No.28
2005年10月14日登録

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英夫とジャーナリスト仲間の懇談を
 月一度をめどにお届けします。

右傾化の中で重い後藤田氏の遺言

▼改革という名の妖怪が徘徊

 中身を問わず、「改革」と名がつけば無条件で全面支持を強要し、それに対する異論を排除する「改革という名の妖怪」が徘徊している。恐ろしい事態ではないですか。

 そうだねえ。民主党の中でも自民党となんら変わりがない議員が増えている。こういう人を相手にしても始まらない、という思いだ。

 まさに改革という名の競演ですね。

▼「分界線明示しない『官から民へ』は乱暴」と小泉批判

 919日に91歳で死去した後藤田正晴・元副総理が、821日のTBS系列の政治番組「時事放談」で的確な指摘をしていた。曰く「『官から民へ』について、ぜひ言いたいのは、いったい官が担当しなければならない境界線はどこまでだ、利潤を美徳とする民が引き受ける限度はどこだと。そこの分界線を明示しないまま、『官から民へ』は乱暴だよ」。

 後藤田氏は元警察庁長官、法相でありながら、保守派のリベラリストとして、小泉首相の政治路線には強い危機感を抱き、苦言を呈していた。ご本人はこの日の発言を自ら「遺言」と称していたそうだが、野党の主張より、ずっと的を射た「小泉郵政解散」批判だ。

 この番組では「政界ご意見番」として、野党各党にもこんな注文をつけていた。

 「民主党は自民党とどこが違うんですかと、そこをはっきりしてもらいたい。公明党には福祉と平和の立党の精神をいつまでも守ってもらいたい。共産党はマルクス主義をやめて党名を改め、社民党と一緒になって、社会主義的な政党としての柱を一本立ててもらいたい」

憲法改正論議では護憲派の姿勢を貫き、イラクへの自衛隊派遣に反対してきた。一見、かつてのタカ派がハト派に変身したかに見えるが、そうではないだろう。生前「私は何も変わっていない。世の中の流れが変わった」と述懐していたことがあるが、「旧日本軍の暴走を知る世代」として、自分が左寄りに見られるほど右傾化する日本社会の将来が心配で仕方がなかったと思う。「野党よ、しっかりせい」という遺言と受け止めたい。

 「官から民へ」という小泉スローガンは、それにより活性化がもたらされると言うが、実態は企業優先になる。セーフティーネットも取っ払われ、競争に参加できない者はどうでもよい、ということだ。行政がどういう役割を果たせるか、という観点が重要だ。

▼聞こえてこない民主党内の異論

 ところで、民主党内は前原誠司代表の独壇場のようで、さっぱり党内の異論が聞こえてこないですね。

 同感だ。民主党内にもまだ、僕らと同じ意見の議員もいるはずだが、声を発しないね。

 「競争原理を強化して活力を再生させる新保守主義=強者の論理」か「社会的弱者にも温かい目を注ぎ、平等な社会を築くか」という政治理念が根本的に問われている。小泉・自民党と民主党とは本来、政治の理念像が違うはずなのにね。前原体制では、自民党との共通点ばかりが前面に出ている。

 民主党内の志のある議員たちがなぜ沈黙しているのか知りたいね。横路孝弘氏も衆院副議長に祭り上げられてしまったが、あれでいいのかね。

 前原代表は就任後の報道番組で、「戦力の不保持」を規定している憲法92項を削除して「自衛権」を明記し、集団的自衛権の行使を限定的に容認すべきだ、との見解を表明した。またイラク・サマワで活動する自衛隊の武力行使について「自衛隊を守ってくれている国が攻撃されても反撃できないという形でいいのか、タブー視せず議論していく」と指摘した。いずれも党機関にかけた話ではない。横路氏や江田五月氏は、それでいいのか。

