障害者自立支援機器「シーズ・ニーズ マッチング交流会」
      ?作る人と使う人の交流会?
 
    
        立命館大学大学院先端総合学術研究科 西田美紀
 
 
 3月27日(土)、TOC有明コンベンションホールで、障害者自立支援機器「シーズ・ニーズ マッチング交流会」?作る人と使う人の交流会?が開催されました。交流会では、開発や改良等を行う機器の展示とともに、障害当事者、家族、研究者、専門職、障害団体、支援機器開発企業等が一堂に会し、良質な支援機器の開発に向けて、体験や意見交換をしていました。
 当事者団体は、日本身体障害者団体連合会、全国脊髄損傷者連合会、全国盲ろう者協会、日本盲人会連合、ろう・南朝教育研究会/ろう教育を考える全国協議会/筑波技術大学、全日本難聴者・中途失聴者団体連合会、日本ALS協会、ポリオの会、自閉症サポートセンターが参加しており、私は日本ALS協会のブースで、京都の増田英明さんの体験を見学したり、会社の方の話を聞いたり、開発機器の体験をさせていただきました。
 
 日本ALS協会のブースでは、介護リフト、自動排泄処理装置、指伝話、なんでもワイヤレス、自分の声のソフトウェア・ボイスター、伝の心、レッツチャット、スイッチ、視線入力、OriHimeなどが展示されていました。
コンパクトな移乗リフト 自動排泄処理装置
 手動式、電動式のコンパクトな移乗リフトは、二人介助でなくてもトイレ移乗が簡単にできます。ただ、自動排泄処理装置もそうですが、本人の体型や状態で利用できるか否かの個人差があるように思いました。介助補助装具は便利な反面、身体変化に対応できない不便さもありますね。以前、自動排尿装置を使用していた方がいらっしゃったんですが、尿を感知する部位を掃除していないと感度が悪くなったり、尿の勢いや出が悪くなると感知しにくく、排尿介助を巡るトラブルが増え、結局、普通の尿器を使っていたことがありました。

自分の声のソフトウェア 視線入力 なんでもワイヤレス
 自分の声のソフトウェア「ボイスター」はニーズがあるんじゃないでしょうか。気管切開の前に自分の声を録音していた人の、「ほんまかいなー」という関西弁の突っ込みに、周囲の人やその場が和んだ記憶が蘇りました。「もう来るな!」「アホ!」とか発せられたら、リアル過ぎてへこみますが。それでも、音調や抑揚のある会話、音声でのコミュニケーションは、言葉だけのコミュニケーションよりも自然で豊かです。ただ、値段が高かったです。機能に応じたモデルが36万~95万円。誰でも手が届く価格になりますように。
 
 それに比べ、視線入力の方は「Click2Speak」というフリーソフトウェアで、Tobii EyeX controllerが使え、1万50000円ほどで使えるそうです。ハーティラダーでもできるようになったんですね。そんな低価格で視線入力ができるなんて、と思いながら増田さんの体験を眺めていましたが、キャリブレーションに時間を要し、実際に使えなかったんです。何故でしょう・・??外出にも使えるアームがありましたが、日差しがきついと使いにくいってことはないんでしょうか。きっと日々進化していくと思われます。
 
 「なんでもワイヤレス」は便利だなと思いました。WindowsやiPhone、iPad、Androidのデバイスと外部スイッチをBluetoothによりつなぎ、ワイヤレスで操作できるスイッチインターフェースです。ALS患者さんのお宅はコード類が多くて足を引っかけそうになるときがあるんですが、これだとベッド周辺がスッキリしてケア環境もよくなりますね。他のブースには、一枚の電極パットで心拍数と体温を測定できてモニタリングできる「からだシグナル」という機器がありました。医療現場ではニーズがあるんじゃないでしょうか。
 
キュートな分身ロボット「OriHime」
 人目を引いていたのは、分身ロボット「OriHime」というコミュニケーションロボットです。いろんな事情から外に出られない、ベッドから動けない人たちが、もうひとつの自分の身体として、会いたい人に会える、行きたいところに行き、社会に参加できる。離れた場所から操作し、その想いを叶えられるようです。使い方は、OriHimeを好きな場所に置いて、有線LANもしくはWifiでインターネット接続し、背中のメインスイッチを押して電源ONにするだけで準備完了。
 
