ミシガン大学での授業


入学してはじめの1年目の秋学期には、Microeconomics(ミクロ経済学)Statistics(統計学)Foreign Policy(外交政策)National Science Policy(国家科学技術政策)の4コマとりました。Microeconomics(ミクロ経済学)、Statistics(統計学)、Foreign Policy(外交政策)の3つはフォードスクールの必修科目、National Science Policy(国家科学技術政策)は物理学部科目での選択科目でした。MicroeconomicsとForeign Policyは自分が体系的に勉強したことがない分野だったので、興味がもて自分のためになったと思います。一方で、StatisticsとNational Science Policyはやや期待はずれでした。詳しい内容は下にまとめてあります。

1年目の冬学期には、Cost Benefit Analysis(費用対効果分析)、Macroeconomics(マクロ経済学)、Public Management(政府経営学)、Value & Ethics(価値と倫理)の4コマとりました。いずれの科目もとてもおもしろかったです。はじめ、Value & Ethicsはつまらないと思っていたのですが、実際授業でやる内容は公平性に関することや政府のあり方(保守とリベラルの対立)、アルマティアセンの開発と自由などおもしろい内容が多かったです。


Microeconomics(ミクロ経済学)

この授業では、需要供給関数、費用関数、独占問題、ゲーム理論などの基本的なミクロ経済について勉強しました。
教授はJames. Levinsohnでした。政策分析を念頭においているので、消費者余剰、生産者余剰、社会厚生などを意識した講義となっていました。体系的にミクロ経済の考え方が整理できました。

ちなみにミクロ経済を勉強するのにお薦めのテキストがあります。Microeconomics and Behavior(Robert Frank)です。
もちろん英語ですが、難解な数式はさけつつも要所では簡単な数学を使って解説をしているので、理解の助けになります。
授業でもわからないときは、よくこのテキストを参照しました。アメリカでは、かなり評判が高いようで、大学の図書館では常に貸出しとなっていました。人気により第五版がつい最近出版されました。

試験は2回あり、2回ともかなり高得点がとれました。アメリカ人は数学が苦手な様子で、制限時間と格闘しているようでしたが、比較的計算の得意な私は、時間がかなりあまり、エクストラポイントを狙えたのが大きかったのでしょう。

内容を一言で要約すれば「消費者や企業が合理的に行動すれば社会は最適な配分にたどり着く」といったところでしょう。
主なポイントは以下の通り。
・Demand曲線は支払い意思額WTP(Willingness to pay)を表したものである
・Supply曲線は販売意思額を表したもの
・MC=Supply曲線になる
・市場のDemand曲線は各消費者のDemand曲線を水平方向に足しあわせたものである
・市場のSupply曲線は各企業のSupply曲線を水平方向に足しあわせたものである
・完全競争市場の価格は市場のDemandとSupply曲線によって決まるので、各消費者・企業は価格が外性的に与えられる。
・完全競争市場では企業の利益はない。なぜならP=MC=Supply曲線で価格決定されるから。
・Demand・Supply曲線の形状(傾き)は弾力性によって表される。
・弾力性は消費者・生産者余剰に大きく影響を与える。
・効用関数と予算制約直線からMUx/MUy=Px/Pyが導かれる。
・企業の費用最小化行動からMCx/MCy=Px/Pyが導かれる。
・企業の利潤最大化行動より価格決定はMR(Marginal Reveneus)=MC(Marginal Cost)で行われる。
・完全競争市場ではP=MC。なぜならMR=Pだから。
・DWLは常に三角形となる。
・電気・ガス会社などはFixed Costが極めて高く、MC曲線は右下がりとなる。
・ナッシュ均衡はそれぞれ仮定による選択予測をし解く。(Dominanct Strategyに着目する。)



Statistics(統計学)

