。そのときにこれが周りにないと大変です。介護者、たとえば奥さんは知っていても、ヘルパーの方はわからないですね。この前もありましたけれども、外出するときにこれをちゃんとカバンの中に入れてあった。突然止まってしまった。ヘルパーが二人しかいなかった。そのときにわからない。患者さんは失禁するまでいってしまったということがありました。そういう場合は、それが見つからなかったら、「カニューレから直接息を吹き込め」と今は皆さんに話しています。

私もレントゲン室に患者さんを移動させたときに、突然呼吸器が不調になってしまって、アンビューを下ろしてなかったもんですから、一生懸命口にくわえて吹いたことがございます。十分それでいけます。まずアンビューバッグ、なかったら口で吹き込む、そのことをヘルパーさんも含めて徹底していただきたい。家族はわかってるんです、どこにアンビューがあるかは。代わりに入ったヘルパーさんが皆知ってるとは限らない。だから最低限支える方法をきちんと教えていただきたいというふうに思います。
 せめて夜間の痰取りは解消できないか
私たちが診ている患者さんのお宅に、目覚まし時計が6個ほどあるおうちがありました。私、それを見て、「時計の趣味がおありなんでしょうか」というバカなことを聞いてしまったことがありまして、「違うんです。2時間おきに鳴らすようにしてますが、1個じゃ起きられんから、場所を変えて2個鳴るようにしてるんです」と家族から言われてですね、本当に不明を恥じました。せめて昼間大変なのは仕方ないけれども、夜間の痰抜きは何とかならないだろうか、というふうに思ったのがきっかけです。
2000年から開発を始めました

1999年にエンジニアの徳永さんといっしょにこの問題を語り合って、2000年にALS協会から補助金等をいただいて始めました。なかなか最初はうまくいかないという状況で、ちょっと研究が止まってたときに、吸引問題が皆様方の運動の中で出てまいりました。その中で厚生労働省や日本看護協会のほうからもう一ぺん進めないかということでお話をいただきまして、2002年度は日本訪問看護振興財団から研究補助金をいただけるということで、それから2003年、2004年に関しては厚生労働省の各研究費をいただけるということで、いただく以上は絶対やれと命令されてるようなもんですから、それをやらせていただきました。

最初はたいへんプリミティブな方法です。皆さんだれでもお考えになるように、ふつうの吸引器を使って気管内に残した吸引カテーテルで吸引ができないかということを考えてました。この辺は誰でも一番に思いつきます。これは2000年のころだったと思いますけれども、ペットボトルの中にカニューレを突っ込んで痰を引く。当初の方式は普通の吸引器で電源をコントロールする。この当時はタイマーで、10分おきとか、15分おきの間欠的な吸引で、カテーテルを気管内に留置するやり方で始めます。夜間は結構これでもうまくいくのですが、やっぱりさまざまな問題があります。

一つは、このような形で突き出しているということは、長期的には常にそれが気管内に接しているわけですから、そこから吸引すると出血の原因や潰瘍をつくるのではないかという問題があります。

まず一つ考えたのは、カテーテルを気管カニューレ内に戻して、今と同じことができないかとやってみたんですが、これが案外できてしまうのです。そうなりますと、少なくとも長期留置もかなり安全と考えて、一歩進んだと。結局このカニューレ自体に吸引孔をつけるということですね。この通気孔の下に吸引孔をつけてます。これをとりあえず作ってやろうじゃないかということで進めました。吸引孔の位置はどこがいいのだろうという試行錯誤をずいぶんやってまいりました。一つはこの位置(カニューレの先端)にあると、かなり気管内にたまっていきます。たまると、これを全部ふさがないとなかなか吸い取っていかないという現象があります。で、カフから先のオーバーハングが悪いんじゃないかと思って、オーバーハングをちょん切って、一番先端のところに吸引孔をつけたらどうか。これでだいぶ減りましたけれども、まだやっぱり結構たまる。じゃあ、この下側につけたらどうかということでやってみた実験がこれです。これをちょっとお見せしましょう。(ビデオ)

これで大変いいので、ほとんど完成したかなと思ったのですが、実はこれがとんでもない勘違いで、大変な問題が起こり得るということがそのあとでわかったんです。その話にいく前に、とりあえずそういうカテーテルを試作しました。この場合は中に吸引管を貼り付けてます。それから平たいチューブに変えていくのですが、もう一つメーカーも協力してくれて、カニューレ内に吸引ラインがあるという状況ですね。こういうものをつくって自動吸引のほうをやるようにいたしました(スライド10)。

それともう一つは吸引器です。普通の吸引器を使ってやった場合、一つは実は間欠的にしか吸引できないという問題があります。その一番大きな問題は、吸引がかかったときに換気を奪ってしまうという問題です。人工呼吸を奪ってしまうのですね。1回の換気量400ccの通常皆さんが使っているような換気量だったら、吸引器が入るとほとんどなくなってしまうという問題が起こります。一時的にはいいですよ、30秒くらいだったら別にかまいませんけれども、しかしそのときにローアラームが必ず鳴ります。吸引で目が覚めなくても、ローアラームで目が覚めちゃうじゃないかという問題が起こります。万一コントローラーが故障して吸引が止まらなかったらどうなるんだ。これは大変恐ろしいわけですね。そういう意味でどのようなモニターをつけるかということで、いろんなものを合わせていかなければいけません。さらに、動いてないときでも、リークが起こる。これは持っておられる吸引器を、吸引孔にくっつけてフッと吹いてみたらわかります。吹いてみて息が入るというのは漏れるということです。漏れるということは人工呼吸器のチューブに孔が開いてるのと一緒なんですね。そういうものを普段使えるわけがないではないかという問題があります。

それから、たとえば痰がたまったときに引くということになると、気道内圧が若干上昇するということでわかりますけれども、では普段の気道内圧をどう読みこなし、そこから上がったときに動かすという設定を誰がするのかとか、あるいはもし自発呼吸が残っていると、かかりまくりになるのです、むせ動作が起こってくるから。そういうことで、大変な問題がいろいろありました。