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* 生存シグナルがオフになってしまう

 神経はできてから100年間ぐらい使うわけですが、再生しないのです。

 いったん生まれた細胞が100年間生き続けるためには一つの仕かけがありまして、生存シグナルというものと死のシグナルというものがありまして、生存シグナルが常にオンになっていなければいけません。

 「生きていてほしい」という生存シグナルがなくなると、細胞は死んでしまいます。あるいは「あなた死んで下さい」というシグナルが活性化しても、細胞は死にます。神経細胞は100年間使いますので、常に生存シグナルがオンになっていて、死のシグナルがオフにされているのが通例であります。

 それがこのALSでどうなっているかを見ますと、これは通常の染色で運動神経の数を見ていますが、発症する直前の25週でも、さほど大きな落ちではありません。この状態で何が起きているのかを見たいと思います。

 (スライド) 生存シグナルのPI3カイネースというものを染めますと、正常の運動神経は強く染まっています。「あなた生きていてくださいよ」というシグナルがここで受け取られて、運動神経も「私は生きますよ」と表明しているわけです。

 ALSの病気のマウスは、発病する前には、もう生存シグナルはほとんど出ておりません。細胞としては生きてはいるわけですが、力強く生きているという生存シグナルは見られないのです。

 (スライド) 同じ生存シグナルのアクトというのは、正常ではかなり染まっていますが、この病気のモデルマウスは非常に染まりが弱い。細胞の形は生きてはいるのですが、弱々しく、かろうじて生きているという状態だろうと思います。


 まとめますと、PI3カイネースとかアクトという生存シグナルは、発病するずっと以前、25週で正常と比べて落ちていますし、もっと前の18週でもこれと比べると落ちております。

 (スライド) 一方で死のシグナルは、あまり活性化されていなくて、少しだけ運動神経で活性化されています。

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