第69号
2010年9月18日収録


 

 
英夫氏のもとに集ったジャーナリスト仲間が
月一度をめどに語り合います。


◎尖閣で多難な菅改造内閣の船出
 「政権交代」の理想はどこへ? 
自民の政策へ回帰



 14日の民主党代表選挙が菅直人首相の圧勝に終わった。小沢一郎前幹事長は勝算があって出馬したのか?

 党員、サポーター票で負けても衆参議員票では勝てると思っていただろう。いわゆる「小沢グループ」150人という数字が定着し、団結力で計300ポイントは固いと見ていた。仮に負けても、次の政局で巻き返しは可能だと思っていたのだろう。

 小沢は内心は出馬したくなかったのでは。2年後の代表選挙を見据え、今はまずいと。出馬しないと手勢を菅陣営に抜き取られると山岡賢次ら周辺に迫られ、勝てなくても陣営引き締めのために、嫌々ながら出たのでは。

 2年後では小沢は70歳になるので、その説は疑問だな。

E 小沢にとって、出ないという選択肢は無かったということかな。意外だったのは小沢の能弁だ。演説はよどみなく、菅よりも響くものがあった。貫禄、インパクトを感じた。

 小沢は、勝つ可能性ありと読んでいたと思う。だが国会議員票で50票の差を付けて230票くらい取らなければ、勝機はないと踏んでいただろう。

 小沢が陣頭指揮して去年と3年前に当選してきた新人議員が140数人はいる。そのほとんどは自分に投票するという確信があったのでは。その新人票も菅に食われたわけだ。

▼小沢出馬は必然、だが菅との違い示せず

 私もいつの間にか民主党のサポーターにされていて、投票のはがきが来た。その時点ではもう悪者扱いの「小沢」とは書けない、世の中の流れができていた。

E 流れができていくことの怖さを感じたな。8月11日付の東京新聞夕刊に哲学者の梅原猛氏が「小沢一郎的人間」というコラムを書いている。要約すると<小沢一郎は権力及び金銭獲得の手法を田中角栄や金丸信に学んだが、2人にあって小沢にないものは人情。彼は一貫して自らの権力欲、金銭欲に忠実であり、いくつもの党をつくっては壊してきた。壊し屋といわれる小沢の最後の情熱は、彼が自らつくった民主党という大政党を壊すことに向けられている。彼が日本そのものを壊してしまうのではないかと深く憂える>というものだ。
知識人がさしたる根拠なしに、世論の流れをつくってしまうことの怖さをこのコラムに感じた。

 日本を支配しているのは、戦前は軍部、戦後はGHQ、今や官僚、そして世論調査だという言葉がある。「政治とカネ」の問題にしても、伝聞ではなくきちっと検証して書いてくれないと、与える影響は非常に危険なものがある。官僚支配を打破しようとする小沢政権を阻止するために東京地検特捜部はメディアを巻き込んで「国策捜査」をやり、その結果が菅勝利となったんだ。

I 小沢が政治家としてのプレゼンスを国民に示しておく必要性が生じたんだと思う。日中国交回復を実現した田中の流れを引き継ぐ民族派の政治家としての期待感がある。世界経済のブロック化、11月の米中間選挙での野党共和党の勝利予測もあり、世界の流れは民族主義的な政治への転換点に差し掛かっている。

E だれを立てても小沢の傀儡と言われる。その後の勝負、政治生命もない。立たざるを得ない選択だった。だが論争が「政治とカネ」ばかりで、ようやく後半に政策的論争になった。菅との違いを十分に出せなかった。
小沢が菅との違いを出せるのは日米関係、特に普天間基地の移設問題でクリアにできたはずだ。ところが小沢は腹案があるようなことを言いかけて結局、具体案は何かと問われて「ない」と後退し、がっかりさせた。

▼驚くべき人事、年度末にも行き詰まり

 菅改造内閣の評価に移ろう。これは驚くべき人事だ。小沢グループからの入閣はゼロだ。議員票では接戦の後の人事なのに、菅はよほどの勇気があるのか、情勢を見誤ってるとしか思えない。秋から政権は危ないだろう。幹事長になった岡田克也は立派な人物だが、ねじれ国会で柔軟に渡り合えるかと言うと無理だろう。

