トップ目次次のページへトピックス>吸引問題>近畿ブロック緊急調査報告
++ 在宅療養の受け皿があまりにも乏しい
調査からわかったこと

 (1)在宅療養者は増加し、在宅人工呼吸器療養者も増加し続けています。人工呼吸器を装着すると、原則として24時間介護が必要となります。長期入院者の主な入院理由は介護力の問題でしたが、在宅療養者では介護疲れなど介護者の都合で一時入院できた患者は少なく、在宅療養の受け皿があまりにも乏しいと思われます。入院できる病院があると考えている患者は4人だけでした。

吸引や人工呼吸器の知識や技術の習得を

 訪問看護の利用時間は短く、利用回数を増やしてほしいと希望しても、人手不足などで利用回数を増やすことができないというステーション側の事情がある一方で、看護師の技量に個人差が大きいとして吸引や人工呼吸器に関する知識や技術の習得を求める要望も多く見られました。現状は患者のニーズに対応できているとは言えません。
訪問介護の利用は65%でしたが、ホームヘルパーは吸引を行うことを認められていないため、ホームヘルパーを依頼しても介護負担の軽減にならないという理由で訪問介護を利用していない人もありました。
 家族と看護師のみが吸引を行っている場合では、「家族が外出できない」「訪問看護は土日が休みのため、家族だけで介護しなければならない」など、家族に対する負担が大きく、ホームヘルパーの吸引を求める要望が多くみられました。

信頼関係の保てる人材の研修

 ホームヘルパーが吸引を実施していることでのトラブルはありませんでしたが、吸引の方法を家族が教えている場合が多く、ホームヘルパーの吸引の研修を希望する要望が多くありました。
看護師やホームヘルパーが、初期から家族と一緒に介護を行っている場合は、その患者にあった介護 を、家族と一緒に習熟していくため、看護師やヘルパーに対する信頼感が高まり、吸引を含め安心して介護を任せることができます。医療依存度の高いALS患者のケアには、習熟と信頼関係が保てること、すなわち長期間を見越した人材の研修、教育が不可欠です。

子育てと24時間介護/サービスが足りない

 (2)介助で経口摂取を行う(7人)、座位がとれる(4人)などの患者の介護は時間もかかり、介護者は疲労を感じています。
 人工呼吸器装着時から2年以内の4人はサービスを増やしてほしいと希望。人工呼吸器を装着後、年数が短い人は介護量が多いと考えられます。本人の症状が安定し、在宅人工呼吸療養が落ち着くまでには、本人、介護者とも一定の期間が必要でしょう。
 逆に人工呼吸器を装着して長期化し、寝たきりになりますと、介護量が少なくなり、介護者の負担感も少なくなります。
 主介護者が配偶者以外、娘(4人)息子(1人)妹(1人)の6例は、介護疲れを訴え、睡眠不足や精神面の疲労を強く感じていました。介護者が配偶者である場合と比較しても、拘束感、犠牲感を強く持っていました。
 保育園児や小学生のいる世帯で、かつ在宅工呼吸療養に移って2年目のケースでは、子育てに大変な上に24時間介護が加わり、介護サービスが大きく不足していると記しています。

要介護5であっても状況によって変わるケアの量と質

 これらより、「要介護5」であっても、すべての人に同量のサービスが必要ではなく、患者の身体状況や介護者の特性でサービスの利用状況に大きな差異があることがわかった。一律なサービスは必要ではなく、サービスを増やしてほしいと望む在宅療養者への強力な支援が必要と思われます。
 ALS患者の介護は、経管栄養よりも経口摂取の方が介護量と時間が増え、誤嚥や窒息の危険性も大きく、介護者の精神的、肉体的負担が大きくなります。寝たきりの患者より、離床している患者のほうが、ケアの量と時間が増えます。

地域によっては毎日訪問の希望も満たされていない

 また症状的には、呼吸不全の時期にある患者、人工呼吸器を装着しないターミナル期の患者は、何度も細かな体位交換を求めるため、著しく介護量は増えます。『在宅人工呼吸器使用特定疾患患者訪問看護治療研究事業』は人工呼吸器装着者が対象ですが、上記のような対象者にも手厚い看護支援が必要なのです。
 訪問看護は地域によっては、重症者の毎日訪問の希望も満たされていない状況です。広く普及できるサービスとして利用を促進していくような手立てが望まれます。

14人中8例は訪問看護員が吸引

 もっとサービスが必要であるとした人工呼吸器装着者14人のうち8例は、訪問介護員(うち3例は看護師)が吸引していました。記述内容にも、訪問介護員に吸引してもらわなければ在宅療養が成り立たないという切迫感がうかがわれます。
 入院先が確保できない現状で、家族に負担の多い在宅療養の支援を充実するためには、訪問看護サービスの拡大とヘルパーが活用できるような医療行為問題についての打開策が課題であると思われます。

目次へ