長時間介護制度を利用して |
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| 在宅療養を継続するための提案 | ||
| NPO法人さくら会/日本ALS協会東京都支部 | ||
| 川口有美子 | ||
| このたび、NPO法人ALS/MNDサポートセンターさくら会と日本ALS協会療養支援部で、厚生労働省重度障害者等包括支援調査研究の一環として、ALS患者さんとご家族、支援者を対象にしたアンケート調査をおこないました。重度障害者等包括支援とは、ホームヘルプサービスとデイケアなどの施設ケアの併用を、包括的に実現する新しい制度ですが、全国的にいまだサービスが提供された実績がありません。そこで、なぜ重度障害者等包括支援が使えないかを調査しましたので、その結果の一部をこの場をお借りしてご紹介し、末尾に、安定した介護態勢のために患者家族にできることを提案させていただきます。 | ||
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1、療養当事者対象アンケート調査 【調査方法】 2008年の2月から3月にかけて、現在、重度訪問介護サービスを利用しており、意思伝達装置等で意思表示のできる当事者に対して、eメールでアンケート調査を行った。(質問用紙は省略)対象者は橋本操調査員のメールアドレスから任意に抽出した22名で、安定した在宅療養生活を送っている人たちである。質問用紙はメールの文面に直接貼り付けメールにて配信配布し、12名から回答を得た。(回答率60%、男性8名、女性4名)。 【結果】 1、日中、近隣の福祉施設(身体障害者療護施設等)のデイケアを利用したいですか?
Yes(はい) ・介護をする人が少しでも楽になるようにするため。 ・現在入浴サービスを利用しているから ・いろいろありますが、外に出たい。 ・気管切開の前に戻りたい。 No(いいえ) ・日頃のペースを乱したくない ・呼吸器を付けている患者を入所させてくれる施設がありません。 ・もし、あったとしても介護に不安で入りたくない。在宅しかない。 ・今必要性を感じないから。 ・家でのんびり自分のペースで生活する方が良い。 ・特に利用したくない ・私の状態を知らないところに行くのは不安だから。 ・わからない ・答えられません。その施設が何をする施設かわからないから。 ・慣れないケアスタッフで私のケアはできません。また私は住み慣れた家で普通のライフスタイルを大切にしたい。 ・1日数回トイレに通う、家のお風呂に入れてもらうなど今の生活スタイルがリハビリになり現状維持できていると思っています。 ・私が嫌でもデイケアを利用しなければならない状況があるなら問題です。 ・やはり呼吸器装着者に対する体制が整っていません。 ・ナースコールが導入されたところです。 ・意思の疎通が上手く図れるか不安。(絶対に無理) ・着替えや移乗に 人手を煩わせるのが辛い。 ・胃ろうの注入や吸引をしてくれるところがない。 ・呼吸器を付けている患者を入所させてくれる施設がありません。 ・もし、あったとしても介護に不安で入りたくない。在宅サービスだけでいい。 ・退院後4年強になりますが、自宅療養に集中しています。外出は望みません。 ・呼吸器装着のALS患者は、通所は難しいかと思います。受入れ先の人員態勢、設備体制が充分でないからです。先ず、車の移動は倒さないといけないのでその分場所をとり運送効率が悪くなります。次に送迎介助が二人でなく一人の場合は離れている時間は短いとは言え、その間不安になります。この気持ちは重度障害者等で無ければ解かってもらえないかも知れません。特に夏場、離れた時エンジンが止まりエアコンが切れると、直ぐ車内は灼熱に変ります。65歳になったのでこれでディサービスで入浴できると喜んだのが甘かった。老人施設は腐るほど一杯あるのに風呂を拒否される場所ばかりでした。ストレッチャー、器械浴無くてもシャワーだけでも良いです。条件を落しても大きな車も無いものでと何処でも断られて、障害者は舐められているとしか感じられません。呼吸器装着患者は通所は敬遠されると考えた方が良いかと思います。 |
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2,近隣の訪問看護ステーションが開設している療養通所介護施設を利用したいですか? (療養通所介護とは、医療ニーズと介護ニーズを併せ持つ癌末期や難病中重度者のための地域の看護師によるデイケア。利用定員は5名まで。利用者1.5人に対して看護・介護職 1名(1.5対1)。平成18年4月から介護保険で実施されている。患者1名あたりの面積8平方メートルなので、民家でも実施でき単価は6時間まで一人につき1万円。8時間まで1万 5千円。介護保険でカバーされ、利用者負担は1割になる。)
