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* 発病前から筋肉への輸送が落ちる

 その謎については、昔、戦争で東京の大本営から前線部隊に戦争しなさいと命令が行きますね。ところが現地の部隊は、大本営からいろんな物資とか武器、弾薬が来ないと戦争を続けられませんね。そういうことだと思ったのです。

 (スライド) 人の筋肉の標本ですが、正常の運動神経はこうなっていまして、筋肉にずっと神経が延びています。ところがALSの患者さんでは、運動神経から筋肉に行くところで、ポコッとしたいろんな蓄積物、たまりが見られます。

 おそらくここで渋滞みたいになって、ものがたまっているのだろうということは前からわかっていたわけです。

 もし運動神経内の物資輸送をとめれば、筋肉はだめになるだろうと思って、ここを縛ってみました。もし物資の輸送が大本営から末梢の筋肉にうまくいっていれば、急にここを縛りますと、輸送物がたまるはずですね。もし輸送が悪ければ、たまりが悪いはずです。――というふうに想定して、ネズミで実験しました。

 (スライド) 矢印が縛った場所です。正常のマウスでは、キネシンという物質がたまっているのがおわかりでしょうか。ところが病気のマウスにはほとんどたまっておりません。症状はまだ出てないのですが、ほとんどたまっていない。

 ですから、キネシンという運動神経から筋肉に運ばれる蛋白質が、ここを縛ってもたまらないということは、ほとんど輸送されていないということです。ですから、発病するずっと以前から、ALSでは運動神経から筋肉への物資の輸送が落ちているということがこういう実験でわかります。こういうことは患者さんではわからないわけです。患者さんはこの後、発症するわけですから、発病する以前のことは、こういうモデル動物を使って初めて解明されたわけです。

 

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