1) ALSの病名告知に関する患者の意見
++ 医療者のよりどころは患者の真の声を聞くこと以外にない
++ 隠すことは患者の存在の否定
++ 必ず望みのある言葉を添える
++ 告知後の心理ケアが重要
2) ALSと共に生きる人の病名告知憲章(草案)
これは、患者と医療者が語らいのために、同じ土俵に登ることを意図して創出したものである。今日医療の現場では、患者の参加する権利が大いに叫ばれ、かつその権利が保証されている。ALSの病名告知においても、かつてのパターナリズムは排され、患者の権利が大幅に認められる時代になった。
ここに示した憲章では、患者の権利と義務をそれぞれ3項目設定した。義務という言葉に多少抵抗感を表明する患者が若干名みられたが、両者が互いに歩み寄る姿勢も大切と考え原案通りとした(表
2)。
まとめ
ALSの病名告知においては、それぞれの出会いがあり、お互いに理解する過程を経て初めて成立する。結論を出すまでのこの過程こそが相互理解の重要なポイントであり、この過程を如何に導くのかという所に医療者の技量が問われる。
病名告知は相互理解を前提にしてなされるべきである。病名告知が患者の後の人生の始まりである、という認識の共有が大切である。告知後の患者や家族は深い悲しみに沈むことになろうが、そこから立ち直る支援体制を予め準備しておくことも重要であり、時には家族への支援が患者のケアと同等かそれ以上に重要な意味をもつことすらある。
ALSの病名告知憲章(草案)は、ALS患者の知る権利、決定に参加する権利を保証するものであり、理解できないまま医療処置が進められることを回避し、相互理解の場を設定する目的で提案した。今後多くの方々の賛同を得て定着することが望ましい。
本研究は、厚生労働省厚生科学研究費特定疾患対策研究事業 平成13年度「筋萎縮性側索硬化症の病態の診療指針作成に関する研究」(今井尚志班長)の援助を受けて行なわれた。
文献
1)岩下宏、今井尚志、難波玲子ほか:国立療養所におけるALS診療のガイドライン. 医療 54:584-586,2000.
2)湯浅龍彦:筋萎縮性側索硬化症のインフォームド・コンセント:家族の視点から見た現状と示唆. 医療 55:187-194,2001.
表 1 : ALSの病名告知に関する患者の体験と意見
告知全般に対する意見
告知の前提条件
医師と患者の信頼関係の確立
告知をする医師に対する要望
誰が伝えるか
いつ伝えるか
告知の場所(どこで伝えるか)
誰に伝えるのか
初めに何を伝えるのか(告知の内容)
ストレートに告知してほしい
心理状態を考慮して段階的に告知してほしい
告知は思いやりある言葉と共に
資料を準備してほしい
立会人をどうする
告知後のケアと療養サポート
最新の医療情報の必要性
人工呼吸器に関する意見
医療者側の問題点の指摘と要望
心の救済
その他
表 2 : ALSと共に生きる人の病名告知憲章(草案)
|