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平成25年度 日本ALS協会近畿ブロック 総会&交流会
平成25年6月15日(土曜日) 13時?16時30分
グランキューブ大阪(大阪国際会議場)
司会 柴田真理子
総会
議長 堀田幹子(遺族) 西村隆(患者)
1.平成24年度活動報告
2.平成24年度決算(案)
3.平成25年度活動方針(案)
4.平成25年度予算(案)
5.平成25年度役員(案)
→いずれも承認された。(内容は会報の後ろのページに掲載)
(1)講演
「Blom気管切開チューブのご紹介」
石田正太さん (株)インターメドジャパン
○司会 会報73号の総会案内にも、ブロム気管切開チューブの紹介文を掲載させていただいておりますので、それもご参考にお読みいただいて、今日のインターメドジャパンの石田正太さんのお話を聞いていただければと思います。
いままで、気管切開をできるだけ遅らせたいと考えられる患者さんが多かったのは、気管切開をすると発語が困難になる、ということが一番のネックだったのですが、気管切開しても発語できる可能性のあるブロム気管切開チューブについて、お話しいただきます。よろしくお願いいたします。
○石田正太さん 今日はブロム気管切開チューブという新しいテクノロジーの製品のご紹介をさせていただきます。
おそらくこの気管切開チューブを初めて見た、聞いたという方がほとんどかと思います。こちらのチューブは、2011年12月末、実質2012年から販売させていただいておりまして、約1年半になります。このチューブを取り扱い始めて、スピーチカニューレが必要な方がどういう方かということを、われわれも勉強している最中でありますので、もし至らぬ表現がありましたらお許しいただければと思います。
まずブロムの気管切開チューブについて、従来品との違いですとか、製品の特徴、それからどういうふうに作動するか、いくつか動画も準備しておりますので、そちらもご覧いただければと思います。
こちらの写真が、ブロム気管切開チューブを作ったドクター・エリック・ブロムというアメリカの言語聴覚士です。特に発声学に長けていて、過去に人工喉頭をいくつか開発されている著名な先生です。パルモダインというアメリカの会社と共同開発をしたチューブで、日本ではインターメドジャパンで取り扱いをしております。
声を取り戻してもらえるように開発
このチューブは、気管切開されている患者さんで人工呼吸器を装着されている患者さんに声を取り戻してもらえるようにということで開発されたチューブです。
いま市場にある気管切開チューブですと、長期の方では二重管の気管切開チューブを使われている方が比較的多いと思います。二重管の気管切開チューブといっても内腔を清潔に保つため、閉塞を防止するために交換をするということで、特に内筒自体には機能的なものは付いておらず、定期的に洗浄や交換をして使われているのが現状です。
他にも市場にはさまざまな気管切開チューブがございます。一重管のもの、これは比較的急性期で短期使用の方に多いと思うのですが、二重管は長期使用の方に多いです。それからカフ上部に吸引機能が付いたもの、付いていないもの、自発呼吸下で会話をするためのスピーチバルブ等があり、オプションで取り付けてさまざまな使い方をします。状況に応じて外筒、つまり気管切開チューブ自体を取り換えないといけないものが多いと思います。
ブロムの気管切開チューブは二重管タイプになっておりますので、外筒と4種類の内筒を組み合わせながら使用しますが、それぞれが特徴、機能を持っております。内筒を交換することによって、外筒はそのままで、その場に応じた必要な処置ができるというチューブになっております。
本日は、左下のサクションカニューレ、それから右上のスピーチカニューレを中心にお話したいと思います。
まずサクションカニューレ、一つ目の内筒ですが、こちらはカフ上部に溜まった分泌物の管理をしていただくためのチューブになります。実際いま市場でカフ上部吸引機能付きはかなり多くの種類が出ていますが、その大半が外筒、チューブの外側の側面に付いているケースが多いと思います。おそらく本来は背面に付けたほうが効果的な吸引が可能ですけれども、背面に付けてしまうと気管後壁に当たってしまって肉芽の原因になったりしますので、側面に付けざるを得ないのが現状かと思います。
