連載第7回

食にまつわるエトセトラ・・・
姫路市 大多和 清子
私のこだわり

 テレビのグルメ番組を観ていると、スタッフが「すみません。気がつかなくて……大丈夫ですか?」と申し訳なさそうに言ったのです。

 大丈夫というよりむしろそれを観るのが好きなのです。

 

 しかし私には、どうしてもこだわりがあるのです。ギャル曽根さんのように沢山食べてご飯一粒、スープ一適も残さず完食しているのを見ると、実にすっきりします。爽快な気分になります。

 グルメリポーターがテレビ番組でいろんな店にアポなしでリポートするというのをよく観ます。例えばラーメン屋さんに入り、おすすめのラーメンを出してもらい、一口すすって箸を置いたままコメントして、だし汁を聞いたりして、お礼を言ってその店を後にする。そして、次の店を探しに行く……。

 そこで私は、疑問を抱くのです。あの食べ残し、伸びたであろうラーメンの行方は?

 リポーターがカメラの回っていないところで食べるのか……。スタッフが食べるのか……。はたまた廃棄の運命に……(ちなみにテレビ局から店に飲食代は支払われるそうです)。

 すっきりしないのは完食の場面がないからです。たまに完食しているのを観ると胸のすく思いがします。

スタッフが「大丈夫ですか?」と聞いたのは理解できます。食べることが出来なくなった人にグルメ番組を観せるのは酷と気遣いをしてくれたのでしょう。

 食べたくても、食べることが出来なくなった人はテレビのグルメ番組を観ることを避け、家族が食事をしている光景は目にしたくはないでしょう。それは、自然なことかもしれません。

私は料理番組も観るのが好きです。料理などは絶対することが不可能なのに……。毎朝「MOKO‘Sキッチン」を必ず観ています。よく香草が隠し味になっています。香草は少し苦手ですが、元気だったら作っていたかも知れません。

 もこみちくんの料理は、なかなか手に入らない食材があります。そんなとき、「やーめた!」とあきらめる人が多いかも知れません。でも、私はそれに代わる食材で、アレンジを頭の中でしています。とっても楽しいです。

 ふるさと給食という番組も観ています。小学生がふるさとで採れる(捕れる)食材を、実際に収穫を体験して、食育につないでいます。地産地消や食べる喜びを子供たちは学ぶことが出来るのです。とても良いことだと思いました。
自己分析

食べることも料理さえ出来ないのに、なぜ興味を持つのか不思議でしょう?

それは「食」全般が好きだからでしょう。もしもALSを発病していなければ、グルメリポーターの完食にこだわったり、学校給食とかにそんなに興味を示さなかったと思います。

 例えば、盲目の方は聴覚が研ぎ澄まされています。それは、失われた機能から身を守ろうとする本能なのです。

 ALSは身体の自由を奪われて、神さまが平等に残してくれたのは、頭の機能だけなのです(ただし、五感は健在といわれています)。発病後数年で頭がすっきりとしてきました。そして、好きだった「食」にこだわりを持つようになったのです。
私の「食」のルーツ

私のように、あと数年で還暦を迎える世代から上の年齢の人たちは「食」についての基本が身に付いているように思います。

 私が物心ついた昭和30年代初頭は、まだ戦争の名残がありました。

 今でもよく覚えているのは、醤油の配給です。一升瓶を持った母と並んだものでした。そのころは約99%の自給率でした。そんな時代に育った私は「食」の原点が頭の中に息づいていたのでした。

 季節の野菜・果物はもちろん、お茶や蕎麦、胡麻に至るまで作っていました。余談ですが、綿花も作り、布団の打ち直しや、ちゃんちゃんこなどに使われていました。

幼い私は、祖母が石臼で、きな粉を挽いている横から穴に大豆を入れ、お手伝いをしていたものです。

 家で作ることが出来るものはすべて作っていました。それは明治、大正、昭和を生きた祖母には、ごく当たり前のことだったのでしょう。

 手作りの味噌で作った味噌汁、無添加の漬物、甘味を抑えた煮物、お寿司などの味は「舌」が覚えているのです。生きている限りずっと……。
「だし汁」のこだわり

幼い頃の「食」で大人になり、これだけは……とこだわり続けたことがありました。

 それは「だし汁」です。いりこ、昆布、鰹などが基本に……。味噌汁は、いりこ。煮物・麺つゆなどは鰹と昆布。昼食にそうめんのときは朝からだし汁を取って冷やすようにしていました。ごく当たり前のことが今では簡単に一振りすれば「美味しい」料理ができるのです。
「食」で病気予防

私は、なるべくなら安心できる食品を摂るようにしてきました。

それは、癌や成人病などを少しでも予防できると思っていたからです。

 

例えば、たらこが2種類あるとします。1つは自然の色をした、たらこ。もう一つは、赤くて見た目にも鮮やかな、たらこ。前者は無着色で天然の色、これは本来のたらこです。後者のたらこは、赤色の着色料を使用しています。それで、赤く美味しそうに見えるのです。

 消費者は選ぶことが出来ます。意識を持っている人は無着色の方を選ぶでしょう。そうではない人は、着色を選ぶでしょう。

たらこ以外にも、多くの食品は着色料、保存料、酸化防止剤などの添加物を使用したものがあります。

 私は、なるべくそれらが少ないもの、無添加のものを選んできました。

料理は好きなほうでした。特に和食。なかでも、お寿司は自慢できるものでした。(自画自賛)

 巻きずし、いなりずし、ちらしずしなど。

 食べることに執着しない私ですが、自分の作ったお寿司は食べたいと思うのです。いまさらながら……。
仕事を辞めたらもっと料理にチャレンジしたいと思った矢先にALSを発病したのです。

ALSを発病したとき、次男が「おかあさんは、あんなに食生活に気を配っていたのに、ALSになるなんて……」と悔しそうに言ったのを覚えています。

 癌や成人病などは予防できても、ALSは予防できないのです。

 残念ながら……。

 予防できないのなら治療薬を一日でも早く開発して欲しいのが私の願いです。
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