 円より子参院議員などは民主党では自分の意見を持っている人と思うが、そういう人の声が聞こえてこないね。

 参院本会議での円議員の代表質問を聞いたが、憲法問題には全く触れなかったな。

 何となく、戦前の大政翼賛会の状況に近づいていますね。小泉首相が前原・民主党代表の登場を歓迎しているのが人目を引く。

 明らかに、前原氏をおだてているね。小泉首相と前原代表は根本が一緒だから、当然だろう。民主党内で、いわゆる前原派がどれほどいるのか、我々と同意見の人がどれくらい残っているのかを知りたい。

 公明党の神崎武法代表が憲法改正問題で、@9条の1項、2項とも変えないA自民党が9条に手をつけてくれば、連立の基盤に影響してくるだろう−と珍しく明言した。野党の民主党の方が憲法改正問題で自民党へ擦り寄り、連立与党の公明党がこの問題で自民党と距離を置くという、おかしな政治構図になってきている。

 共産党は今回の選挙を善戦と自己評価してしまった。危機は深まっているのに、自分たちの内部だけで小さくまとまっている。 

▼憲法改正は総論賛成だが9条改正には反対の世論

 自民党内の郵政造反派の動きだが、野田聖子議員が9日、郵政民営化法案に賛成へ転向した。信念がないなと、がっかりした。

 彼女は自分の政治的主張の「完敗」を認め、自民党に残る道を選んだ。

 「完敗」を認めるのは、政治家としての自殺行為なんだけどね。

 1989年に「天皇の戦争責任はあると思っている」と市議会で発言した長崎市の本島等市長(当時)は自民党県会議員団などから発言の取り消しを求められたが、彼は「私は自分の良心に誓って、天皇にも戦争責任があると申し上げた。発言の撤回は私の政治的死を意味する」と応じなかった。政治家の発言、行動の重さを示す話で、野田議員にも頑張ってほしかった。

 衆院で与党が3分の2以上の議席を確保し、憲法改正の手続きを規定する国民投票法案の議論が動き出す。「憲法改正に反対するのは前世紀の遺物」という攻撃が強まりそうだ。

 各種の世論調査を見ると、憲法改正の総論には6対3で賛成者が多いが、9条をいじるのには逆に6割近くが反対している傾向がある。

 自民党が狙っている肝心のところでは、庶民は反対しているわけだ。どうしてだろう?

 だまされていない健全な部分がかなり存在している。それが唯一の頼りだね。

▼分からない川崎、神戸市長選の対応

 ところで、9日告示の川崎市長選で社民党は現職の阿部孝夫候補を自民、公明、民主党とともに推薦した。ところが、この阿部候補は「私は4年間で市職員1,100人を削減した」というのを自分の業績に掲げている。対抗馬の岡本一候補は「削られた福祉を取り戻す」と主張し、共産党が推薦している。社民党がいったい、阿部候補の何を評価して推薦したのか、さっぱり分からない。「庶民の生活、福祉を大事に」という福島みずほ党首の主張からいけば、岡本候補の方を推薦すべきだったと思う。同様の事態が神戸市長選でも起きている。社民党の地方組織は中央とは異なる利害関係で動いているのではないだろうか?

 僕はその件の詳細は知らないが、大事な部分が欠落してきているという印象は持っている。

 しかし、国と地方自治体でこれほど莫大な財政赤字を抱えている中で、固定経費である公務員数の削減問題は、有権者に相当のアピール力がある。リストラだけを業績にするような乱暴な議論は論外だが、公務員の削減問題は社民党や共産党も避けて通るべきではないと思うよ。

 そうは言っても、財政赤字は小泉政権下でさらに増えた。本当に削るべきところに手をつけずに、実際には福祉予算や、福祉関連の人員が削減されて、庶民にしわ寄せが来ている。

 「脱労組」を掲げる前原・民主党と連合との関係は、お笑いぐさだね。顔に泥を塗られた形の連合が、これからどこへ向かうのか見ものだ。

(2005年10月11日収録)


 

                           




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