連載第 12回

ヘルパーの喀痰吸引新制度に移行の現場から・・・

姫路市大多和清子

新制度って.驚きと不安

新制度になると聞いたときは、驚きと不安ばかりでした。
2007年に人工呼吸器を装着してからずっとヘルパーさんの吸引によって
支えられてきました。
訪看さんの訪問がないときは、朝から晩まで入ってくれています。ヘルパ
ーさんがいなかったら私の在宅療養生活は維持できなかったでしょう。

2012年 4月、新制度がスタートしました。
Aヘルパー事業所のヘルパーBさんが喀痰吸引の研修を受けるまでと、そ
の後を時系列でまとめました。

Bさんは、2012年 7月にA事業所に入社しました。
喀痰吸引研修は上期( 4月〜9月)下期( 10月〜3月)となっていました。
3月いっせいに申し込まれ、その内 30名だけが研修を受けることができま

す。ただし、各事業所に 1名のみです。
9月上旬に、県に申し込みました。
その後、看護協会から研修日決定通知書が届きました。
10月 16、17日の 2日間、受講することとなりました。
10月 16日の研修は、喀痰吸引のテキストに添って、スライドを見ながら

講師の先生の説明を受けました。(9:30〜17:30)
10月 17日の研修は、午前中は 1日目と同じ。午後は模型を使っての演習。

17:00からは筆記テスト(20問、うち 7割以上正解者が合格)。
看護協会から 2週間後に合格通知が届きました。その後、担当医師の指示
書、利用者の同意書、指導看護師へ依頼(日程調整)。


12月 5日、7日実地研修。実地研修終了後、指導看護師から評価・終了の
認定を受ける。実地記録、評価票、ヒヤリハット・アクシデント報告書を看
護協会に送付する。
月 5日、7日実地研修。実地研修終了後、指導看護師から評価・終了の
認定を受ける。実地記録、評価票、ヒヤリハット・アクシデント報告書を看
護協会に送付する。

看護協会で評価票の内容と実地研修数を確認後、振込用紙を受講生に送付。
受講生により振り込み、1500円。
振り込みを確認した後、基本研修の修了証を発行。

※振り込みは Aヘルパー事業所が負担。
研修終了認定……それからが大変

2月 14日、看護協会から修了証書が届く。
2月 15日、認定特定行為業務従事者認定証が届く。


以上で Bさんは私への吸引ができることとなりました。
しかし、これからが大変なのです。
吸引のできるヘルパー「認定特定行為業務従事者(経過措置対象者)」が

私への吸引指導をしなければなりません。
Bさんが一人で吸引が確実にできるまで指導が続くのです。

2012年 3月までの吸引指導を受けたヘルパーは、1週間に1回、1時間
の訪問で、平均 3ヶ月で一人で訪問できました。
しかし……新制度の元では、喀痰吸引研修の申請をしてから、一人で吸引

できるまで、実に最短で6ヶ月かかりました。
3ヶ月の差は、とても大きいです。
研修を受けた人と以前から吸引をしている人とのスキルの差はほとんど

ありません。しかし、ひとりで訪問するようになると、いつの間にか自己流
になってくる不安があります。

新制度になるまでは、煩雑な書類の提出もなく、担当 Dr、訪看の吸引指導
を受け、ヘルパーと私との同意書を交わし、先輩ヘルパーの吸引指導を一人
で訪問できるまで続けました。

新制度は煩雑な手続きを簡略化する必要性があると思います。


2012年 4月前後での大きな変化は事業所及びヘルパー、そして指導者講
習会を受講した訪看などの負担が大きかったことです。
年 4月前後での大きな変化は事業所及びヘルパー、そして指導者講
習会を受講した訪看などの負担が大きかったことです。

横のつながりがない

現在、私のところに入っているヘルパー事業所は 8ヶ所です。しかし、1
名体制の事業所は 2ヶ所、2名体制は 2ヶ所、3名体制は 3ヶ所、4名体制
は 1ヶ所です。綱渡りのような体制と言っても過言ではありません。