Yes(はい) ・24時間対応なら利用したい。 ・但し条件付き 仕方なく、慣れたヘルパーが付き添う時のみ ・家族の自由時間や公用のため必要と思っています。ただ移動の度に介護タクシーの負担が大きいですね! ・ALSの現状を考えるとレスパイトは必要です。レスパイトを利用しなければならない状況は家族介護に頼っていることの証。 ・介護者である妻が用事等で長時間外出したい時に利用したい。 No(いいえ) ・在宅で充足しているから ・どんな看護・介護してくれるか、慣れるまで凄く不安です ・今必要性を感じないから。 ・介護者である妻が病気療養の時に私を看てくれる身体療護施設があればと思いますが、週1日決まった曜日に宿泊はしたくありません。 ・答えられません。その施設が何をする施設かわからないから。 ・小人数で家庭的なところはあるかもしれませんね。この単価は利用料?高いです。 ・週1日決まった曜日には私のなかでは考えられない。どうしても他に選択できない時にのみ 。 ・近くに呼吸機装着者を受け入れる施設がない。介護保険の点数が足りない。 ・自己負担するには金額が大き過ぎる。 ・どんな看護・介護してくれるか、慣れるまで凄く不安です。 ・休日なしで、一日10時間のヘルパーさんの介護をお願いしているため、安心できることと、週一回の主治医の往診と合わせて訪問看護の訪問もあり安心できるため。 ・ 私の場合は在宅前入所していた障害者施設をショウトスティで利用しています。この施設のように理解のあるところは先ず無いでしょう。看護士での通所ディケァサービスが出来たとしても重度ALS患者には受け入れ的、サービス内容的に厳しいものがあると思います。 |
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3、家族のレスパイトのために、週1日決まった曜日に近くの身体療護施設に宿泊することを、どう思いますか?(複数回答可) 回答の選択肢 1)積極的に利用したい 2)家族のためにしかたなく利用する 3)施設の介護職員の介護体制による 4)自分の介護に慣れたヘルパーが同行宿泊するなら利用してもよい 5)絶対に利用したくない 6)その他
6)その他の意見 ・独居な(家族が同居していない)ので、その設問には答えられません。 ・受け入れてくれる所がない。 ・気管切開した病院だけが24時間の付き添いをつけるならOK。でも部屋代や付き添い費用が大変 4、在宅での公的介護サービスに何を望みますか? ・行政、事業所の積極的な参加 ・必要なサービス(量、人)の上限撤廃 ・「家事援助・重度訪問介護」と身体介護の介護料金の差が大きすぎます。だから重症患者は身体介護でしか介護をしないという事業所が多い。 ・介護保険制度を別にして、自立支援法では重度訪問介護で一本化にすればいい。身体介護をもらっても1回に3時間以上使えないと制限がある。介護に制限を付けるのはおかしい。与えられた時間数を利用者が自由に使えているのかな。 ・私としては、身体介護を無くし、重度訪問介護の介護料金を2500円にアップする。今までの単価では介護事業所がやっていけないから不正申請が多い。単価をあげれば不正申請も減るでしょう。単価をあげるのだから今までのような聞き取り調査ではいけない、ちゃんと現場を見て慎重に調査をする。その人のニーズに合った支援をして欲しい。 ・家族がしてもよい医療行為についてはホームヘルパーができるように法の改正をして欲しい。そのためにホームヘルパーは決められた時間の実技研修が必要。 ・「経管栄養の注入・カフ圧のチェック・アンビューを押す・気切と胃瘻のガーゼ交換・呼吸器の管理」最低これくらいの事ができないと呼吸器装着者の介護をするヘルパーも不安だし、患者も不安。ヘルパーができれば介護に自信を持ちます。 ・永続的な安心。 ・今は思いつかない ・訪問看護師さんの土、日曜日のサービスと長時間のサービスを望みます。そうなれば妻もゆっくりと買い物等に出掛ける事が出来ると思います。 ・妻が病気療養の時に私を入院させてくれる施設が無いので出来る事を望みます。 ・訪問看護ステーションが開設している療養通所介護施設は姫路市の近隣に有りますか? 有れば教えて下さい。 ・夕方7時から就寝までは身内で看ています。しかし、私に付きっきりで、家内が介護を出来るわけが無いですね。家事や家のことなどもあるので、スポット的に介護をしてもらっています。家内も疲れで呼吸器のアラームが鳴っても起きないこともあります。