日ロ平和条約問題全国シンポジウム

 「日ロ条約の早期締結を!−双方が受け入れ可能な条件をめぐって」

       2013.9.28  日本大学理学部1号館131番教室

                主催: 日本ユーラシア協会

                 

   日ユ協会が総力をあげて取り組んだ今回の「日ロ平和条約問題全国シンポジウム」は、「双方が

 受け入れ可能な条件を巡って」という、極めてリアルなものだった、東郷和彦(京都産業大学教授、

 元外務省欧亜局長)、アンドレイ・クラフツェヴィッチ(法政大学教授)、堀江則雄(ジャーナリスト、

 日本ユーラシア協会常任理事)の3氏は、テーマにまことに相応しいパネリストだった。

  新しい企画として、日ロの有識者に事前に「文書発言」を依頼したところ、17人から貴重な意見が

寄せられ、参加者には、3人のパネリストのレジュメなども含め、すべての「文書」が配布された。

  なお、今回の参加者は117人で、一昨年のシンポ(114人)を上回り、 この問題への関心の高さ

を伺わせた。

  パネリストの問題提起・報告の後、フロアーから9人の質問・意見が表明され、パネリストが丁寧に

答えた。また,パネリスト相互の意見交換もあった。

  問題提起・討論の中では、日本は「四島返還要求」論から、ロシアは「千島列島(および歯舞・色丹)

は既にロシア領土」論から脱却すべし、との意見が支配的で、「2島プラスアルファー」論をベースとす

る提案がいくつかなされた。

  ただし、両国の妥協による問題解決は容易でないことも、こもごも指摘された。

日ユ協会は、日ロ平和条約の早期締結をめざす運動に今後も精力的に取り組んでゆく。

 

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日ロ平和条約問題全国シンポジウム

 「日ロ平和条約早期締結を!−事態打開の道筋を探る」 内容紹介                

          2011.5.21   日本大学歯学部2号館第1講堂      

                   主催: 日本ユーラシア協会                   

1.全体の流れ 

   シンポジウムは14:00に開会。コーディネーターの長砂實氏(関西大学名誉教授)と竹田正直・

  日本ユーラシア会長の短い発言・挨拶の後、まず、第一部で四人のパネラーが報告した。時間は、

  和田春樹氏(東京大学名誉教授)と、コンスタンチン・サルキソフ氏(山梨学院大学名誉教授)が

  それぞれ45分、池田均氏(北海学園大学名誉教授)と、堀江則雄氏(ジャーナリスト)がそれぞれ

  20分であった。サルキソフ氏はパワーポイントを用いた。

   15分の休憩の際に、フロアー15人から20を超える質問・意見が寄せられた。

    第二部は、コーディネーターが整理したさまざまな質問・意見に対して、4人のパネラーが丁寧

  に答えた。外務省からの参加者には、特別に、総括的なコメントの時間が提供された。最後は、コ

  ーディネーターが短く締めくくり、17:55に終了した。

   なお、4人のパネラーの報告のタイトルは、次の通りであった。

  和田氏 「北方4島問題をめぐる虚構と詭弁」

  サルキソフ氏 「東日本大震災と日ロ領土紛争解決にとっての影響」

  池田氏 「平和条約締結促進運動の歴史と現状」

  堀江氏 「ユーラシア胎動と日ロ領土・平和条約問題」

   

2.参加者について

    参加者数は114名であった。外務省からの参加もあった。マスメディア関係では、朝日、毎日、産経、

  東京の記者・論説委員の参加があった。政党の参加は日本共産党だけであった。参加者のうち、当会

  会員と非会員の比率はほぼ半々であり、かなり広範な市民の参加があった。

 

3.報告・討論の内容

 

    まず、4人のパネラーの報告・主張は以下のように要約できよう。

 

   和田氏  @日本政府の「固有の領土」論と「不法占拠」論には正当な根拠がない。A「国後、択捉

   が千島にあらずとする」のは「詭弁」である。B日本政府が主張を「二島から四島に変えた過程」に

   は「外交史の虚構」が潜んでいる。C1956年の日ソ共同宣言に「引渡し」が明記されているのは

   「二島」であるが、「引渡し」の論理は「四島」にも当てはまる。D期限を切って早く妥協すべきである。

   種々の「妥当な解決」案提示が可能である。現在の自分の案は、「2島引渡し、2島(色丹、国後)

   共同経営」である。

 

   サルキソフ氏  @「3.11の惨事」が日ロ交渉再開のきっかけとなることを期待したい。A2009年

   半ばに、領土問題解決を困難にする状況が生れた。Bソ連崩壊後、「新しい可能性」が生まれ、ロシ

   アの歴代大統領は努力してきた。C日本側に問題解決のための「政治的意思」と体制が欠如してい

   る。このまま推移すると「妥協」の機運が消え去る恐れがある。Cしかし、いまでも「妥協」は可能であ

   る。「一連の中間的な解決策を通じた『平和条約への進展』」という道がありうるのではないか。D日

   ロ両国は、「中国の成長」という要因に配慮すべきでないか。Eロシア極東、サハリン、北海道を橋や

   トンネルで繋ぐ「共同開発の夢」があってもよい。F領土問題解決のシナリオとしては、「四島一括返

   還」は実現性に乏しく、「二島プラス・アルファー」ならば努力すれば可能であり、「四島を『日ロ平和

   特区』にする」案も可能性は高い、と考える。現状維持は確率が高いが「時間の流れに逆流」であり、

   「関係の凍結」が「最悪」である。

 