1事業所が撤退した場合、私の在宅療養生活は、立ち行かなくなるかもし
れません。もしも… …そのようなことになった場合のことを想定しました。

ケアマネジャーが吸引できるヘルパー、及び事業所を探さなければなりま
せん。以前と同じように片端から電話をして探す方法しかありません。

喀痰吸引の新制度がスタートしても、ヘルパー事業所間の横の繋がりがあ
りません。私のところに入っている事業所は訪看も含めて何らかの繋がりが
あります。年に 1度の担当者会議で顔を合わせるからです。

しかし、私のところに入っていない他の事業所とは、それほど接点がない
ように思います。

私がもの申すのもおかしいかもしれませんが、連絡会議ぐらいはあっても
いいのではないでしょうか。現状では介護保険、障害者総合支援に分かれて
いて難しいのかもしれません。

喀痰吸引の認定の取得者がどの事業所に所属しているのか分かれば一番
良いのですが……。

新制度がスタートして 2年目に入りました。

A事業所も 1名の喀痰吸引研修申し込みをしました。

このように少しずつ前に進んでいかなければなりません。

しかし、在宅でのヘルパーの吸引は進んでいないようです。

制度が先行したことも要因の一つでしょう。

在宅療養生活者で吸引を必要としている方が1人でも多くこの制度を利用
できるようになることを望みます。
2012年 12月の担当者会議
身の引き締まる思いで読ませていただきました
水町真知子・ ALS近畿ブロック事務局長からの返信

大多和様

原稿いただきました。ありがとうございました。

タイムリーな内容ですね。大多和さんの生活が介護でどのように支えられ
ているかが少し見えるようです。

先日、ある地域のご家族から電話がありました。介護保険の上積みで重度
訪問介護が約 500時間もらえている。複数のヘルパー事業所が訪問している
が、全員吸引の認定手続きはしていない。手続きをしないといけないなら訪
問できないということで、一致しているそうです。

私は利用者・ご家族がそれを認め、介護事業所全部がそう決めたとしたら、
それもありかなと思っています(推奨はしませんが)。

私がケアマネを担当している ALS患者さんも、会社の方針で手続きはし
ないというところがあります。

その事業所のヘルパーが訪問するときは、いつでも家族が吸引できる体制
にするのを条件にして、訪問を続けてもらっています。やめるよりはましで
すから。


看護サイドの猛反対で、無理やり手間とお金のかかる制度にさせられてし
まいました。患者会や患者さんの意向が優先されたら、こんな制度にはなら
なかったはずです。
まいました。患者会や患者さんの意向が優先されたら、こんな制度にはなら
なかったはずです。

それでもこの機会を逃しては、吸引等の医療行為は永遠にヘルパーには禁
止されたままになっていたと思います。

少しでも報酬がついたことがせめてものメリットと言えるかなと思いま
すし、医師の指示というのは大きいですね。医師の指示によって守られてい
るという実感があります。

ヘルパーとの信頼関係をつくる「能力」

大阪府の喀痰吸引のホームページには登録認定事業所一覧が掲載されて
います。

兵庫県でも一覧を掲載してほしいと、大多和さんは利用者の立場でメール
発信されたら県も気がつくと思うのですが。

ただし、大阪府の場合、一覧に掲載されている事業所は手いっぱいなとこ
ろが多く、掲載の事業所に頼んでも無理なのではないかと思います。

いままでどおり、片っ端から近隣の事業所に介護の訪問を打診するという
ことでは、いままでと違いはないと思っています。

むしろ、ALS患者さんに対して介護事業所が訪問したがらない傾向は強ま
っているように思います。

吸引だけでなく、文字盤、まばたきの読み取り、パソコンの使用援助がヘ
ルパーにも看護にとっても難しいのだと思います。その上に経管栄養や、人
工呼吸器、カフアシスト、持続吸引器と、初めて見る人たちには、いったい
何がなんだかわからないのも無理はありません。

大多和さんの文章は、介護職の立場に寄り添って書いてくださっているの
が、私にはうれしいことです。

介護職にご自分の生活と生命を託したいという強い思いを持って、ヘルパ
ーを指導し信頼関係をつくる「能力」を持つ患者さんは多くないです。

私はいつも大多和さんの文章を読ませていただき感動しますが、今回は身
の引き締まる思いで読ませていただきました。ありがとうございました。
(長くなってすみません)
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