「闇将軍がついにつぶれた」というのが外国の論調だ。これで日本の政治も正常化するだろうというものがほとんど。小沢が党を割るとか、逆襲するなどと週刊誌に出ているが、小沢に世話になった新人議員らも相当数が逃げるのではないか。

 小沢問題がなくても衆参のねじれはすごい問題で、今のところ救命ブイを差し出して、一緒にやろうという政党は出ていない。小沢が暴れなくても行き詰まる。来年3、4月の年度末にも。それなのに、あえて、こうした人事をやるのは一種のバクチではないか。
菅は本質的にそそっかしい人間だ、消費税でつまずいて、ふつうなら妥協的になるのに逆だ。「水に落ちた犬は叩け」式だ。小沢が攻めなくても失敗するのではないか。

 菅は権力に擦り寄るのがうまい。今は露骨にアメリカに擦り寄っている。前原誠司を外相に据え、北沢俊美防衛相は留任させた。普天間の辺野古への移設はアメリカの言いなりだ。
9月7日に沖縄県の尖閣諸島沖合いで中国のトロール漁船が、違法操業を捜査しようと追跡してきた海上保安庁の巡視船に衝突し、船長が公務執行妨害で逮捕された。この事件が日中間の大きな外交問題に発展し、中国は強硬な態度に出ている。これまでは海上保安庁は中国漁船を追い散らしていただけだったが、今回は逮捕という強硬手段に踏み切ったことに、対中強硬派と見られる前原国土交通相(当時)の存在を指摘する声もある。海上保安庁が逮捕するかしないか大臣の指示を仰いだときに前原はオーケーを出したのかどうか、メディアが検証すべきだが、どこもしていないね。
菅内閣は、企業の法人税率の軽減、市場原理に基づく規制緩和など、やっていることはどうも小泉内閣と同じではないか。

 菅が改造後の会見でポイントを3つ挙げていた。まず経済、次に地域主権。外交は日米同盟機軸だから北沢防衛相は留任。経済は成長戦略で財界に擦り寄っている。自民党と見まごうほどだ。菅が議長になってつくった「新成長戦略実現会議」には財界3団体のトップが入っている。
セーフティーネット、年金、後期高齢者医療、障害者自立支援法の問題など、公約は全部破棄してしまった。地域主権には民間から片山喜博総務相を持ってきたが。

 つぎはぎだらけで、芯をを通して、これだけはしたいというように見受けられない。

 いや、菅なりの筋は通している。野田佳彦財務相(留任)、玄葉光一郎国家戦略担当相は消費税増税論者だ。

 投票日の両院議員総会での最後の演説で、菅も小沢も期せずして、暗殺されたアメリカのキング牧師の有名なせりふ「私には夢がある」を引用していたが、いったい、どういう夢があるのか。地下のキング牧師が苦笑しているだろう。

E 参院選敗北の責任を問われていた枝野幸男前幹事長を幹事長代理で残したのは、自民党の石原伸晃幹事長とのラインを残すためだろう。今の政策を見てみると、もう自民党時代と変わらない。
 彼らは90年代後半の政策新人類で、お互いに気心が知れている。菅は長期政権の基盤として、そういう体制を敷いていると思う。それが有効かどうかは分からないが。

 枝野を残したのは大失敗だと思う。参院選大敗の責任を誰かが取らなければならなかった。この大敗はボディブローのように、これから効いてくる。民主党は衆議院で3分の2持っていない(=衆議院の再議決で法律を通せない)から。
枝野は小さなポストで処遇するという話だったのを、岡田幹事長が頼んだせいもあるが、もう1回、選挙をやるポストに戻ってしまった。

 民主党というのは責任意識がない政党だ。

 マスコミが参院選の大敗の責任をなにも言わないのが理解できない。

B 政権選択の選挙でないから、やめなくていいということだが、自民党ではやめている。

F 民主党には自分たちの行動を律する規範がない。綱領もない。だから行き当たりばったり。何か起きたときは前例もないし、その都度対応でいいというのが、あの党の特徴だ。

E 今回の人事の特徴は仙谷由人官房長官の留任と、枝野の幹事長代理、そして前原外相だ。これは「脱小沢路線」で、日米同盟路線の強化。この外務、防衛の顔ぶれで、11月の沖縄県知事選がどうなるか分からないが、普天間問題は恐らく強行突破を図ってくるのではないか。