ブロムのサクションカニューレは内筒側にサクションラインを埋め込み接着してあるチューブになります。側孔付きの外筒と組み合わせることで、カフ上部の背面からの吸引というのが可能になりました。実際、分泌物というのがどこに溜まるかと申しますと、この気管後壁ですね。カフの直上部分が一番溜まりやすいので、この位置から吸引できるというのが理想的な吸引の位置かと思います。
これは間欠的な吸引を意識した、ある程度高圧の吸引になりますけれども、ほぼカフ上部の分泌物というのが除去できている様子がわかると思います。
次は低圧持続吸引のシミュレーションですが、同じようにカフ上部の分泌物がきれいに除去できている様子がご覧いただけると思います。非常に特徴的なサクションカニューレですので、カフ上部の分泌物管理を非常に効果的にやっていただけるのではないかと自負しております。
間歇的吸引及び低圧での持続的吸引が可能で、いずれの方法も効果的にカフ上部の分泌物を管理していただけます。
スピーチカニューレ
次にもう1種類の内筒、スピーチカニューレですね。このチューブがおそらくブロムの一番アイデアが詰まったチューブではないかと思います。
人工呼吸器を装着された状態で発声する方法というのは、今までも、なくはありませんでした。その1つがカフを脱気させて、あえてリークを作って、上気道、喉頭の方に流れを作るという方法です。この方法であれば、確かに上気道の方に向かって多少のガスの流れは得られると思いますので、発声は可能かもしれません。ただ、デメリットとしてカフを脱気するということは、誤飲のリスクが高まってしまう、それからカフを脱気してしまうので厳密な陽圧換気というのが不可能になるなど、リスクの高い方法ではあります。
もう一つは、ボーカレイドタイプと書いてありますが、サイドチューブに酸素や空気を流して、同様に喉頭のほうに向かってガスの流れを確保するという方法もございます。ただ、これは相当な流量を流さないといけなくなります。例えば1分間15リッターを流しても1秒間に直すと250ml程度のガスの流れになりますので、ともすれば、ささやきみたいな声になってしまう可能性があります。15リッター流してしまうと患者さんがちょっと不快に感じてしまうかと思いますので、完璧な方法ではないと思います。
新しい選択肢としてブロムスピーチカニューレというものが開発されました。絵をご覧いただいたらおわかりかと思いますが、2カ所の弁を活用しております。先端のフラップ弁と呼ばれるものは吸気時、人工呼吸器がガスを送った時に開いて、吐く時には閉じます。バブル弁と呼ばれるものは、吸気時には(側孔を)閉じた状態になり、吐く時は(側孔)が開放されるとい
うような原理になります。
もっと具体的に言いますと、あの青い矢印ですね、あれが人工呼吸器からの吸気と思ってください。先端のフラップ弁でこういう風にパカパカ開閉するだけの弁になりますので、吸気時はフラップ弁が開いて患者さんの肺の方にガスが流れます。次は、呼気時
ですね、あの緑の矢印ですけれども、吐く時は肺からの呼気でフラップ弁が逆に閉じてしまいますので、逃げ場というのがバブル弁の方向にしかなくなります。収縮したバブル弁から外筒の側溝を通じて上気道にガスを流すというような、非常にシンプルな原理になっております。
スピーチカニューレが役割を果たすには、発声に必要な条件というのが2つあります。一つはまず喉頭が十分に機能していること。もう一つは吐く息が喉頭を通って開放されるということ。その2つが必要になってきますけれども、その2つの条件のうち、呼気を上気道に流すということを可能にしているカニューレというふうに思っていただければわかりやすいと思います。
これはアニメーションですけれども、吸気、呼気の流れがこういう風になりますよというのを示しております。今、吸気が入って行きました。呼気が側孔を通じて上気道へ流れて開放されるというようなアニメーションになります。
吸気が入ってきて、本来であれば呼気は機械に戻るという流れになりますが、吸気が入ってきてそれを上気道に流しますので、機械の方が「あれ?呼気が戻ってないよ」というふうに感知する可能性があります。何もしないでいると、そういう機能が付いた呼吸器というのは必ずアラームを鳴らします。(リークアラームや)低分時換気量のアラーム等が鳴ってしまいますが、それを誤魔化すためにEVRという、小さい提灯みたいなもので、毎回の呼吸でちょっとだけ機械の方にガスを戻す役割のものがありますので、アラームの感度を下げることで鳴らなくすることは可能になってきます。在宅でよく使われているような、機械に戻るタイプではない呼吸器は、この心配はないかもしれないですけれども、病院ではEVRを併用して使っているところがございます。