   池田氏  @日ソ共同宣言(1956年)以降、日ソ協会(1957年創立)・日本ユーラシア協会(1992

   年に改称)は、一貫して日ソ(ロ)平和条約締結の運動を進めてきた。A「日韓基本条約」締結

   (1965年)、「日中平和友好条約」締結(1972年)があり、日ソ(ロ)平和条約だけが課題として残って

   いる。日ユ協会の運動も低迷してきた。B「相手が嫌がるこの問題には触れない」という姿勢を改め、

   ロ日協会との最近の協定を生かしていきたい。C領土問題解決にとらわれず、「中間的な」協定ある

   いは条約の締結の途を考えるべきでないか。

 

   堀江氏  @ユーラシアで国境確定の数々の実績が挙がっている。それを齎したのは、確固とした政

   治意志の存在、段階的でフィフティ・フィフティな解決策、互恵・相互信頼の関係、領土ナショナリズム

   の抑制、などである。A最近のロシアは「強硬路線」を取っているように見えるが、断定は慎重である

   べき。B日本政府が固執している「四島返還」論は冷戦の産物であり虚構である。C日本はサンフラ

   ンシスコ平和条約で千島列島の主権を放棄したが、国際法的にはその帰属は未定。それを決めるの

   が日ロ平和条約である。D樺太千島交換条約(1875年)と日ソ共同宣言(1956年)を基礎にした「交

   渉のリセット」が必要である。日ロ双方の主張に「重大な弱点」がある。「妥協による合意」を模索すべき。

   E平和条約締結が齎す具体的な諸メリットを「イマジン」しよう。

 

   第二部の一般討論で出された質問と意見は、次のようなものであった。

 

   @二島あるいは四島「引き渡し」・「共同経営」で、ロシア人と日本人の人権・生活はどうなるか。A日本

   国民に深く浸透している「固有領土」論、「四島一括返還論」をどうしたら克服できるか。B日ロ歴史共     

   同研究の復活は可能か。C北方四島への中韓などの外国投資をどう見るべきか。D問題解決に要す

   る期間・時間をどのように予測するか。E日本の外務省の情報収集能力・情勢判断力に問題あり、反

   省を求めたい。F最近、ロシアは、「第二次大戦の結果」の法的根拠に「国連憲章」をあげるようになっ

   ている。Gポツダム宣言受諾後にソ連が千島列島を占領したのは不当。それは「領土を求めるための

   別の戦争」であった。千島列島はカイロ宣言に言う領土には該当しない。H「固有の領土」は大変説得

   力のある概念、「領土不拡大」は「戦争公約」、「クリル諸島」は帰属未定地域、ロシアの前途は日本より

   も深刻、無原則な妥協には反対。I日本(外務省)の「四島一括返還」要求の方針は間違っている。ロシ

   アの世論の95%以上が返還に反対している。J「平和条約」ではない「中間的な協定・条約」の締結を

   求めることが果たして現実的であろうか。なお、別途配布された「文書発言」の標題は、「ロシア側を大き

   く刺激した二つの措置とビザ取得入域問題」であった。

 

    これらの多様な質問・意見に四人のパネラーが丁寧に答えた。その紹介は省略せざるをえないが、最後

  に外務省からの参加者がおこなった「全体に対するコメント」の要旨は以下のようなものであった。@日本と

  しては四島返還で行くしかない。ただし、「四島一括返還」という言葉は使用していない。A東日本大震災を

  契機に、お互いの利益、共通の部分を大きくする方向に変えていきたい。B歴史共同研究を復活・再開させ

  ても新しいことは出てこないだろう。C中間的な条約でなく、領土問題も最終的に解決することが重要である。

  批判には耳を傾けていくので、今後ともよろしく。

 

    なお、このシンポジウムを通して明らかになった諸論点は、次のようなものである。

 

    @東日本大震災が日ロ交渉に及ぼす影響は限定的である。A日ロ交渉のリセットにとって日本政府の

    「四島(一括)返還」論の抜本的見直しは必須である。B「二島・四島返還」の総合的メリットの具体的イ

    メージアップが必要である。Cソ連(ロシア)の「言分」の批判的検討が必要不可欠である。D問題解決

    には日ロ双方の妥協が不可欠であるが、一方的な譲歩はありえない。ウイン・ウインの原則。E領土

    問題解決と平和条約締結とは不可分。しかし、領土問題を「棚上げ」してなんらかの「中間的な」協定・

    条約を締結することも必要・可能なのか。F日ロ双方にとって平和条約の早期締結が望ましい。その

    遅延はロシアの四島「実効支配」を強化し、問題解決を困難にする。G樺太千島交換条約(1875年)、

    サンフランシスコ平和条約(1951年)、および日ソ共同宣言(1956年)の意義の再確認に基いて、日ロ

    交渉を再開・継続すべきである。H日ロ平和条約締結は東アジア全体の平和増進、および日ロ双方の

    安全保障に資する。