時間をかけて相手のことを考えて動けば
本当のやさしさが伝わる 絆が生まれる

ALS 奈良つながりの会活動報告 西口尚美

コスモスが秋風にゆれるころとなりましたが、皆様もお変わりなくお過ごしでしょうか。個人的なことなのですが、私は、恐れ多くも伊藤園の「お~いお茶 新俳句大賞」に応募させていただきました。どうしても、主人のことを許せずにいたので腹立たしいことを嫌味たらたらで川柳にしてみました。すると、共感していただけたのか、佳作にしていただきました。私は、とてもうれしかったので、主人を心から許してあげようと思いました。
血圧の 薬片手に ワイン飲む

*6月 17 日水曜日 13 時 30 分 西口、竹中(ヘルパー)
京都中央看護保健大学校で増田英明さんの講義を聴講させていただく。
増田さん:信頼が得られる看護師になってほしい。信頼とは、技術技能はもちろん、コミュニュケーションをとれる人。透明文字盤は必ず読めるのは医療従事者の必然である。
感想:学生さんが透明文字盤を手作りし、増田さんと会話をされました。貴重な体験をされたと思います。また、当事者からの現実のお話を直接聞くことは大変意味あることだと感じました。

私の体験をお話させていただきました
*6月 30 日火曜日 15 時から 16 時 30 分 西口
京都中央看護保健大学校で、私が体験した在宅介護のお話をさせていただく。
テーマ:在宅看護で大切にしたいこと、大切にしてほしいこと
看護保健学科学科長・池田万喜子先生のリードで対談させていただきました。
池田先生:ALS と宣告されたとき、率直にどのように思われましたか?
西口:信じられない…腎臓移植をして2か月でのALSとの宣告は、移植前からたくさんの検査をしていた私たちには、そんなはずはないという気持ちでした。 池田先生:ご主人とどのようなことを話し合われましたか?
西口:何も話し合ってはいません。宣告された後、主人はパソコンで調べまくりました。私は、本も読めないし、パソコンも使えなかったので、病気の詳細はわからないまま時が過ぎました。なんだか主人に聞けなかった。両親や子どもたちにも移植のときに心配をかけたばかりだったので聞けなかった。誰にも相談できず、病気のことも調べられずに時が過ぎました。主人とお医者さんの会話の中で主人の気持ちを声で探るしかありませんでした。胃ろうも呼吸器もつけないと言ったときの主人の声。家での様子。ただ、人工呼吸器だけは、最後に入院したときにも「人工呼吸器つけて!」と、何度も泣いてお願いしました。
池田先生:徐々に動くことができなくなっていく中でどのようなことを楽しみ
(生きがい)としていましたか?
西口:北海道やフランス旅行から帰ってからは、1月 25 日まで、雨の日も風の日も毎日、電動車いすで朝から夕方までお出かけをしました。少しぐらいの雨では「降っていません」と言います。
池田先生:息苦しさが徐々に強くなっていくとき、どのような思いでしたか? 西口:見えない眼で手探りの中、震える手で痰の吸引をした。ひっきりなしに鳴り響く呼び出し音が頭の中で鳴りやまず、いらだち、パニックになった。疲れていた。休みたかった。眠りたかった。自分の時間がほしかった。でも、主人の傍を離れられなかった。誰にも任せられないと思っていた。怖かった。入院したときは、これで安心と思った。お医者さんもいるし看護師さんもいる。痰の吸引も上手い。苦しまないようにお願いした。

池田先生:人工呼吸器をつけないと判断したのは、なぜですか?
西口:主人の意志に従いました。主人の気持ちをわかりたいと思いました。視覚障がい者の妻に自分の介護ができるのか? もし、透析に戻ったらどうなるのか? 自分に耐えられるのか? 悩み、苦しみ、耐え、諦め…私も自分だったら… と考えました。でも、たったの1年でどんどん進行した ALS にゆっくりと考え、前向きになる時間はありませんでした。
池田先生:入院のきっかけは何だったんですか? 西口:誤嚥性肺炎です。
池田先生:ALS という病気であるため日常生活においてほとんど介護が必要だと思えるが、社会資源は何を活用していましたか? それはなぜですか? 西口:保健師さん、訪問看護師さん、訪問医さん。ヘルパーさんはお願いしていません。主人は、私が見えないことを理解しようとしてくれた初めての他人です。たくさんの人の出入りがあると、どうしても物の移動があります。「ここに置いておきます。あそこです。こうしておきますね」なんて言われても、私には何のことか全く分かりません。いつも同じようにしてくださいと言っても置き忘れたり、戻し忘れたり、良かれと思って勝手に移動されます。私は、探しまくらないといけません。手に触れない限り横にあっても、目の前にあっても分からないのです。主人は、何も言わなかったので、主人の本心は、分かりません。でも、主人は、そんな私を知っています。だから、必要最小限度の人しかお願いしなかったのだと思います。