喉頭が機能していること
これは海外の方ですけれども、話しているところを見ていただければと思います。ジェシカさんという女性ですが、交通事故による脊髄損傷で、人工呼吸を余儀なくされてしまいました。最初、スタンダードカニューレが入っています。途中からスピーチカニューレに入れ替えます。
(動画/英語)
今、スタンダードカニューレなので、通常のガスの流れになっております。患者さんは口パクで意思を伝えようとされています。
(動画)
今からスピーチカニューレに入れ替えます。
(動画)
今、見ていただいたみたいに、スピーチカニューレで上気道へガスを流すということが可能になりましたので声が出せたという状況です。どういう方が発声の可能性が高いか考えてみたのですが、ブロムのスピーチカニューレがやっているのは、ガスの流れをコントロールしているということになりますので、もう1つの条件、喉頭が十分に機能しているということが必要になってきます。可能性が高い場合として、上気道が開通していること、これはもう絶対条件になりますので、気管切開される直前まで声を出されていらっしゃった方というのは、喉頭がその時点で機能しているということになりますので、可能性としては高いと思います。経口摂食が可能な方も、嚥下機能が(正常で)あるということで喉頭(や舌)が機能していると想定されます。
司会の方もおっしゃっておられましたけれども、ALS等の患者様で、声を失うことを考えた場合に気管切開を躊躇される患者様がやっぱりいらっしゃるとお聞きしています。そういう場合に、1つの選択肢として、1つの方法として、こういうものも活用できればと思います。
これらは可能性が高い場合ですが、逆に言うと、喉頭や舌の機能が低下されている方というのは、ガスの流れを作ってもひょっとしたら難しいかもしれません。
チューブ・呼吸器側の条件
今までのお話はどちらかというと患者様側の条件ということになると思いますが、チューブや呼吸器側にもやはり条件はあります。まず、気管切開チューブというのは非常にセンシティブなものだと思います。ですので、ブロムの形状、それから大きさというのが気管に合わない方というのはやはり難しいと思います。それから、先程も申し上げましたけれども呼気が機械に戻らないようになりますので、1つはアラームの問題ですね。
もう1つは呼吸器回路の選択の問題というのがあります。在宅でよく使われているトリロジーという機械がありますが、近年ではメンテナンスの簡便さから「パッシブ回路」ですね、呼気ポートを利用した回路というのが普及していますが、その組み合わせで使ってしまうと機械の方がリークをしているということで、補正(機能)により余分にガスを流してしまいますので、ひょっとしたらバブル弁が収縮せずに呼気を排出できなくなる可能性もあります。呼気弁付きの回路、トリロジーでは「アクティブ回路」というものがありますが、そういったものを選択する必要性は出てきます。
これからの課題
その他の課題として、費用が挙げられますが、気管切開チューブの外筒は保険適用対象になりますが、スピーチカニューレというのは保険適用対象外になります。これはあくまで定価ですけれども、1本2万円で60日間は使用可能なので、1日300円ちょっとのご負担が出てしまうということ。それから、内筒の交換というのはご家族か、もしくは医療従事者、訪問看護の看護師さんとか先生方とか、という方が可能な作業になります。ですので、今のところヘルパーさんは内筒を交換することは出来ません。これも、法的な面のこれからの課題かと思います。
スピーチカニューレの使用が適さない方として、粘?(ねんちゅう)な痰が非常に多くて、1時間に5回以上の頻繁な吸引が必要な方というのはちょっと使える状態にはないと思います。上気道が明らかに閉塞しているような方はもちろんです。
あと10cmH2O以上のPEEPが必要な方、こういう方はひょっとしたら肺機能の面で少しスピーチカニューレを使うのはしんどいかもしれません。
下の2つは実際使われる時により発声の可能性を向上させるポイントとして、コツというか、こういう点に留意していただければということですが、気管切開チューブというのは非常にセンシティブなものです。まずはブロムの気管切開チューブ、外筒に慣れていただくという期間が必要ですので、いきなり交換してすぐにスピーチというのはちょっとしんどいかと思います。