 ふと、あるALS患者さんを思い出しました。車椅子での移乗が難しくなっていたとき、ベッドから見える位置にいろんなものを移動させ、部屋と部屋の間には鏡を置いて隣の部屋が見えるようにしていました。早朝に台所と寝室の間のカーテンを開けると、ベッドの向かいの欄間に飾っている額縁のガラスに、台所が映るのを発見したと大喜びされていましたが、光の反射具合や見える範囲が限られていたため、ヘルパーの動きが怪しく感じるようになり、隣の部屋でパソコンを触っているなど疑うこともありました。
 
 あの頃にキュートなOriHimeがあれば、在宅の場も和んでいたかもしれません。そういう話を会社の人としていたら、女性のALS患者さんで、OriHimeのデモ機を使ってベッド上から台所でヘルパーに料理を指示し、食事を作られていることを聞きました。食卓で家族との交流もできるそうです。後に会社のHPを見たら、無菌室にいる子どもが遠隔操作で家族と一緒に過ごしたり、学校での授業を受けられたり、施設に入居している高齢者が馴染みの商店街で買い物できたり、いろんな試みがされていました。
 
 スカイプと比べて周りが見渡せるのもいいですね。防犯や安否確認にも使えそうですし、独居高齢者のニーズもあるんじゃないでしょうか。病院や施設で一台10万、数年後には在宅で数万以内での販売を目指しているそうです。ロボットの顔が開いて本人の顔が見えるリアル機能が付いたり、携帯ぐらいの大きさで持ち運べる小型分身のロボットとかあれば大ヒットするかもしれません。OriHimeということは、いずれHikoboshiもできるのでしょうか。
 
 開発中の自立支援機器を見聞きし体験していると、いろんな患者さんの療養生活の記憶が蘇り、もっとこうしたらいいんじゃないかと空想や夢が膨らみ、気分が高揚してきました。これからは「無線」時代になるでしょうね。人工呼吸器も体内へのチップの埋め込みだけで蛇腹がなくても呼吸できるとか、ロボットスーツもストッキングぐらいになるかもしれません。頭の中で考えるだけであらゆる物を動かせる。四肢や発声の機能を喪失しても、考えただけで話せて手足も自由に動かせて、仕事も今まで通りできる。
 
 ただ、頭の中で考えていることが可能になり過ぎて困ることや、コンピューターウィルスやセキュリティの問題も出てくるかもしれません。いろんな夢が現実になったとき、私たちの生活にどんな課題が生じてくるのでしょうか。
 
 機器の利便性を求める一方で、「きかいはしんようできない」「きかいはつめたいからいい」と、介護を巡るトラブルが多くても、PCよりも文字盤、リフトよりも人の手を好んでいた患者さんを思い出しました。身体ケアの葛藤はケアされる側だけにあるものではないと思いますが、例えば、さまざまな支援機器が進化すると、介護職や看護師は患者さんよりも機械のメンテナンスに時間を費やし、身体の微調整よりも機械の微調整に追われているかもしれません。
 
 先日、四肢麻痺女性が脳に移植した電極を使ってロボットアームを自由自在に操ることが可能になり、その次にステルス戦闘機も操れるようになったというニュースが発信されていました。専用のシミュレーターの中での話だそうですが、アメリカ軍の正式パイロットたちが使用するシミュレーターだったようです。世界に先駆けた良質な自立支援機器の開発を望みますが、開発された医療・福祉機器が軍事目的として使用されないよう細心の注意が必要ですね。
 ☆ユーザーの立場???ALS患者として☆
 シーズ・ニーズ マッチング交流会に参加させていただきました京都の増田英明です。岡部宏生さん(日本ALS協会副会長)より「会場のいろいろな機器を見たり試したりしてメーカーの人たちと交流をしてほしい」ということであちこち回りました。
 まずは岡部さんにすすめられた視線スイッチを試しました。
 眼で追うだけで入力できる夢のようなスイッチです。
 ところが私がやっても意味不明の文字が表示されてしまう。目で指しているつもりでもなかなかうまくいかず、私の状態では難しいのかもしれません。
 私はふだん11インチのタブレットを使い、口スイッチ(口にチューブをくわえ噛んで押す)で5センチ四方もないオペレートナビを使いこなしているつもりだが、視線スイッチが使えず残念でしたし、目が疲れました。

  OriHimeという小さいロボット。病室の監視カメラは味気ないがオリィは可愛げがあり声も出ています。近い将来そばにいるかもしれないです。

 会場の研究者たちは当事者の生の声もたくさん聞きたがっていました。
 私も交流の場が増えていくことを望みます。
 

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