その瞬間は突然だった。最初は「あ、あれれ?」と不思議な気分だったが、徐々に焦りと不安感が強まり「インポテンツ」「ED」という言葉が頭に浮かびはじめた。結局、その日は駄目だった。確かに私も30代の後半に入ったところで、そういった症状になる可能性があることは知識としてはわかっていた。しかし「どちらかといえば性欲は強い方だ」と自分で思っていたので、なおさらに受け入れがたい状況だった。翌晩、若干の不安を抱えつつも「ま、一回だけ。何かの間違いだったのだろう」と思い、今度はまずベッドの中で自分一人で気分を高めようとしてみた。しかし自分の気持ちとは相反し、どうにも屹立しない。後は、気ばかり焦るだけで雪だるま式に不安感が増していくばかりだった。その日も、結局駄目だった。そして、三日目も四日目も同様に何の反応も無かった。妻は「一回だけ立たなかった」と思っていたが、一週間をすぎても改善の兆しを見せないので、「勃起しない」という現実を告白してみた。妻としても今までの性生活からして意外だったようだが、私が仕事で悩んでいたこと、酒の量が増えていたことなどは心配していた様子だった。その夜、一週間ぶりに妻とベッドに入ったのだが、妻の努力にも関わらず私は反応せず、かえって私の無力感、焦燥感が強まり、絶望的な気持ちになった。表面上は落ち込まないように「これはバイアグラのお世話にならないと駄目かな〜」などとふざけていたが、心中は穏やかではなかった。頭の中にはサッカーの神様ペレが出演したバイアグラのCMがおぼろげに浮んでいた。

まずはED(勃起不全)を知る

 男性が卑猥な話(いわゆる猥談)やちょっとエッチなジョークを好んでするのは、実はインポテンツに対する不安から来ている、という説があるのだそうだ。実際のところはどうかわからないが、そうだとすると大抵の男性はインポテンツを恐れていることになるのではなかろうか。それはともかく、まず最初に検索したのはバイアグラで有名なファイザー製薬。さすがはEDの治療薬で一般にまで有名になっただけあり、サイトの情報も整然としながらも充実している。まずは「相談する前にセルフチェック」というページから見てみる。すると、ED問診票という5個の設問が出てくるので、設問に対しチェックを入れて合計点で症状の度合いを見る形になっている。しかし、設問は「過去6月においてどうだったか」ということが問われていて、一方私はわずか一週間前からEDの状態に陥っているわけで、設問と答えがどうにもかみ合わない。無理やり設問に答えると診断結果は「重症」となってしまう(本当に重症かもしれないが)。
  ファイザーでは「さっさと専門医に行きましょう」という結果になってしまったので次はここ→ED(勃起障害)克服のための基礎知識をみてみる。広告もあるが、サイトはシンプルでわかりやすい。ファイザーと同様の問診票もあるが、それよりも勃起不全の原因が他の病気にもあるかもしれない、というところで不安になる。前立腺ガン、膀胱ガン、直腸がんなどの文字を見て怯えるが、それはガンの手術によって神経が傷つくことが原因で、「ED=ガン」ではなかった。あとはストレスや生活習慣病も原因ということで、その辺りがどうも怪しそうだ。

EDを相談する医療機関を探す

 二つのサイトを見た限りではあるが、とにかく早く専門医に相談をするのがベストな選択のようだ。しかしことが下半身に関することであり、なるべくなら診察は避けたいのが人情だろう。それに「かかりつけに相談を」とあるが、何科を受診すればよいのかもわからない。と、ファイザーのサイトに医療機関の検察ページがあったので、受診するしないは別として、とりあえずEDの相談ができる医療機関を探すことにした。すると、以前子供が怪我をした時に治療をしてもらった外科医院が該当した。年配の優しそうな先生だったので、いざという時はここに受診することにした。「どうしようもなければ医者に行けばいい」と開き直れたことは少し良かったのだと思う。仕事のストレスをすぐには軽減できないが、ストレスから暴飲暴食気味の生活を送っていたので、まずは日常生活を改めてみた。酒の量を減らすことはできないので、週に三日の休肝日を設けることにした。 毎日酒を飲み続けていたときは胃腸の調子も悪く、常に疲れやすい体調だったのだが、酒を飲まない日は妙に調子がいい。調子が良いので一週間ほど完全に酒を抜いてみた。その間、EDのことはなるべく考えず、体調を良くすることだけを考えていた。体調がよくなり「そろそろチャレンジしてみようかな」と考え始めた頃、唐突に仕事上の問題が解決してしまった。会社にとっては利益は少ないが、それは会社のことであって、私が頭を悩ませる必要は無くなったわけだ。これで心身ともに健康に成ったわけだ。すると不思議なもので、恐々と妻を誘ってみたところ、早々に以前と同様に力強く勃起をしたのだ。成功途中で「中折れ」になることもなかった。どうやら私の場合、精神的な影響がかなり強かったようだ。バイアグラもちょっと試してみたかったが、これでしばらくはお世話にならずに済みそうだ。