この授業では、確率と統計に関する基礎的な勉強をしました。
講師はシカゴ大学で統計PhDを取得した非常勤講師の方でした。
使用したテキスト、Statistics for business and economicsが良く、この本を読んで例題を解けば理解できました。
このテキスト良かったところは例題が具体的な事例からもってきているところで、いかにして統計手法を実用的に使うのかという点に着目しているところです。Newsweekなどからデータや記事を引用し、例題問題を作成しています。

試験は2回ありましたが、ともに問題が簡単で、クラスの平均点も80点後半だったと思います。ミクロ経済と同じでアメリカ人に比べ計算が得意な私は高得点がとれました。

主な内容は以下の通り。
・条件付き確率の解き方はベイズの定理(公式)を使う方法と表による方法の2つある。
・条件付き確率は情報が追加されたときに確率を修正するときに非常に有効な方法である。
(Prior ProbabilityとPostrior Probabilityに修正する)
・二項分布確率は結果が2つでそれぞれに確率がわかっているときに使う。(例:女性ドライバーが××人来る確率)
・ポアソン分布は平均y回発生する場合にx回発生する確率を求める分布関数である。(例:有料自動車の到着モデル)
・Exponential分布はポアソン分布と同意。(例:コンテナ貨物の積卸しが10分以内である確率)
・区間推定については下記のとおり。
 サンプル数が大きいとき
   

サンプル数が小さいとき
  

サンプルサイズ
  

片側の仮説検定及び両側検定
・Type1 Error:Reject H0 when it is not true
例:湖の水質検査で、本当は汚染されていないのに検査結果を汚染されていると判断するエラー。政府は余分な汚染対策をとってしまってコストがかかる。
・Type2 Error:AcceptH0 whrn it is not true=ß
例:本当は湖が汚染されているのに検査結果で汚染されていない(きれいだ)と判断するエラー。とても危険なエラー。なぜなら政府は対策をとらないといけないのに何もやらないから。ßの計算例。
・仮説検定に対する一般的な批判(ランダムサンプルなどの仮説に無理があるなど)


Foreign Policy(外交政策)

この授業では、国際関係論について勉強しました。国際関係論の一般的な理論を薄く幅広く紹介するといった内容でした。
教授はSusan Waltzでした。毎回かなりの量のリーディングが宿題となっており事前の準備が求められました。宿題となっている文献は、かなり厳選されている様子で、内容的にはおもしろく有益でした。授業では生徒の発言を中心に進行されますので、私の発言もときどき求められました。また、リーディング以外の宿題としてPolicy Memoも宿題として出されました。また、タームの後半にはグループプロジェクトも課され、私は「京都レジームにおけるインドのスタンス」について分析をしました。前半はまだアメリカの授業スタイルにとまどいがあり私の発言はあまりできませんでしたが、途中からは1日1発言はできるようになりました。

主な内容は以下のとおり。
・リアリズムとリベラリズム(International Relations Theory, Paul R Viotti, Mark Kauppi)
リアリズムは、国益(National Interest)のために身勝手に行動する国家に着目し、その国家間での権力(パワー)争い(Balance of PowerやHegemonyが関連)により国際問題を説明しようとする考え方。特徴としては、国際関係論のアクターとして国家が最も重要であると考える、国家は合理的に行動すると考える、国家安全保障が一番の関心事であることがある。
一方、リベラリズムは、国家間の経済的な相互依存関係、民主主義の広がり、国際機関、国際NGOネットワークの主に4つの要因が、国家の権力(パワー)争いを抑制するように働くと考え、国家にプラスして、国家以外のアクター(国際機関、NGO、多国籍企業、テロリストなど)も重要なアクターとしてとらえ、国際問題を説明しようとする考え方。

・コンストラクティビズム
リアリズムとリベラリズムは権力争い、国際機関、貿易、NGOなどのようにもの(material)に注目するのに対して、コンストラクティビズムは思想・アイデンティティ(idea)に着目する。つまり、コンストラクティビズムは、国家は歴史的プロセスにおいて受け入れられる行動規範(norm)を確立すると考え、国家の思想・アイデンティティがどのようにつくられ、進化してきたのかを考えることで、国際問題を説明しようとする考え方。