▼普天間は沖縄知事選に注目

F 名護市議選で移設反対派が多数を占めたが、政府は「民意の1つの現れ」と言いつつ、全く聞く耳を持たない、それとこれとは違うと言わんばかりの印象を受けた。

 沖縄県民に遠慮して誰もあまり言わないが、このままいくと普天間基地が現状のまま続くことになる。これをどうするつもりか、沖縄県知事、住民に聞きたいところだ。

 ブッシュ前米政権で対日政策の中心人物だったアーミテージ元米国務副長官が9月15日に都内で会見し、普天間基地の全面移設にこだわらず、次善の策を考えるべきだと提言したのが注目される。琉球新報は、11月の知事選で県内移設反対を掲げる候補が当選すれば「辺野古移設は不可能になる」との見方を示した−と報じた。アメリカも、このままではうまくいかないから、小沢のような考え方でもう少し話し合って、別の方向に持っていきたいという観測気球を上げたのではないかという感じがする。

H アメリカの中間選挙はどうなるか。大勢は野党共和党が優勢で、オバマ政権の基盤が揺らぎかねない情勢だ。その情勢で日本にアメリカがどう出てくるか。菅政権は日米同盟派が主流だから、ゲーツ国防長官に代表されるように、辺野古も強硬策で行けということになるのではないか。それに対し日本が柔軟に対応できる手がない。

 強制特別措置法を発動するということか。

アメリカが最も恐れるのは、普天間はともかく、日本の基地反対闘争に火がつくことだろう。辺野古の問題は、ある意味でマイナーな問題だ。ここでアメリカが強硬に出て、世界一基地が多い日本で反基地闘争が起こりさえしなければ、それでいいのではないか。日本から見れば、そこにアメリカに妥協させる余地があるのではないか。「アメリカも一歩譲れ。日本で反基地闘争が巻き起これば困るだろう」と言えるどうか。それを言えてない。

 前原外相はどうするつもりなのか。対中強硬派と言われるが。

 もともと改憲派だし、日米同盟派、集団的自衛権論者でもある。旧社会党系から5人も入閣したのを、どう見るか?

J もともと何もできない、しない人たちで、官僚との軋轢を起こさない人を置いたのでは。論功行賞の面もある。

F 5人を登用することで、当選回数の少ない小沢グループからの入閣を排除できた。

 改造内閣に期待するものはゼロか?

 僕は期待している。

F 成長戦略では増税派の野田財務相、玄葉国家戦略担当相とか、菅なりの布陣を敷いた。日米、日中では前原外相と北沢防衛相だ。それなりの布陣だ。

 マニフェスト墨守、ばらまき路線の小沢政権が実現しなかったことで、財政再建が放り投げられるのは食い止めたという評価もできるのでは。

 小沢内閣が実現しても結局、大して変わらなかったのではないかと思う。小沢は選挙戦で「地方交付税の一括交付をすれば財源が出てくる」と主張したが、「社会保障費が圧倒的」と反論され、黙ってしまったのはお粗末。普天間問題でも対案を言いかけて、引っ込めた。

 最初は小沢にある程度期待したが結局、「なんだ、菅と同じだ」という印象を持った。論理性がなく、はったりで言っている感じだ。

▼官僚支配下で自民党の政策を踏襲

 同じ土俵、マニフェストでやっているから、そういうことになる。気になるのは、法人税減税の見返りに消費税の11%くらい増税というからくりについて、あまり触れられてないことだ。

 消費税で参院選に大敗したのだから、当分は持ち出せないだろう。民意がノーだったのだ。

 大敗の主因は消費税増税の唐突な、軽い出し方への反発ではないか。「自民党も言っているから、俺たちが言っても大丈夫だろう」という安易な便乗的な出し方が問題だ。「社会保障の充実のために、一定の国民的負担をお願いする」ということには、世論はそれほど抵抗はなかったのでは。官僚の天下り、特殊法人の廃止など税金の無駄遣いを徹底できないでいるのに、あの軽い出し方は何だとノーなのだ。