池田先生:例えば食事の介助はどのようにされていたのですか? 調理は? 西口:調理は、問題ありません。家の台所でしたら自由自在です。パンもケーキも作ります。とろみをつけることも、ミキサー食も大丈夫です。ただ、スプーンを使い、平行に移動して人の口に運ぶことが難しいです。スプーンの裏表を間違えたり、少し口からずれて鼻に突っ込んだりと苦戦しました。
池田先生:排泄の介助は? 入浴の介助は? 口腔ケアは? 掃除や洗濯は? 西口:排泄はできるだけトイレでと頑張りました。車椅子をトイレに近づけ反動を利用し、立つ瞬間に体を傾け、いっきに便座に座ってもらいました。失敗して倒れると大変です。一度倒れると立つのは大変です。パニックになっている私の頭は、主人がどうなっているのか分からなくなります。主人の体を触り位置を確かめ、車椅子の位置を確かめます。力もいるけど、狭いトイレでは、ぶつけるといけないので壁を確かめ、車椅子を確かめ、角度を確かめます。難しいのです。 口腔ケアは、できるだけ看護師さんに任せました。移植をした後で免疫抑制剤を飲んでいたので、衛生面には気をつけました。私は、自分の歯ブラシに歯磨き粉をつけることも難しいんです。一度指に粉をつけてからブラシにのせます。アイマスクをしてやってみてください。意外と変なことが難しいですよ。
入浴は、かなり頑張りました。毎日、家のお風呂でした。私が主人と二人で入っている間、看護師さんには外で待機してもらっていました。看護師さんが勝手に主人の足の位置を決めるのが怖かったらしく、不機嫌でよく怒りました。毎日入浴をするので、そんなに毎日でなくてもいいのではと言われたこともあります。
また、体を洗うのは私にしかさせませんでした。最終的には、週3回の訪問入浴になりました。掃除や洗濯は、問題ありません。
池田先生:痰や唾液の吸引も必要だったと思うのですがどうされたのですか? 西口:私がしました。看護師さんも視覚障がい者に教えたことがないらしく、困っていましたが、これ以上入れたらダメなところにテープを貼る工夫をしてくださいました。
池田先生:コミュニケーションはどのようにされていたのですか?
西口:ほとんど話せなくなったのは短い時間でしたが、透明文字盤が使えない私は、口でアイウエオを言いながら言葉を探しました。主人の返事は、瞼ぱちぱちです。私は主人の瞼に手を当てます。
池田先生:ご主人は ALS と診断を受けてから、「自宅で家族とともに暮らそう」と考えられたとき、どのような思いがあったのでしょう? 西口さん自身はどのようにしてあげたいと思っていましたか?
西口:主人は、何も言いませんでしたから本当の気持ちは分かりません。でも、入院するたび、すぐに家に帰ると言っていましたので家が良かったのでしょう。 私たちは、一度も入院をしようとは考えもしませんでした。そんな選択肢があるとも知りませんでした。病院からも保健師さんからも聞いていません。 私は、主人の気持ちを大切にしないといけないと思っていました。主人の本当の気持ちはどうなんだろうといつも思っていました。

池田先生:いろいろな苦難を乗り越えて来られた今、医療者に対する思いや期待を教えてください。
西口:私は思います。在宅介護は、病院のように決まった仕事をこなすのではなく、家族の介護をするように相手の立場に立って良かれと思うことをしてほしい。言ってほしい。
今回のテーマでもあります在宅看護で大切にしたいこと、大切にしてほしいこと、それは人の痛みを分かろうとすること。決して分かりきることはできなくても、分かりたいと思い、分かろうと努力すること。当事者の気持ちは当事者にしかわからないと思います。また、家族の気持ちは家族にしか分からないこともあると思います。それでも、分かろうと思って看護しなければ何の声も聞こえてこないのではないでしょうか。
決められたことをきちんとしようとするばかりで、当事者の気持ちを、そこに住んでいる家族の気持ちを無視しないで。 在宅介護はやりがいがあるように思います。時間をかけて相手のことを考えて動けば、本当の優しさが伝われば、時間がかかってもそこには、きづなが生まれ、喜びや、やりがいが生まれ、自分でないとできないことができるのではないでしょうか。それは、自分が生きているということなのではないでしょうか。
最後に皆さんにお願いです。相手の立場に立って考えられる本当の優しさを持ったナイチンゲールになってください。

感想:学生さんにとって意味のあることが話せたかは疑問ですが、私にとっては、緊張しましたが大変良い経験をさせていただきました。言いにくいこともこれからの看護師さんたちに言ってしまいました。最後に、学生さんに私たちのなれそめを聞かれたとき、学生さんたちとの距離が縮んだように感じました。
増田さんの講義を聴きに行く機会を与えていただいて、貴重な体験をセッティングしてくださったこと、感謝いたします。

*7月 13 日月曜日 12 時
 ALS 奈良つながりの会の定例会をしました。今までは、多氣さんと二人でしたが、今回は伊藤さん、加藤さん、中平さんも奈良まで来てくださいました。大正時代からの古い奈良の町屋で野菜たっぷりの発酵料理をいただき、5人でお話をしました。闘病生活のことや最近のことまで、悲しくなることも辛くなることもありましたが、おいしい食事と笑顔もありました。発酵料理で心も体も元気になってくださったかしら? 遠くまで足を運んでくださり、ありがとうございました。
*10 月9日金曜日 13 時~15 時
奈良市内の公立中学校に増田さんが来てくださり、子どもたちにコミュニケーションの大切さをお話してくださいます。人との違いを認め合い、社会の中で生きる自分。自分にしかできないことをする。何を感じるかは、想像もつきませんが、増田さんのご協力のもと、初めての試みに挑戦したいと思います。
一緒に考え行動をしてくださる方がいらっしゃれば、ご連絡をお願い致します。
文字盤でケンカするほど仲が良い ~★~☆~★~☆~
ALS 奈良つながりの会 代表 西口尚美
連絡先 携帯:090-1070-8653 アドレス:hideonaomi910@royal.ocn.ne.jp
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