要望としては、夜9時から10時、夜10時から深夜6時までに、巡回が3回は介護ヘルパーさんがほしい。私は、自発呼吸がないので数分で死に至ります。 ・交通機関利用時の割引 ・すべての介護サービスでのスキルアップ望みます。 ・ヘルパー派遣の支給時間の延長を望みます。 ・介護保険も福祉サービスも制約が多くて利用しにくい。ニーズに応じ柔軟な対応が必要。介護者のサービスの拡張。 ・重度訪問介護などは基本単価が安くて、引き受けてくれる事業所が少ない。 ・私は現在3人のヘルパーさんに同意の上、痰吸引をお願いしています。願わくば家族の急な外出などにも臨機応変に対応願えれば有り難いです。個人的な事ですが……5月より娘は1年程留守にします。また息子は消防の仕事で不規則なので夜は家内一人の時が多くなるのが心配です。出来ましたら月に何日か夜にヘルパーさんが居れば助かります。 ・主人は病気持ちで、去年は111日間、(今年はもう27日間)入院しました。その間 ヘルパーさんでは間に合わない所を、嫁いだ娘に頼んだが、その娘も体調を悪くし 脚をつねったりクッションを投げつけたり。そんな娘ですが 7/1付けで婿が転勤になり引っ越してしまいます。主人は呼吸障害3級で 動くと血中酸素が80を切り きつそうです。入所する施設はない、福祉は充分でないでは困ってしまいす。主人の健康が続く事を当然と思い 呼吸器を着けたのですがこんな事になるとは…。後悔しています。 ・現状のサービスを維持していただければ幸いです。 ・良いヘルパーさんが来てくれたら十分です。 |
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2、考察 |
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3、重度訪問介護サービス提供者(事業所やヘルパー)の現状 各地のサービス提供者や支援者の聞き取り調査(割愛)からは、以下のような現実が浮き彫りになりました。 @ 医療的ケアの規制がサービスの抑制につながっている。(吸引や経管栄養の介助ができない) A 重度訪問介護の単価が非常に低い。そのため日中の重度訪問介護は、ヘルパーに交通費を支給すれば、ほぼ確実に事業所の持ち出しになる。 B ヘルパーの実地訓練期間が長期にわたり、その間実地訓練にかかる費用が事業所の持ち出しになることもある。 C ケアが細かく、患者との意思疎通が難しいとヘルパーが定着しにくい。そのため、常に新しいヘルパーを導入せざるを得ないが、新人研修にかかるコストは、他の障害者とは比較にならないほどかさむ。 D ところが、患者家族は新しいヘルパーに慣れるまでがストレスで、最初の日からきちんとケアができないヘルパーには、自分では教えず事業所に苦情を言って断ってしまうことがある。 E 重度訪問介護のサービス提供は長時間になるため、介護の実務経験3年以上のサービス提供者が多数必要である。 F しかし、3年以上の経験のあるベテランヘルパーは、募集してもなかなか雇用できない。そのため、サービス提供者がいなくなり、長時間の重度訪問介護を引き受けることができなくなっている。 G ALS患者は、しばしば入院するため、ヘルパーの生活も事業所の経営も不安定になりやすい。 H 家族の要求が高すぎる。医療の領域のことや、家族のすべき仕事までヘルパーにさせている。 I 夜半の見守りのヘルパーが眠ると心配なので、横になることも禁じたり、昼間にすればよい仕事を言いつけるなどして仮眠をとらせないようにする。召使のようにヘルパーを扱う家族は少なくない。 J 利用者は事業所が代わりのヘルパーをどんどん紹介してくれるものと思っている。しかし、事業所はヘルパーが常時不足しているため、交代の要請が度重なると応じきれなくなり、その利用者から撤退してしまう。 長時間介護の関係調節にかかる相談業務が膨大になるので、事業所の管理者やサービス提供責任者の多大なストレスになっている。 |
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4、安定した介護態勢のために これらの調査から、利用者は重度訪問介護ヘルパーの充実を強く希望しているのに、多くの介護派遣事業所にとって、ALS療養者へのヘルパー派遣は、大変なリスクやストレスになっていることがわかります。しかも、ALS療養者にサービスを提供した結果、ヘルパーが続きざまに辞めていくなどの危機を一度でも体験した事業所は、ALS療養者への派遣を渋るようになっていました。このままでは、ALSに長時間介護者を派遣してくれる事業所は減る一方です。重度障害者等包括支援どころではなく、重度訪問介護さえ満足に使えない理由も、だんだんわかってきました。 