 鳩山政権が消費税増税は次の衆議院までやらないと言って、小沢も同調した。鳩山が辞めた途端に、菅がやると持ち出した。だから参院選に負けた。軽はずみだ。明らかに財務官僚に持ち上げられた。「ギリシャみたいになるぞ」なんて、性格を異にしている例を引いて。
小沢の嫌われ方でぼかされているが、菅そのものは相当ひどい総理大臣だ。ぐらぐらで何をやろうとしているのか分からない。現実主義というが、芯が定まっていない現実主義だ。
 政治主導といいつつ官僚支配に戻るだろう。

 自民党政権がやった教員免許の更新制度、鳩山政権でいったん止めたのに、また復活して早くやれという風に変わった。民主党の教育政策は自民党と同じになった。

E 自民党の右派に近い。

 自民党ができなかったことを、私たちが官僚支配の下で、やりますという感じだ。頭が変わっただけだ。

 となると「政権交代」というスローガンで、日本が全く異なる生地を取る国になるかのような幻想を振りまいた罪は大きい。

 菅は市民運動、仙谷は学生運動出身なのにね。

 成果は事業仕分けだけだな。

 後期高齢者医療、障害者自立支援法、労働者派遣法などの問題がことごとく元へ戻ってしまい、知らんふりの状態だ。

 予算が絡んで来年春先が波乱含みということで、それ以降に政界再編が起きると
したら、どういう展開か?

 衆議院(480議席)で自民党が116、民主党が305人だ。自民党の116に例えば菅陣営が200人を押さえてくっつけば、逆に小沢陣営でもよいか、どちらかが自民党とくっつけば、あっという間に新政権ができる。消費税連立かもしれない。
今の民主党は無理してくっついている。

I 菅は「1に雇用」と言うが、円高で企業が海外に出て行かざるをえない状況をどうするのか。その対策があるのかといえば、ない。

 「新成長戦略実現会議」も財界主導だ。話を防衛問題に変えたい。鳩山政権時代に官邸に設置した有識者の「新たな時代の安全保障と防衛力に関する懇談会」(新安保防衛懇談会、座長・佐藤茂雄京阪電鉄CEO)の報告書が8月末に出され、これを受けた形で防衛白書も出た。報告書は日米同盟の強化、集団的自衛権の許容、武器輸出3原則の見直し、国連平和維持活動(PKO)の武器携行の緩和などを提言している。民主党政権下でこんな報告書が出るとは、当初思っていたのとだいぶ違うなという感じだ。
 防衛力を侵略阻止に限定してきた「基盤的防衛力」の概念は「有効性を失った」と指摘までしている。

▼尖閣諸島と日米安保条約

 ところで北朝鮮の後継者問題はどうなっているのか。労働党代表者会が開かれないままだが。金正日総書記の健康問題か?

 中国が三男ジョンウンへの世襲に強く反対しているので、軍部の集団指導制になるのでは、という説もある。

I やはり三男を後継者に決めて、中国のバックアップが必要だから不自由な体を押して訪中したのだろう。中国だって、次の習近平政治局常務委員は革命幹部の息子だから、そう大きなことは言えない。手続き面は世襲でないようにきちっとやりなさい、くらいは言ったかもね。

E 日本は8月からずっと隣国との領土問題が起きている。防衛白書で竹島問題、尖閣諸島での中国漁船の拿捕、9月2日のロシアの対日戦勝記念日行事(北方領土)。

 危ない情勢だ。

F ロシアのタンカーが先日、英国から中国へ北極海を初めて航行した。北極海の氷が解けていて、可能になった。深刻な環境問題だが、南回りより安全だということらしい。

 北極海の氷は今の状況では2037年には夏に全部なくなるといわれていたが、それが早まって2013年になくなるという説も出ている。そうなると最も得するのは中国だ。北極海経由で石油や鉱物資源を運ぶことができるので輸送経費が大幅に節約できる。

 北極海域では領土問題がどうこうという時代ではなくなっているという。いまや一国だけの資金、技術では資源の有効利用はできない時代に入っている。東シナ海での海底油田の開発でも、中国は日本の技術を欲しがっている。中国だけで果たしてできるのか?

