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新しい意志伝達装置の紹介
田原邦明さん(八鹿病院の理学療法士)
視線でパソコンに入力する装置の臨床評価

 公立八鹿病院では新しい意志伝達装置の臨床的評価をしています。
いままでの意志伝達装置は、指先とか足の先とか、あるいは顔の中の筋肉を使って、それでスイッチを動かし、パソコンを動かしていたのですけれども、ご存じのようにALSという病気は、そういう筋肉までも落としてしまう可能性があります。そういう方に対して、今後、考えられる意志伝達装置は、眼球の動き、いわゆる視線ですね、それと脳波ということが考えられると思います。
 近畿ブロックでも、視線入力のパソコンの研究に参加されていると聞いていますが、公立八鹿病院が協力している視線入力意思伝達装置は、島津製作所が作られたHAQ200というもので、その臨床的評価をしています。実際の機械につきましては、この会場の端っこに置いてありますので、時間がありましたら、希望者の方にデモンストレーションをするとして、この装置がどういうものかということを簡単に説明させてもらいます。

ALS患者さんのためのQOL向上システム

 視線入力意思伝達装置、HAQという名前なのですが、なぜこういう名前がついているかといいますと、「HMDによるALS患者さんのためのQOL向上システム」の頭文字をとって、HAQとなっています。

 初めに出てきたHMDとは、ヘッド(H)・マウンティング(M)・ディスプレー(D)といいまして、いままでの意志伝達装置というと、テレビ画面のようなものを想像されると思うのですけども、この装置は、頭に取り付けるというか、顔につけるわけです。そういう装置をHMDといいまして、それを使った意志伝達装置です。

 特徴としては、
(1)主として、筋萎縮性側索硬化症の患者さんのコミュニケーションを支援し、知的、創造的活動および社会参加を支援することを目的とする
(2)ヘッド・マウント・ディスプレー、HMDの表示された画面で、視線入力を行うことによって、文章作成、テレビ観賞、インターネットなどを行うことができる

ですから単に意志伝達装置といっても、ワープロだけではなくて、テレビを見たり、あるいはエアコンを操作したり、それからインターネットをするようなこともできます。
基本的には仰向け(仰臥位)で使用することになります。一応座位でもできる、座ったかっこうでもできるようになっています。それに、HMDはオープンな構造で、使用している患者さんの表情を容易に観察することができます。さらに、HMDはVAG信号に対応した高画像を表示することができます。

パソコンで何をしていてもすぐナースコールを使える

 これは具体的にどんなことができるかといいますと、

(1) まずワープロです。それから定型句会話、電子メール、インターネット、テレビ制御、空調制御、チャイムを操作することができます。チャイムというのはナースコールのことです。

(2) モニター外機能。これは非常におもしろい機能で、画面の外をわざと見ることによって、ある種の機能を働かせることができます。
例えば画面の右側、画面の外ですね、外右を見ることによって、パソコンからテレビ画面に変わります。
 画面の枠から左外を見ることによって、ナースコールが鳴ります。
そういうふうなシステムになっているので、どんなことをしていても、ナースコールをすぐに使うことができるということです。

(3) カーソル制御切り替え機能というものがあります。この機械自体は患者さんの視線入力で操作するのですが、介助者がマウスで操作することもできます。それがワンタッチで切り替えできるということです。

(4)入力モードの切り替え機能。私もはじめは視線だけで使うものだと思っていたのですが、島津製作所では、それは二点目として考えておられて、まず一点目は画面上を視線で見て、それを確認したうえで、もう一つスイッチを押して文字選択、機能選択をする、そういう機能を持った意志伝達装置ということになっています。
 左側が「確定スイッチモード」と書いてありますが、これが先ほどいった視線で見たうえで、スイッチを手やその他の部位で操作するということ。その右にピンクの色で書いてあるのが、「注視モード」といって、視線で画面の一か所を見て、一定時間に達したら、それが確定するという方法です。
 公立八鹿病院としては、臨床的評価を注視モードのほうでやっていきたいと考えています。そうすることによってこの意志伝達装置の価値があるのじゃないかなと考えています。
全国で四つの病院で臨床的評価をしていまして、99年10月に検討会を行ったのですけれども、いくつか問題点があがっています。

目の疲労が激しい、それに値段も

  一番大きな問題点はHMDという顔につける装置ですね。これが非常に装着が困難だということです。本人さんにとっては、かなりうっとおしいものです。
  二点目にわずかな体の動きにも影響されやすく、視線がずれてしまいます。最初にキャリブレーションによって画面上の座標を決めるのですが、エアマットで体が上に上がったり、下がったりするとそれでもう軸が変わってしまうのですね。
  三つ目はなんせ目を酷使しますから、目も疲労します。顔の前にそういう機械があるわけですから、かなり疲労感はある感じがします。
  最後に価格です。まだはっきり言われていませんが、人工呼吸器が買えるぐらいのお金は必要かといわれています。いま、意志伝達装置は、身障手帳で日常生活用具として50万枠で給付されていますが、それでは全然ダメというところですね。
  これはいつ製品化されるのかといいますと、2000年中には製品化したいというふうに言われています。
何か私の答えられる範囲で質問がありましたら、どうぞ。

西村泰直さん(ボランティア) 近畿ブロックの西村でございます。横向いてやろうと思ったら大変ですよね。これ固定されてしまうのですよね。自由にならないのですか。

田原さん このHMDをどうやって取り付けるかというのはいつも懸案の問題でありまして、初めはウエラブル(着用)といって、この部分を顔にメガネのようにつけられないかという話があったのです。
でもまだかなり重量がありまして、そういう簡単につけることができないということと、固定がうまくできない。重みでかえって患者さんに負担がかかるのではないか。ベッド枠につけて、こういうフレームを通して持ってきたほうが、患者さんの負担が少ないのではないかと島津さんは考えられたのですが、以前から、西村さんが言われているように、こういうスイッチは体につけないといけないすけれども、まだ重量的にそのようにはなっていないとのことでした。

司会 どうもありがとうございました。これは国の補助金をいただいてやっている事業の一つです。姫路でも、それから静岡でも、こういう新しいノウハウを使った入力装置ですとか、試みはされておりますけれども、業者さんの説明とは違ってなかなか実用的なものは少ないようです。将来的には可能性があるというお話としてうかがいたいと思います。

 これで今日の内容はすべて終わらせていただきました。長い時間頑張ってここにおいでいただきまして、いろんなご発言をいただきまして本当にありがとうございます。

  今日、病院の手前の信号のところで、看護学生さんがポスターを持って誘導していただいている姿を見て、胸が熱くなりました。目に見えないところで病院の皆さん方がお力を尽くしていただきまして、感謝申し上げます。

 遠方からも、この但馬地方からも、たくさんおいでいただきました患者さん、ご家族、そしてご遺族の皆さんありがとうございました。
*大川 達さんからのメッセージ

<ミニ公演>
* 病人である前にひとりの人間です
西村 隆さん(兵庫県芦屋市)
<最新トピックス>
* ALSに対して何ができるかを考えること
近藤清彦先生(八鹿病院・神経内科医)

<参加者の声>
* 地元の患者さんとの交流
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