それから、呼吸器の呼気に合わせて話をするのはちょっとコツが要ると思いますので、いきなり「ちょっと話してみて」「長いこと話してみて」というのは、おそらく難しいかと思います。最初は単語、ひと文字、「あ」とか、それでも良いと思います。そういうところから初めていただいたら、可能性は徐々に上がっていくと思います。
サクションカニューレは定期的に交換するか、もし汚れたら内腔、それからサクションライン等をフラッシュしていただければ良いかと思います。スピーチカニューレを付けながらの気管内吸引も可能です。注意点として、吸引をかけたまま抜き差ししてしまうと、先端のフラップ弁が巻き込まれる可能性がありますので、可能であればスピーチカニューレを入れ替える前にカフ上部、それから気管内の吸引を実施していただければ良いと思います。
サイズの問題ですが、まだ4サイズしかございません。いま気管切開されている方であれば、いま使われている外筒と、それに近いサイズをチョイスしていただくことになると思いますので、ベストマッチのものがひょっとしたら見つからないこともあると思います。このあたりのバリエーションというのもこれからの課題の一つと感じております。
この気管切開チューブ、スピーチカニューレというのはこういう原理ですと説明させていただいて、反面、こういう制限がありますということで説明させてもらったんですが、もちろんすべての方がこのスピーチカニューレを使われて発声が出来るかというと、そうではないと思います。可能性の高い方、それからひょっとしたら難しい方もいらっしゃると思います。ただ今までなかった一つの新しい方法として、可能性としてこのチューブを知っていただく機会になれば良いかなと思います。ご清聴ありがとうございました。(拍手)
○司会 ありがとうございました。公立八鹿病院の近藤清彦先生からご意見をいただいていますので、資料としてお配りしました。適応とか、欠点もあるということをドクターの立場から細かく書いていただいています。個別にご質問がありましたらメールで近藤先生にお尋ねくださいと書いていただいています。
まだ関西ではお使いになった方がいらっしゃらないので、これを病院で初めて使うとなったら、どういうふうに購入するかとか、その辺が最初にチャレンジされる方は苦労をされますけども、この資料を参考にお願いします。
Blom気管切開チューブによる発声についての私の考え
公立八鹿病院・近藤清彦
皆様こんにちは。公立八鹿病院の近藤清彦です。
本日はこの会に参加し、皆様にお会いしたかったのですが、兵庫県音楽療法士養成講習の講義の日と重なってしまい、今の時間は、神戸で講義中です。
さて、話題のBlom気管切開チューブによる発声について私の考えをのべさせていただきます(実物を拝見しましたが、実際にはまだ使用経験はありません)。
発声できる条件は
1.気管切開を行う前までは発声が可能だった
2.口や舌の動きがよい
3.嚥下ができるとさらによい
4.口や咽頭に唾液などの分泌物貯留が少ない
5.気管食道分離手術を行っていない
などの条件を満たす方は発声できる可能性があります。
これらの方は、従来、
1)カフエアを少し減量する
2)スピーチバルブを使用 (現在は行っていません)
3)サイドチューブから空気を注入する
などの方法で発声していました。
1)、3)の方法をよく行っておりますが、唾液が気管内に落下することで肺炎をおこすおそれがあります。
とくに、3)の場合、注入する空気の量が多くなると(1分間に6リットル以上)肺に空気を送り込んでしまうことがあることが最近わかりました。
Blomの場合は、カフエアを減量していないので肺炎をおこす危険性が少なそうです。欠点は、
1.人工呼吸器の呼気量が設定値より低くなるため、低圧アラームの設定をその都度変更する必要があること。
2.発声に使用するインナーチューブが実費(2万円)になること
いずれの方法においても、気道内分泌物が多量になったり、のどや舌の筋肉が萎縮すると発声ができなくなりますが、限られた期間であっても、発声ができることはすばらしいことです。個別にご質問がありましたら、メールでお尋ねください。
☆近藤清彦先生(公立八鹿病院神経内科)のアドレスは
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