御影堂

浄土宗、浄土真宗、日蓮宗などでは、それぞれの宗祖である法然上人、親鸞上人、日蓮上人らが一般大衆の信仰を集めました。このため大寺院ではこれらの宗祖を祀るための御影堂が設置されました。
御影堂は大勢の参詣者を収容するため広い外陣を備えます。浄土宗、浄土真宗では本堂よりも規模が大きく中心的な堂宇となっているのが特徴です。

 太子堂(たいしどう)

聖徳太子信仰の高揚により各地に太子堂が建てられました。
開山堂とは異なり聖徳太子を信仰の対象として祀るとともに、一般大衆にも広く開かれています。



聖徳太子と関係の深かった秦氏の氏寺、聖徳
太子立像を本尊とする広隆寺上宮王院太子殿
(京都 江戸時代 1730年)

祖霊を祀る習慣は神社の由緒にみられるように太古の昔からあったようですが、仏教の形式で祀るのは奈良時代に個人の菩提を弔うための仏堂が建てられたのが始まりでしょう。

奈良時代の遺構では、法隆寺東院の夢殿、興福寺北円堂、栄山寺八角堂があります。これらはすべて八角の円堂であり、菩提を弔う一つの形式が整っていたことを窺わせます。
八角は中国の易経の思想からきており、八方位、すなわち周囲をあまねく照らし、邪悪から護り、永遠の繁栄を願います。

ただし祖霊を祀るとはいえ、これらの円堂は厳密に言うとあくまでも菩提を弔うために建てられた仏堂であり、祀られているのは祖霊ではなくて仏像そのものです。
夢殿は救世観音、北円堂は弥勒如来、八角堂は薬師如来なのです。

 開山堂

開山堂は開基者の像や位牌を祀る仏堂で、信仰の対象というよりも祖師の偉業をたたえると共に創始期の精神を維持することが目的のようです。
開山堂の遺構では、京都清水寺の開山堂である田村堂、京都上醍醐の醍醐寺開山堂、奈良東大寺の開山堂などが早い例です。
また、本山クラスの禅宗寺院には開山堂を設けている例が多いのです。
開山堂は一般に対して開かれたものではなく、開山忌など僧侶たちの儀式の場として使用されるのがほとんどです。


         8.祖師信仰の仏堂 

 大師堂(だいしどう)

聖徳太子信仰とならんで信仰の厚い弘法大師を祀る仏堂です。
真言宗の寺院に数多く造られています。
大師像を祀る仏堂を大師堂、御影を祀る仏堂を御影堂(みえどう)と称しています。

板壁に聖徳太子像が描かれている鶴林寺太子堂
(兵庫 平安時代 1112年)

重源上人を祀る東大寺播磨別所の浄土寺開山堂
(兵庫 室町時代再建)

故人の菩提を弔うための仏堂と異なり実在した人物を信仰の対象として、その人の像や位牌を祀る仏堂をここでは祖師信仰の仏堂としてとらえます。
祖師信仰の仏堂としては、開山堂、祖師堂、御影堂(ごえいどう、みえいどう)などがあります。これらは宗派によって名称も異なります。
そのほか、聖徳太子を祀る太子堂(たいしどう)、弘法大師を祀る大師堂(だいしどう)などがあります。

祖師信仰とは仏教の各宗派の開祖、創始者や高僧を仏と同じように信仰の対象とするものです。
仏教の難しい教理をを理解するよりも、実在した人物の遺徳、業績や教えを称え敬うことのほうが容易なことから、一般民衆を中心に自然発生的に湧き上がったのでしょう。

平安時代には奈良時代の大僧正行基が菩薩として貴族から民衆まで広く信仰されるようになりました。
なかでも最も信仰を集めたのは聖徳太子です。平安時代前期に書かれた「聖徳太子伝暦」が基になり、仏教の発展に努めた聖徳太子の伝説が形成され、聖徳太子への崇拝と信仰が時代とともに盛んになったのです。

また、真言宗では弘法大師が生身のまま衆上を救済するという言い伝えと共に大師信仰が全国に広まりました。このほか各宗派でも開祖、開山者など祀る風習が平安時代時代中期から始まったのです。

法然上人の御影を祀る浄土宗総本山
知恩院の御影堂(ごえいどう) 
(京都 江戸時代 1939年再建)

親鸞聖人像を安置する浄土真宗大本山
本願寺御影堂(ごえいどう)
(京都 江戸時代 1636年再建)

新義真言宗総本山根来寺の大師堂
(和歌山 室町時代)

仁和寺御影堂 (京都 江戸時代)

弘法大師の御影を祀る高野山壇上伽藍の
御影堂(みえどう) (和歌山 江戸時代再建)

夢窓疎石等を祀る永保寺開山堂
(岐阜 南北朝時代)

初代別当良弁僧正の坐像を祀る東大寺開山堂
(奈良 平安時代 鎌倉時代再建)

清水寺の本願主坂上田村麻呂を祀る田村堂
京都清水寺の開山堂です。(京都 江戸時代再建)

藤原武智麻呂の菩提を弔うため建てられた
栄山寺八角堂 (奈良時代 8世紀)

藤原不比等の一周忌(721年)に建てられた
興福寺北円堂 鎌倉時代(1210年)再建

聖徳太子の菩提を弔うために建てられた
法隆寺東院夢殿 (奈良時代 739年)

聖徳太子坐像を安置する法隆寺聖霊院
(奈良 平安時代 1184年)

弘法大師坐像を祀る教王護国寺太子堂
(京都 室町時代 1380年)

宗祖栄西禅師の墓所に建つ
臨済宗大本山の建仁寺開山堂
(京都 江戸時代)

性空上人を祀る圓教寺開山堂
(兵庫 1007年創建 江戸時代再建)

聖一国師を祀る臨済宗総本山東福寺の開山堂
(京都 江戸時代再建)

理源大師を祀る醍醐寺開山堂
(京都 911年創建 桃山時代再建)