第1回 エッセイ:効率的な人脈づくり 〜Structural Holes〜

このコーナーでは、これまで学校で習った事の中から、ビジネスで役立ちそうな内容を現実問題と結びつけて紹介していきたいと思います。第1回目は社会における効率的な人脈づくりについてです。このテーマについては、フォードスクールのPublic Managementの授業の”Networking and Professional Relationships”中で議論した内容を自分なりに整理したものです。

”人脈づくり”といってもいろいろな切り口があると思いますが、今回紹介するのは効率的な人脈づくりです。キーとなるコンセプトはStrucural Holesです。このStrucural Holesという概念はロナルド・バート(Ronald Burt)教授の"Structural Holes"という文献で紹介されています。(詳しくは、"Structural Holes",1992, Cambridge, MA: Harvard Univ Press, Ch1&2をあたって下さい。)

人はいろんな集団(専門的にはクラスターというそうです。)に属しています。例えば、会社、大学の同期、ゴルフ仲間、英会話学校の友達、教会友達、高校時代の部活OB、親戚付合い、近所付合い、奥さんの友達付合い、PTAなどなどたくさんの集団に属しています。みなさんも少し考えてみるだけで、自分がいかにたくさんの集団に属しているかが想像できると思います。そして、この集団(クラスター)内部では、それぞれ共通した趣向・趣味をもった人たちが情報を共有していきます。例えば、英会話学校クラスターでは、TOEFLの点数がいかにしたら上がるのか、英語の発音がどうやったら良くなるのか、どの参考書が良いのかなど、英語に関する情報を常に交換して、みんなで共有していますよね。

Strucural Holesとは、このようにたくさんある集団の中で、ある集団と他の集団を結ぶ結節点のことで、異なる集団間の情報の結び目になるHole(穴)のことです。ロナルド・バート教授によると、このStrucural Holesをたくさんもっていればいるほど、、つまりたくさんの異種の集団に属していればいるほどその人は良い人脈づくりができているそうです。また、Strucural Holesでは、各集団には1人だけ信頼のおける人をつくっておけばそれで十分で、各集団と複数の人と付き合いをすることは余分(Redundant)だとされています。確かに、人との付き合いに費やせる時間やお金は限られていますので、限られた時間とお金の中で、できるだけ多くの異なる集団と結びつきをもって、たくさんのStrucural Holesをもったほうがいいですよね。同じ集団にずっと浸っていたら、もっている情報は偏ってしまいます。英会話の例でいけば、英会話学校の友達とつるんで遊んでばかりいると、英語の情報は入ってくるけど、マーケットの情報や学校の授業の情報は入って来にくくなりますよね。



それでは、どうしてStrucural Holesが人脈づくりの観点から良いといえるのでしょうか?
その答えは、いわゆる”漁夫の利”(Tertius Gaudens)です。つまり、2人が何かについて衝突して、争っているときには、ぜんぜん別の第三者がその争いから利益を得てまうということです。あなたが2つの異なる集団(クラスター)に属していて、その2つの集団を結ぶ人物があなたしかいないとします。1つの集団であるものを安く買いたい人がいて、もう1つ別の集団でそのものを売りたい人がいれば、あなたが2人を仲介あるいは利害調整してあげることで、自分に付加価値をつけることができ、ときには、仲介したことに対してお礼(利益)をもらったりもするでしょう。また、2つの異なる集団(クラスター)が衝突したり争っているときなどには、その争いの調整役となることで自分の価値・ステータスを高めることができ、ときには利益を上げることもあるでしょう。異なる集団(クラスター)間であればあるほど、このようなことが起こりやすく、その間にいる自分の価値・ステータスは高くなります。言い換えれば、Strucural Holesから利益を得ることができるのです。また、集団(クラスター)間を結ぶ人物があなたしかいなければ、あなたの人物としての価値はますます高くなります。

ここまで、Strucural Holesを簡単に紹介してきましたが、これを念頭において人脈づくりを考えてみると、次のことが教訓として得られると思います。

1つ、できるだけ多くの異なる集団(クラスター)に属して、信頼のおける人とお付き合いする。そして、あまり1つの集団にどっぷり浸らない。(どっぷり浸かる時間があれば、その時間とお金で新たな集団を開拓する。)
1つ、各クラスター(集団)でお付き合いする人は1人で十分で、むしろ複数いると自分の価値が下がる可能性が出てくる。
1つ、自分の属しているクラスター間の情報のミスマッチ、衝突・争いに敏感になること。

こんなところでしょうか。

さて、私自身の人脈づくりについてですが、これまでこんなに計算にもとづくような人脈づくりはしていませんでした。確かに人付合いにおけるギブアンドテイクはとても大切で、ギブアンドテイクのバランスの計算も多少ありますが、ロナルド・バート教授の言うような、1つの集団(クラスター)から信頼おける人を1人だけに絞ることは現実的に難しいですし、人の付き合いとはこんなにドライなものではないと思います。義理・人情や恩といった日本独特の付き合いかたの方が、自分にはあっていると思いますので、私の人付き合いに対する考え方は、もっと人間味のある人付合いが大切だと思っています。この辺の考え方は、人それぞれ、いろいろだと思います。みなさんはいかがですか?

最後に、このエッセイは、ロナルド・バート教授等のStrucural Holesの理論を私なりに解釈したものですので、誤った解釈も含まれているかもしれませんので、その点はご了承下さい。

mike, July 16, 2003





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