No.8
9月10日登録

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英夫とジャーナリスト仲間の懇談を
 月一度をめどにお届けします。

◎政治と報道に「常識」を取り戻したい

▼おかしくないか、「拉致」「北朝鮮」報道

 きょう万景峰号がまた入港した。*長い間日朝の架け橋だった船だが、日本政府は大げさに検査したりして問題にしている。あれは嫌がらせです。貧しい心根ですね。

 そうだね。覆面の元工作員が米議会で証言したり、テレビに出てしゃべる。「元工作員」の「証言」などというのは信用できないのは常識なのにそれが根拠。おかしい。
 雑誌「諸君」がアンケートをしてきて、「拉致問題の解決を妨げたと思われる個人、団体は何か」というのがあったから、私は「救う会」と答えた。「経済支援と経済制裁」の質問の選択肢には、これには「私の考え方はない」と答えた。「国家として拉致問題、北朝鮮問題にどう対応するか」という質問には、「固定された設問に答える形では考え方、意見を正しく表明することはできない。ジャーナリズムとして安易な方法だ」と答えた。

 もともと「一時帰国」だったはずの5人を返さないのは約束違反だ。双方の信頼が大事なのに、救う会に家族会が乗せられ、日本版ネオコンが騒いで約束破りをさせてしまった。これでは外交はできない。押し切られた外務省も政府も情けない。日本は拉致問題は外交上の重要カードだったはずなのに、それをつぶしてしまった。「戻ったら2度とこられない」という庶民レベルの感情はわかったとしても、相手国から保証を取り付けて説得するのが政府の仕事だ。マスコミでは久米宏のニュースステーションもおかしい。

 私は「北」に8回くらい行っている。75年だと思うが、金永南(現・朝鮮最高人民会議常任委員会委員長)と話したとき、「もっと国の中を堂々と見せたらいい」と進言した。彼の返事は、「われわれは戦争のときの記念品を飾ってあったりして、それを外国の人が見れば不愉快になるかだろう」というようなことを言っていた。確かに、軍事博物館には例の米国のスパイ船プエブロ号もあった。

 私が行った87年は、食糧事情も良くなって、自信を持っていた時期だったせいか、テンポは遅いけれど、だんだん開いていくだろう、という印象を持った。他の国でも同じだろうけれど、自信がついてくれば、開放に向かうと思う。

 そう、われわれが行くとやはりいいところを見せる。でも、田圃がダメになった災害のあとなどは見たよ。だから、本当のところはなかなかわからない。しかし、国を捨てた脱北者とか工作員とかいう人たちが話すのを全部信用して、報道するのはおかしいね。
いまのマスコミは競って「北朝鮮バッシング」をしていて、拉致問題はその材料にされている。まるで北をバッシングしないと間違いだというような状況は異常だね。

▼「6カ国協議」の意義を見つめ直そう

 核問題をめぐって6者協議があったが、僕はこの協議の意味は大変大きいと思う。それは、日本のマスコミや政府が言っているようなことではなく、北東アジアの「核」についての協議で、これが続くことが合意されたからだ。ことしの原爆記念日では、広島の秋葉市長も長崎の伊藤市長もそろって米国を批判したが、いま世界は「非核」の時代に入っている。北東アジア地域の「核」について、関係国が集まれたことが重要で、朝鮮の体制がどうかという話ではない。マスコミは指摘していないが、日本は本来ここで、米中露とけんかしても、非核を主張して北朝鮮も説得するという立場に立つべきだ。

 子供が6人いて、お菓子持っているのが3人、もう1人が持つと言ったら、みんなでやめろと言っている。僕らもお菓子は食べないから、って言わなければダメですね。
 
 そう。政府もマスコミも本来の「東アジア非核化」の課題を意識していないね。今度の6者で「北東アジア非核地帯条約」を結ぶところまで行かせなければならない。
 いま、既に南半球は「非核地帯」で覆われている。最初にできたのが、1967年の中南米核兵器禁止条約。メキシコの地名を取ってトラテロルコ条約というんだが、メキシコのラブレス外相が中心になって条約が作られ、中南米33カ国が加盟している。
 次に85年には、南太平洋非核地帯条約(ラロトンガ条約)ができた。太平洋諸島フォーラムの16カ国と地域(自治領)が対象だ。95年にできたのがASEANによる東南アジア非核兵器地帯条約。ASEANの10か国全てが批准を完了している。アフリカにも96年に署名されたアフリカ非核兵器地帯条約(ペリンダバ条約)があるよ。
 朝鮮半島では、92年に「朝鮮半島の非核化に関する共同宣言」が発効して、履行するために共同委員会が構成されて議論された。これで米国は韓国を非核化した。東北アジアでは、モンゴルのオチルバト大統領が、「非核国宣言」をし国連と米、露、英、仏、中の5カ国がこれに協力することを確認している。日本の役割はこれを進めていくことだよ。

