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ところで福祉国世界一を誇るデンマークの福祉官が、なぜ私のような者の在宅療養を見たいのか-―。中口さんとお会いするまでの1週間、私はさまざまなことを考えましたが、その理由さえわかるはずもありません。それで私は、この病に冒されてからの状態と、昨年の看護・介護体制のことを記して、楽しみに待ち焦がれ、7月3日にお会いすることができました。
そのときの中口さんの第一印象を私は日記に、「お若くて、低姿勢で、好人物」と記しています。
その中口さんから、デンマークの教育・福祉の素晴らしきお話を聞いているときに、読売新聞の記者から取材の申し込みがありました。私は、ALSに対して一人でも多くの理解者をとの望みから了解しましたが、中口さんは「そこに福祉前進への第一歩がある」と大変喜んでくれました。
新聞記者はいったいこのことをどこから聞きつけたのかと思ったものですが、中口さんが私を訪ねてくれるにあたって、まずは読売新聞社を訪ねたがわからず、県庁でわかったらしい。読売新聞を訪ねたとき、記者から取材を申し込まれたが、中口さんは私を気遣って、お返事ができなかったとのこと。それだけに私の速やかな了解は、中口さんのお望み通りで、二人の話がはずんでいるところへ記者が話の仲間に入ってきました。
そして私に、「中口さんのお話を聞けたことに対する感想は」と尋ねられたので、「すべてに感激と感動の連続」とこたえると、中口さんからも同感と言っていただきました。さらに記者は「いまの日本に強いて望むことは」と聞くから、私は「行政の速やかな対応」とこたえました。
中口さんは、日本の福祉が少しでもよくなるよう、日本とデンマークの掛け橋になる目的で忙しく駆け回っておられますが、私の看護・介護体制を見て、「予想以上のでき」と少しは安心されたようでした。さらに、この看護・介護体制は自分から求めたものか、それとも和歌山市内の患者の皆さんがこのような看護・介護体制なのか、等々のご質問を受けて、私は「アカサタナ……」で妻を通じて伝えると、同じ市内でも各患者によって違いがあることに大変不満そうでした。
途中で何度も私の疲れを気にしてくれた中口さんは、20分ほどで引き上げる予定だったそうですが、話がはずんだおかげで、3時間余りもいてくれました。それなりに得るものがあったのかとうぬぼれています。二人は再会を誓ってお別れしましたが、また一つ大きな任務を与えられた思いです。
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