バイパップについての、ちょっとした説明
エンパワー訪問看護ステーション管理者 小林智子
「バイパップについて、簡単明瞭に書いて。締め切りは1週間」という事務局の、何とも無茶苦茶な依頼に、「え〜、無理無理。呼吸リハに詳しいPTさんにお願いしようよ〜」という私の抵抗はむなしく却下され、とりあえず書いてみることになりました…(涙、涙、涙…)。
バイパップ=NPPV=鼻マスク ???
「バイパップ」や「鼻マスク」という言葉が、患者さんやご家族のお話に出てくることがあります。それがどういうものかを知っている人は、ふんふん…と抵抗なくイメージできるのですが、知らない人にとってはちんぷんかんぷんでさっぱりわからない、となるかもしれません。
本当はイコールではないのですが、「バイパップ」と「鼻マスク」と「NPPV」、3つはほぼ同じ意味で使われているので、それぞれについて説明を試みます。
バイパップって何?
片仮名で「バイパップ」と書くとどちらか分かりませんが、アルファベットで書くと2種類あります。
BiPAPとiが小文字になっている場合は、特定の呼吸器の名前、商品名です。その名前の由来は、すべて大文字のBIPAPから来ています。
BIPAP(Bilevel Positive Airway Pressureの略)は、呼吸器の換気モードの一つで、患者さんの吸気と呼気に合わせて、2つのレベルの圧を気道に加える補助換気法です。吸気時には高い圧をかけて肺を広げることを助け(換気量が増える)、呼気時には低い圧になり息を吐きやすくします。
なぜ、呼気時にも圧をかけるのかというと、肺胞がつぶれるのを防ぐためです。肺は肺胞という小さな袋の集まりですが、中には膨らみやすい肺胞とそうでない肺胞があります。強制的に送り込まれた吸気は、膨らみやすい肺胞に行くので、膨らみにくい肺胞には少ししか入らず、呼気で完全にしぼんでしまう可能性があります。そうなると吸気時にも肺胞は膨らまなくなり肺胞虚脱、無気肺を生じます。呼気に圧をかけ、肺胞がしぼみきらないようにすると、次の吸気で膨らみやすくなります(しぼみきった風船を膨らますのと、少し空気の入った風船を膨らますのは、後者の方が楽ですよね)。できるだけ多くの肺胞が膨らむことで、肺胞と毛細血管の接触面積が増え、血中に酸素を取り込みやすくなります。
ちなみに、NIPネーザルという名前の呼吸器もありますが、次に出てくるNPPVからつけたものでしょうね。
NPPV(非侵襲的陽圧換気療法)って何?
人工呼吸療法で機械的陽圧換気は、IPPV(Invasive Positive Pressure Ventilation)「侵襲的陽圧換気療法」と、NPPV(Non invasive Positive Pressure Ventilation)「非侵襲的陽圧換気療法」の2種類に区別されます。
IPPVは気管内挿管や気管切開(のど仏の下辺りに手術で穴をあける)を行うために「侵襲的」と呼ばれ、そのうち気管切開により行われるものをTPPV(Tracheostomy Positive Pressure Ventilation)「気管切開による陽圧換気療法」と言います。
NPPVは主に鼻や顔全体を覆うマスクを用いて呼吸器を使用するため、体に傷をつけない、侵襲がない、ということで「非侵襲的」という名前になっています。
バイパップ=NPPV=鼻マスク ということで…
換気モードである「バイパップ(BIPAP)」はIPPVにも対応しているし、「NPPV」には「鼻マスク」以外のマスクや接続方法があります。また、「NPPV」には「バイパップ(BIPAP)」のように気道内圧を設定する“従圧式”だけでなく、換気量で設定する“重量式”の選択もあります(ややこしすぎて何言ってんだか分からなくなってきましたが…)。ですから、3つの言葉は同じでありません。ですが…。
商品名の「バイパップBiPAP」はNPPV用の呼吸器で、NPPVは鼻マスクを用いることが多いので、「バイパップ」「NPPV」「鼻マスク」はほぼ同義語として用いられます。また、これらはTPPVとの対比で語られることもあります。
手術の必要がなく、マスクの着脱という比較的簡単そうなイメージのあるNPPVですが、当然のことながら、メリット・デメリットがあり、適応や限界があります。がしかし…。1週間の原稿締め切りで、これ以上書くのは無理、絶対無理。ということで、続きは次回に…(また、自らの首を絞めることになっちゃったよ〜。涙…)。