 そうすると、米国はまず先制核攻撃をしないと言わなければならないことになる。

 そうね。核保有国同士は攻撃しあうかもしれないが、朝鮮半島ではできない。日本はこうした地域を広げていくべきだ。だから、「核」と「拉致」は全く次元が違うんだ。

 そう言えば6者協議で、韓国やロシアが何を言ったか、伝わってきていない。僕はブッシュは今度の選挙で危ないと思う。ユニラテラリズムでいろいろやったけれど、イラクはうまくいっていない。経済の先行きが問題で、国家財政はクリントン時代には黒字だったのに4000億ドルの赤字。失業率も上がっている。ニューヨークで「テロ戦争反対」の世論がが50%を超えるところまで来た。日本もいい加減に米国追従だけではダメだ。

▼対立軸は「弱者優先」と「憲法擁護」の政治

 ところで、自民党総裁選では、小泉の政策には反対でも小泉でないと選挙で勝てない、ということで「小泉総裁」らしい。自民党議員の頭は選挙で一杯らしい。
  
 自民党のことだけではないが、政治家が世界をどうするか議論していないのが問題だ。委員会だけでなく、政治家同士で議論がない。昔は自民党の人は、朝飯会が毎日あって、人によっては掛け持ちしていた。しかし、いまは自民党の勉強会も少なくなっている。
 はっきりしておかなければならないのは、本当の問題は、「弱者優先」の政治をどう実現するか、ということだ。小泉は、利権と結びついた自民党政治を打破すると言って出てきたが、これまでの利権とは違うかもしれないが、むしろ弱肉強食の「新自由主義」を進めて、強者による政治は変わらなかった。今度の総裁選も、高速道路にしても郵政にしても利権の問題は出ているが、弱者優先の政治にするかどうか、という点は対立軸になっていない。小泉はうまいから、それを錯覚させているんだね。錯覚はマスコミがしっかりしないから拡大する。政治問題はまるで自民党総裁選だけだ。問題はいま、日本に弱者優先の政治がなくなりつつあることだ。欧州は弱者優先が全盛なのにね。

 それと全体が「体制内」になってしまった。いわば、米国流二大政党方式だ。

 小選挙区制のとき以来、アメリカ流の政治に持っていこうというのが常識になっているが、これはおかしい。小選挙区制では、参院では否決したのに、土井議長が取り持って妥協し、小選挙区制を成立させてしまった。それ以来、本当の対立軸がなくなった。

 2大政党制は、戦前の政友会・憲政党もそうだし、米国の民主党と共和党もそうだが、体制についての対立軸はなく、2項対立のオプションがあるだけだ。自由党と一緒になった民主党も、この弱者優先や、憲法擁護を対立軸にはなりそうにない。

 日本人には、戦後の歴史で経験したイデオロギー対立の厳しさは嫌だという感覚があるのではないか。もう少し融通を利かせた方がいいということになると問題はいつも曖昧になる。連合はAFL−CIOを目指しているし、ヨーロッパの社会は遠い感じだ。
 ただ、中国などでも混乱があるようだね。3,4年前、中国のシンクタンクのベテラン研究員と議論したことがあるが、「弱い立場の人への配慮が大切」と言ったら、「自由競争が大切」と真顔で言われて少し驚いた。 

 ぼくはやっぱり、憲法を軸にして大運動をするしかないと思う。小泉は2005年に自民党の改憲案を出して明文改憲をするんだ、という立場を打ち出した。弱者優先も、戦争の放棄も同じ問題なんですよ。メディアが小泉の「改憲指示」発言をまともに受けず斜めに見ている。これはまずいですよ。本当に改憲して軍事優先国家になってしまう。

 小泉を見ているとまるで、アメリカの指示を受けてるみたいだしね。いまの調子で行くと、憲法改正だって時間の問題になってしまう。いま、昔みたいな「統一戦線」ははやらないかもしれないが、きちんとやっていかなければいけないね。 (了)


*9月4日収録

                              

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