気管切開で声を失うというのは誤解である。球麻痺が強い場合には気管切開の有無にかかわらず発声不能となるが、構音筋が保たれ気管切開の数日前まで発声可能な状態であったなら、気管切開後も発声させることは可能である。
もっとも、発声可能かどうかは使用するカニューレの材質に大きく左右され、カフ部分の材質が硬いものでは発声が困難となる。国内では数種類のカフ付きカニューレが入手可能だが、製品によって発声のしやすさは大きく異なる。実際、カニューレの種類を変更したとたんに発語が可能となったALSの患者がいた。
発声の方法としてカフエアを減量し口腔へのエアリークを利用する方法、スピーキングバルブを回路内に接続する方法、スピーキングトラケオストミーチューブを使用しカフと声帯との間に外から空気を注入し発声する方法がある。カナダALS協会のパンフレットには、「気管切開後の発声法の指導」の項目がある1)。
自験例では、気管切開を行なったALS患者21名中12名がその後も3か月から53か月、平均19か月の間、会話による意思伝達が可能であった2)。そのほとんどは、カフエアを減量ないし全部抜き、カニューレ孔を指で閉鎖して発声したり、呼吸器に接続したまま吸気時のエアリークを利用しての発声であった。
声を失うことを心配しすぎて気管切開の時期を逸し、呼吸不全や低酸素脳症にならないようにしなければならない。
気管切開後の嚥下機能もしかりで、気管切開後21名中14名で平均15か月、最長53か月間,経口的に食事摂取が可能だった2)。
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