 尖閣で日中がにらみ合いになったとき、日米安保条約がどう効果を発揮するか、それを試すという視点が日本政府、防衛庁にあるのか。今回は船長の逮捕まで踏み切ったというのは、アメリカの意図を試していることがうかがえる。
([注]9月23日の日米外相会談でクリントン国務長官は、尖閣諸島に日米安保条約が適用され、米側に防衛の義務があると発言した。)

E 尖閣に限らず、他国の領土問題にはアメリカはタッチしない。北方領土の問題にしても、
サンフランシスコ平和条約で確定しているのに、タッチしない。

 沖縄返還前には駐留米軍が尖閣諸島にも入っていた。だからアメリカは尖閣が中国領だとは思っていないはずだ、という説明もある。

E 客観的、歴史的に見て、尖閣に関する中国の主張には無理がある。古い時代の話を持ち出している。

I 中国は1992年の領海法で釣魚列島(尖閣諸島)を自国領と記載したから、そこで自国の漁船員が捕まったら強硬に出ざるを得ない。今回の問題は日本が国内法を楯に漁船船長を逮捕するという行動に出たので中国が反撃してきた。逮捕せず、衝突の事実は明らかにし、抗議程度で穏便に済ます方法だってあったのではないか。

南沙(スプラトリー)諸島付近に中国の潜水艦が出没し、インドネシア付近にも漁船に偽装した海洋調査船が出かけて、摩擦を起こしている。中国の海軍力は膨張期の「ブルーシー・ネイビー」になりつつある。ところがこれについて日本は何も言っていないから、段々と発言力がなくなりつつある。日本も民族国家として自らの権益を主張しなければならないのに、菅首相では主張できない。

 日本はアメリカの従属国としてやっている限りはある程度の発言力がある、という現実を素直に受け取って生きていくのか。そうでない路線を選択すれば、中国の圧力が強まる。
中国はインドネシア、フィリピンで密漁漁船が拿捕されても、なりふり構わず脅しをかけて、理屈をこじつけて漁船を取り戻してきた。日本も東南アジア並みになったということか。
今回の件も日本は政治判断で逮捕船長を不起訴にして返すのでは。菅首相や仙谷官房長官は「法に照らして厳正に」とか「粛々と」と言ったが、粛々とやる能力もない。

 中国もおかしくなっている。明らかに日本の民主党のごたごたの足下を見ている。

 中国専門家に聞いたら「今の温家宝政権は日本とせっかく良好な関係になってきたから、ごたごたを起こしたくない。それに対し軍が揺さぶりをかけている可能性がある」と言っていた。「表に出ていることだけで判断できないから、あの国は難しい」そうだ。

▼村木裁判と捜査の可視化

 最後に、厚生労働省の村木厚子元局長の無罪判決について聞きたい。

 被告側の言い分も書くという新報道要領ができてからの事件だった。そうは言っても情報は検察が握っていてリークするから、平等な報道はなかなか難しい。村木さんは無罪判決の後、マスコミの報道が途中から良くなりました、と言っていた。
ただ、障害者団体への郵便料金の割引悪用という、もともとの事件自体は悪質なものがあったわけだから、この事件の真相はいったい何だったのか。事件の本質が見逃される恐れがある。
元係長の上村勉被告の単独犯として審理されるのだろうか。村木さんが無罪だったから、
厚労省も免罪という雰囲気には抵抗がある。

 村木裁判の一番の問題は、検察の見込み捜査だ。検察の立てた筋書きでなければ許さないという、捜査の可視化の問題も絡むが、ストーリーに合わせて無理矢理つくり上げたことが暴かれてしまった。検察全体の在り方が問われている。単に大阪地検の暴走という話ではない。

 可視化の問題が重要だ。検察庁はこれにノーの姿勢だ。政治家や官僚の腐敗を暴く正義の味方であるはずの検察の暴走を許し、堕落させたのはマスメディアのチェック機能が衰えたからだ。どうしたら権力に対する番犬の役割を取り戻すことができるのか、大きな課題を突きつけられた感じがしてならない。




