自走する廃車体。
(平成28年12月31日公開)
 日野RC301P 日野車体工業製 昭和53年式
  The 1978 Hino rear under-floor engine bus.
RC301P驚愕の自走
平成28年6月16日夕刻、自走する駄菓子店を目撃さ
れた方、さぞ目を丸くなされたでしょう。事実、作業に
携わった私自身が信じられない光景でした。その駄
菓子店のバスは3ヶ月前には解体される運命でした。
この章では、3月半ばから6月16日の脅威の自走ま
での3ヶ月間の奮闘を紹介したいと思います。
 
 
 
 
 
平成28年3月撮影 Mar.2016.
全車輪パンク?タイヤ交換
  引き取り作業で最も難易度が高かったのがタイヤの交換でした。すべてのタイヤの空気がなく
  つぶれています。 これは20年前の店舗開店の際、『バスが完全に動くことのないように』とバ
  ルブを外して空気が抜かれたからです。 早速バルブを取り付け空気を入れます。 空気圧が
  3キロを超えると車体が持ち上がり始めます。 しかし右前タイヤはチューブが破れており空気
平成28年3月撮影 Mar.2016.
   ↓作業を手伝ってくださったF氏とK氏。
平成28年4月撮影 Apr.2016.
  圧が上がらず。さらに左後ろタイヤにいたっては、空気圧で膨らんだチューブがタイヤの裂け目
  からはみ出し破裂 しました。 結局、全てのタイヤが激しい損傷で走行に耐えるうるものはあり
ませんでした。 用意したタイヤはスペアタイヤを含め7本。3本は知人からの提供、2本は手持
   ちの2台の保存車のスペアタイヤを使用、残りの2本は新品を調達しました。 
   
 タイヤの重量はホイール付きで一本約100kg。アオ
 リの開かないミゼットへの積み込みには2人がかりで
 もかなりの労を費やしました。
 さらにサスペンションの空気は抜け切り、タイヤがパ
 ンクの状態で、見た目は超低床車のこの車、ジャッキ
がなかなか車体下に入りません。破裂した左後輪の
交換時はリアアクセル下にジャッキが入らず、ジャッキ
アップポイントを見つけるのに苦労しました。
平成28年5月撮影 May.2016.
 
平成28年3月撮影 Mar.2016.
   ついにエンジン始動
    
   タイヤ交換と同時に進めていた作業が、各部の状態を
   確認して不具合箇所の洗い出しでした。
   エンジンオイルは粘りがあり、量も正常。 サビを含ん
   いると予想していた冷却液は、なんと鮮やかな緑の
   液が出てきました。補充してみると2リットル入れた 
   時点であふれだしました。つまり20年間ほとんど漏れ
   もれナシ。燃料もプライマリーポンプで燃料フィルター
   部より抽出してみましたが正常の軽油の匂いがしま
   
す。燃料の腐りはないようです。点検の結果「もしかしたらエ
ンジンかかるのではない」と感じさせられる良い状態です。
4月29日
中古のバッテリーを繋ぎエンジン始動を試みました。メイン
スイッチをカチンと引っ張ると、インパネの赤や橙の警告灯
平成28年4月撮影 Apr.2016.
が光り、換気扇がヒューンと音を立てて回ります。その場に
いる4人の同志が見守る中エンジンキーをまわします。セル
モーターが弱弱しくウルッルッと回ります。どうやら電力不足
のようです。残念ながら、この日はエンジンはかかりません
でしたが、電気系統は生きている事が確認できました。
5月10日
平成28年7月撮影 Jul.2016.
新品のバッテリーを取り付け再びチャレンジ。この時点では
ブレーキペダルが失われており、万が一ギアが入っていて
道路に飛び出した時に備え、直前の道路の左右からの交通が途切れたときにエンジン始動。
「ウルルルルッ」重々しくセルモーターが暫く回った後に「ドゥオオオーン」「グオゥン、グオゥン、
グオゥン」とエンジンが起動しました。感動です。思ったより白煙は少なくアイドリングも安定
してます。とても18年ぶりに目覚めたとは思えない状態でした。
ブレーキバルブ
エンジンがかかり大きな希望を感じましが、サスペンションにエアーが溜まらず見た目は
相変わらず低床車です。 それは、ブレーキバルブが失われており、せっかくエンジンの
コンプレッサーで作られた圧縮空気がブレーキバルブへの配管から漏れているからです。
このバルブさえ取り付ければエアー系統の空気の漏れる箇所はなくなりサスペンションに
エアーが供給できるはずです。日野の販売店で新品のブレーキバルブの在庫を探しても
らいましたが見つからず、保存車1号車のRC321Pから取り外して使うことにしました。
6月15日 車体が持ちあがる
取り付けは、ボルトオンでいたって簡単。早速、取付後エンジ
ン起動。3分、5分と時が過ぎていきます。しかしなかなか車
体に変化が現れません。「どこかエアーが漏れているのか
」「あるいはコンプレッサーの不調か」と不安がよぎります。
運転席のマキシブレーキの作動バルブからエアー漏れ音
があります。でもほんの僅かの漏れです。
平成28年4月撮影 Apr.2016.
   諦めかけたその時、「ミシッ、ミシッ」と車体が持ち上がり始めました。そうです。この姿です。
十数年前に見ていたあのRCの勇士が甦りました。この一月前のエンジン初始動以来の大きな感動でした。
その後エアクリーナーとサイドミラーも保存一号車から取り外して来て、この車に取付けました。
6月16日ついに自走
この地は自走でたどり着き、店舗として20年。現地解体され
る運命にあったこの車、再び自らのエンジンの駆動力でで
旅立つ日が来ようとはRC301自身、そして他の誰もが想
像しなかったでしょう。事実、自走する当日に前後に車を動
かしてブレーキをテストしている時、通りがかった自転車の
女子高生が通り過ぎてから振り返って目を疑っていた姿は
印象的でした。「今、確かに少し動いたよね?」と。「そうで
す。動くのです。姫君が生まれる前から鎮座しているこの駄
菓子店。今日、発進します」と返したい言葉をこらえて最終
平成28年6月撮影 Jun.2016.
  調整をしました。結局、日が暮れてからの出発に。このRC301Pはきっと、すれ違う現役のバスや変わり
果てた町並みに隔世の感を感じながら走行したことでしょう。 しかし便乗している回送要員は、トラブル
  がおこらないよう五感に神経を尖らせ、祈るような思いで握り棒に掴まっていました。その心配をよそに当の
  RC301P自身はすこぶる調子がよく、難なく約10kmを走破。その日は帰宅してから大変よく寝ることが出来ました。
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