・Sovereignty(国家主権)("Sovereignty",Thomas Heller and Abraham Sofaer)
Sovereigntyとは立法、司法、行政、選挙、外交などにわたる国家のもつ基本的権利のことで、。Sovereigntyとは「最高の」という意味であり、それ以上の権威はなく、他国が干渉することはSovereigntyの侵害として国際法で禁じられている。つまり、国際社会では、このSovereigntyをお互いに守るということが絶対的な国家間のルールとなっている。

・Groupthink(集団浅慮)("Groupthink in Government", Paul't Hart)
集団による意思決定は「三人よれば文殊の知恵」とならないことが多らず、論理的でないとんでもない決定をしてしますことがある。これをgroupthinkという。groupthinkは、グループ内での一致を重視するあまりに現実的な判断ができなくなること。外部との隔絶、極度に強いリーダー、メンバーが決定しないといけないという強いストレスをもつ、などの環境でよく起こる。このgroupthinkを防ぐ方法はとしては、メンバーが集団思考問題を理解すること、ある意見に批判するメンバーを排除しない会議の雰囲気をつくることなどがあげられる。
典型的な集団思考の症状は、批判者を排除する会議の雰囲気、事実への盲目(感情的にそんなことは重要でないと批判メンバーの意見を退ける)、極度の楽観主義(結果が良ければ問題ないよといった身勝手な判断)、過去の成果やルールに対する固執(これまでは問題なくやってきたのだから大丈夫)、全員賛成(危険な満場一致)がある。

・Epistemic Community(認識の共同体)
ある特定の分野において専門性と能力が認められ、その分野で政策上有効な知識について権威をもって発言できる専門家のネットワークのこと。環境問題が国際的なアジェンダになった80年代から科学者がepitemic communityを形成して、国際的な取決めに大きな役割を果たした。

・2レベルゲーム(”Diplomacy and Domestic Politics: The Logic of Two-Level Games”,Robert D. Putnam)
国際間の交渉は、国内(政府内)で譲歩できる範囲を決める交渉と、相手国との実際の交渉との2つに分けられる。国際間交渉は、国際レベルで合意可能な範囲と、国内レベルで合意可能な範囲が重なる範囲内(ウィンセット)でしか交渉担当者は合意できない。2レベルゲームは、この2つのレベル(第1レベル;2国間交渉、第2レベル;国内レベル)を分析することで、合意形成可能エリア(ウィンセット)を分析する理論である。

・Transnational Advocacy Networ("Actions Beyond Borders", Margaret Kech and Kathryn Sikkinh)
国際NGOはネットワークをつくることで、国家や国際機関の政策に影響を与えようとする。その戦略としては、情報戦略、シンボリック戦略、レバレッジ戦略(根回し戦略)、アカウンタビリティ戦略の4つがある。国際NGOはそれぞれ単体では大きな力をもたないが、ネットワークを構築することと、戦略をうまくとることで、キャンペーン活動を行うだけでなく、具体的な政策の提言まで行うようになっている。各NGO間で共通したゴールを共有することが重要である。

・その他
決定の本質("Essence of Decision Explaining the Cuban Missile Crises", Graham Allison and Philip Zeliknow)、国際機関(国連など)、レジーム理論、囚人のジレンマ、中国の安全保障、アメリカの外交政策


National Science Policy(国家科学技術政策)