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2001年6月開設
(田 英夫 事務所
denhideo@gmail.com
第1号 2002年11月  大局を見た判断と人権重視の報道を
第2号 2002年12月  いまある「戦争の危機」を回避せよ
第3号 2003年1月  米国のイラク攻撃を支持するな-主体性問われる日本外交
第4号 2003年 3月  右傾化する政治
第5号 2003年3月  始まったイラク戦争
第6号 2003年4月  国会に復帰した 田議員
第7号 2003年8月  日本の暴走を食い止めよう
第8号 2003年9月  政治と報道に「常識」を取り戻したい
第9号 2003年10月  総選挙の争点は「憲法」と「民主主義」
第10号 2003年11月  いま「日本の針路」を考えよう
第11号 2003年12月  「戦争のできる国」への道を防ごう
第12号 2004年年2月  時代の空気
第13号 2004年3月  憲法の原点を見つめよう
第14号 2004年4月  イラク危機
第15号 2004年5月  本道の政治論議を
第16号 2004年6月  憲法9条を守るために投票しよう
第17号 2004年7月  9条に立脚した世界を築こう 二大政党論に毒されるな
第18号 2004年8月  オリンピックに流されず日本を見つめよう 59年目の8月に残したいこと
第19号 2004年10月  「日米同盟」の呪縛を解き放とう
第20号 2004年11月  危機に果たすべき政治の責任 あらゆる場で「自由にものがいえる雰囲気」を
第21号 2005年1月  許せないNHKへの政治介入
第22号 2005年2月  第9条に立脚した外交で、積極的護憲を。動き出した改憲策動をはねのけよう
第23回 2005年4月  燃え上がる中国の反日デモ
第24回 2005年6月  「靖国」があぶりだすこの国の今
第26回 2005年9月   「争点」は憲法と暮らし小泉マジックに惑わされるな
第27回 2005年10月  800万超す票の重みを生かせ護憲勢力の結集で運動を広げよう
第28回 2005年11月  右傾化の中で重い後藤田氏の遺言
第29回 2005年12月  争点を国民に提示せよ――「小泉改革」の負担は国民に
第30回 2006年1月  アジアで問われる日本の針路
第31回 2006年2月  ライブドア強制捜査、検察のねらいはどこに
第32回 2006年2月  本当に大切なことを論議せよ
第33回 2006年3月  混迷を打開する行動を
第34回 2006年4月 アジアとの友好を阻害する首相の靖国参拝 メディアは汚い小泉戦略を批判せよ
第35回 2006年5月 日本の国のかたちが問われるとき
第36回 2006年6月 国際感覚疑われる日銀総裁 優先審議狙い重要法案継続に
第37回 2006年7月 「敵基地攻撃」などもってのほかだ
第38回 2006年9月 安倍内閣の危険性を見極めよう
第39回 2006年10月 北朝鮮核実験の衝撃 日本の核武装論を許すな
第40回 2007年12月 教育基本法改悪をゆるすな
第41回 2007年1月 安倍政権は短命の可能性
第42回 2007年2月 安倍政権の正体を見極めよう
第43回 2007年3月 無党派頼みの政党政治って……
第44回 2007年3月 米国も危惧する安倍首相の右翼ぶり −「反ファシズム」を広げよう
第45回 2007年4月 憲法無視の「集団的自衛権」行使は絶対に許されない
第46回 2007年5月 安倍政治の横暴を阻止しよう
第47回 2007年7月 安倍強権政治を国民はどう審判?
第48回 2007年11月 この国はどこへ行こうとしているのか(号外)
第49回 2008年9月 福田退陣が曝した自公政権の今
第50回 2008年10月 半世紀も自民政権続く日本政治の異常
第51回 2008年11月 日米同盟再考の転機
第52回 2008年12月 緊急対応こそ政治の責任だ
第53回 2009年1月 政権交代確実だが見えぬ将来展望
第54回 2009年2月 政治の劣化、危険水域に
第55回 2009年3月 小沢氏去就は世論の動向次第
第56回 2009年4月 麻生政権支持率回復の不思議
第57回 2009年5月 北朝鮮の危険な賭け。狙いは?
第58回 2009年7月 外務次官らが歴代管理 日米間の核持ち込み密約 政権交代見据え真相を証言
第59回 2009年9月 役割終えた自民党
第60回 2009年10月 暴かれる自民党の悪政
第61回 2009年11月 発足2カ月の鳩山政権
第62回 2010年1月 検察と小沢の「最終戦争」 民主党政権に大きな痛手
第63回 2010年2月 小沢氏、検察と取引か
第64回 2010年3月 安保体制維持に動き始めた民主党
第65回 2010年4月 さまよい始めた鳩山政権
第66回 2010年5月 抑止力の虚構に固執 普天間、社民は政権離脱
第67回 2010年6月 期待裏切る世襲政治家
第68回 2010年7月 根底に民主党政権への失望