そこで、事業所やヘルパーに対する患者側からの苦情は当然ありますし、多くは理解でき解決を要するものですが、それは別にするとして、ここでは重度訪問介護ヘルパーの利用を望む患者家族は、どのような心構えで介護サービスを受けるとよいか、提案してみます。 @ ヘルパーに任せきりにせず、もし、ローテーションに穴が開いたら積極的に家族や親戚が入るなど、事業所をフォローする。もともとは、全身性障害者介護人派遣事業という有償ボランティアの事業を制度化したのが重度訪問介護なので、家族はヘルパーと助け合う気持ちが大切。 ヘルパーの時給は、全身性・・のボランティアのときよりも下がっています。しかし、支援費制度以降、家族がヘルパーをねぎらい、ヘルパーを休ませるために自分が代わって介護に入る光景は、ほとんど見られなくなっている。 A 重度訪問介護は単価が低いため、ヘルパーは深夜夜勤の翌日も、フルタイムで働かなければならない人が多い。だから、ヘルパーに仮眠をとることができる環境を工夫することが大切。ヘルパーが眠ると心配な家族は自分で介護をするほうがよい。もともと、重度訪問介護は自分で指示できる脳性まひなどの障害者のための単価設定で、ALSを想定していない。だから、深夜勤務は利用者の隣でヘルパーも眠り、オンコールで起きる程度の給与体系。一睡も眠らないヘルパーは、翌日は睡眠不足で安全性を担保できないために働くべきではない。もし不眠不休の深夜の見守りを要求するのなら、深夜は通常の倍の賃金を支払う必要がある。(注:暗がりで見張れなどという要求をする家族もいますが、特別サービスの自己負担を請求されてもしかたがないですね。もし自己負担を支払うのがいやなら、国や自治体に負担させるよう、現行以上の加算を勝ち取る運動が必要。呼吸器を使っているのに15%の加算さえされていなければ、早急に市区町村と掛け合い正しく加算をしてもらうこと。) B 最初の数ヶ月は、ヘルパーの介護内容をできるだけ単純に簡単にして覚えやすくする。ヘルパーも、慣れてくれば、複雑なケアもだんだん覚えてくれるが、最初からたくさんのことを要求すると、自分には無理だと思ってすぐ辞めてしまう。慣れるまでは家族がヘルパーをフォローする姿勢でいっしょに介護をする。 C 患者や家族は、たとえヘルパーが気に入らなくても、激しく責め立てたりしないこと。 自分たちの気持ちをタイミングよく(物ではなく)言葉で表すこと、特に家族は誤解を解消するようにたびたび患者の気持ちを、説明するなどのフォローをすることが大切。(「ありがとう」「また明日もお願いします」などは大事な挨拶。注意を促す時も、患者の気持ちを代弁するように、「この人は・・・・といいたいのですよ。」「この人は怒ってないのよ。顔がこわばっているの。」「こうこうこうだから、こうしてください」などと落着いて説明すれば角が立たない。どうしても声を荒げてしまう癖のある人は、気分に余裕のあるときに、先に謝っておく。「私は時々怒鳴ったりしてしまうけど、そんな時はよほど疲れているんだなあと思って許してください。」など。) |
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重度訪問介護のヘルパーは、有償ボランティア程度の報酬しかもらえず、身分も不安定です。だから、最初はあまり期待をせず、気を抜かず、任せきりにせず、自分たちで育てるつもりで、いつも感謝の気持ちをもって接しましょう。障害者運動では、「ヘルパーは手足」などと言われますが、それは、当事者主体の比ゆであって、彼らは自分のヘルパーは大変大切に育て待遇もよくするための運動も展開してきました。 しかし、ALSのケアは特段に難しいといわれ、ヘルパーの質も問題になることもありますが、最初から指示通りの介護ができる反応のよいヘルパーなどは望まないほうがよいでしょう。ヘルパーの質は、たとえ単価を高くしても、ヘルパーの研修時間を増やしても、自分のケアを覚えてくれない限りは同じこと。だから、患者家族は根気よく時間をかけて自分たちでケアを教える姿勢が大切ですが、それでも辞めていくヘルパーは大勢います。ヘルパーの質は、その人の介護を経験した時間数に比例して高まっていくものですから、ヘルパーが定着しない家庭では、全体の介護の質もいつまでも高まらず、家族の疲労も解消されていません。 ヘルパーが定着しないで悩んでいるご家庭では、前に述べたようなことに、きっと心当たりがあるはずです。でも、改善できるところから改善すれば、あらゆる状況は大きく変わってくると思います。 |
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