この授業では、科学技術に関わるアメリカの政策について勉強しました。教授は、物理学部のHomer.Neal教授。はじめにアメリカ科学技術政策の基礎となったVannevar Bushのレポート「Science, the Endless Frontier」をレビューしました。(同レポートの中で、基礎科学の重要性、大学機関への政府の資金援助の必要性、NSFの設立などの画期的な提言をしています。)その後、アメリカの特許戦略、産官学連携をもたらしたバイドール法や京都レジームから離脱したアメリカ政府の地球温暖化戦略、原子力開発の是非、ディジタルデバイドの問題などを幅広く扱いました。また、クリントン政権時にアメリカの科学技術政策を担当していたLane Neal氏も特別講師として来られ、ホワイトハウスでの経験に基づいて、科学技術政策の策定プロセスをわかりやすく講義していただいた。
ターム後半にある個人プロジェクトでは、Technology Assessmentの新たな流れとして、「デンマーク型コンセンサス会議」を研究し、科学技術政策の評価に対する市民参加のあり方について研究した。
講義内容はそれほど面白くなかったが、個人プロジェクト「デンマーク型コンセンサス会議」では興味のある分野だったので、かなり得るものがあったように思う。このコンセンサス会議は、日本の農林水産省などで同様な市民参加型意思決定システムが試みられており、今後の日本の意思決定システムにも活用できる可能性がある。


Cost Benefit Analysis(費用対効果分析)

ミクロ経済学を使って費用対効果分析の基礎を勉強した。需要・供給曲線フレームに政府の介入がいかに影響するかを、消費者余剰、生産者余剰の変化で測定することでCBAの基礎を学んだ。CBAで必要となる概念、市場の失敗(自然独占、外部性、公共財)、割引率、パレート最適とカルダーヒックス基準、不確実性とコストなどについても事例を交えながら学んだ。時間制約から、現実のCBAの政策分析をするという具体的なケースがなかったことが残念だった。

Public Management(政府経営学)

New Public Managementといわれる新しい政府経営学について学んだ。mission statementの重要性や、政府職員のモチベーションを高める方法など、政府内部で管理職につく人には実践でも使えそうなテクニックを学問としている文献に多く触れることができおもしろかった。ケーススタディも多く、アメリカ行政機構が組織運営にあたってどんな工夫をしているのかを知ることもできた。

Macroeconomics(マクロ経済学)

古典派の経済モデル、ケインズの経済モデル(IS-LMモデル含む)、ソロー成長モデルなどマクロ経済モデルを体系的に勉強した。学期後半には、クラスで学んだモデルを使って、日本経済の分析と政策提言もした。マクロ経済にはミクロ経済学のように統一的なモデルがなく、理解に苦しんだが、IS-LMモデルを学んだときには財政政策と金融政策について頭の整理がよくできた。

Value & Ethics(価値と倫理)

このクラスでは、政治倫理の問題、政府の役割、縦割り行政の問題などについてディスカッションベースで勉強した。大量のリーディングが毎回課された。おもしろい内容のトピックの日もあればそうでない日もあったので、クラスへのモチベーションの維持が難しかった。ジョンスチュワートミルの危害原則、パターナリズム、ベンサムの最大多数の最大幸福、ジョンロールズの正義論、アマルティアセンの自由と開発、ノージックの最小国家論などはアメリカ人と議論することで理解が深まっり自分のためになった。

Program Evaluation(施策評価)

政策評価とは、費用対効果分析(Cost Benefit Analysis)と影響評価(Impact Analysis)とに大きく分類されるが、このクラスでは後者について勉強した。ランダマイゼーション(ランダムに政策を受けるグループとそうでないグループに分け、違いを検証する方法)と非ランダマイゼーションについて学んだ。一番興味深かったのは、非ランダマイゼーションがよく使う回帰分析による政策評価の問題点をひたすら講義した点だった。Omitted variableの問題、分析結果を一般化するときの問題点など、シンクタンクなどがよく公表する政策分析論文のどこを批判的に読んでいけばいいのかが学ぶことができた。実践にも十分使えそうな内容が多く含まれていた。

Negotiation and Conflic management(交渉学)

「ハーバード流交渉術」を中心にアメリカ交渉術を学んだ。毎回クラスではロールプレイングの交渉をクラスメートと行い、実践した後でクラスディスカッションをして、お互いの交渉の批判をする。理論を学ぶことは自分でもできるが、このクラスで行ったような、理論を知る者によるロールプレイングはかなり有意義であった。

Economics of Development(開発経済学)

作成中

Transportation and Public Policy(交通政策論)

作成中






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