脳梗塞のお薬は、大まかに3種類に分けられます。ニュアンスで表現すると、@普通のお薬、A軽いお薬、B心房細動のお薬、といった感じになります。一般的には、退院後しばらく『血小板凝集抑制剤』を飲んでもらい、動脈硬化や症状の軽いケースでは、出血傾向がほとんど見られない『循環改善薬』に切り替えていくこともあります。心房細動が原因の心原性塞栓症は、原則的に『ワーファリン』が処方されます。
脳梗塞のお薬は、如何なる物でも、タバコを喫ってしまったら焼け石に水と思ってください。実際、リピーターの方は、禁煙を指示しても、守れなかった方が如実に多いのです。脳梗塞に対する、お薬の効果が微々たるものであるのに対し、タバコの影響はそのくらい大なのです。
いわゆる『普通の脳梗塞のお薬』と言われるやつがこれです。
血小板の機能を抑制させる働きがあります。血をサラサラさせるとよく言われますが、実は、血を固まりにくくさせることにより、サラサラさせているので、出血傾向が問題となります。日常的な副作用としては、ちょっとぶつけただけで皮下にすぐ紫斑ができるという主訴が多いようですが、鼻血が止まりにくかったなどという方もいます。抜歯や薬効消失は血小板の寿命である7日〜10日といわれ、手術の際、数日前から休薬しないと出血が止まらなかったり、たまたま脳出血を起こすと大きな血腫になることもあります。抜歯の際、通常は1週間前から休薬することが多いのですが、止血機能としては、3〜5日も休めば通常、大きな問題はありません。実際、脳梗塞慢性期に行われる『血管吻合術』などは、吻合部の閉塞や再梗塞などを考慮し休薬せずに施行することが多いのです。
鎮痛剤でよく知られるアスピリンですが、脳梗塞の予防薬として使われる量は、鎮痛目的で使われるものの3分の1くらいで、100mg前後です。かつては『小児用バファリン』が81mgで、脳梗塞の予防には丁度良い量であったため、この名前でそのまま処方されていました。しかし、語弊を招くなどの混乱を避けるため『バファリン81』と新たに命名されて久しくなります。『バイアスピリン』や以前、肝障害で新聞を賑わせた『パナルジン』も同系統の薬です。最近では、出血性合併症が少ないと謳われる『プレタール』、新薬である『プラビックス』などを使うことが多いようです。
血小板凝集抑制剤が当にターゲットとしているのは、動脈硬化が強く血栓が誘発されやすいような状態です。高血圧をもった高齢者で、以前ちょっと眩暈がしたとか、意識を失ったなどで脳梗塞が疑われたり、ごく軽い症状や無症状の微小脳梗塞でこのお薬をずっと飲んでいるケースが見られますが、適応は定かではありません。
かつては、『魔法の薬』などと悪口を叩かれたものの類です。高血圧をもつ高齢者なら、飲んでも飲まなくても良いという印象があったため、各社がしのぎを削って多くの薬が開発され、栄枯盛衰を繰り返しておりました。しかし、その薬効の信憑性を疑い、厚生省が関与し『臨床治験』が行われた結果、ここ十数年で淘汰されたものが現在あるものです。 『ケタス』、『セロクラール』、『サアミオン』などがあり、血小板凝集抑制作用(出血傾向)も、わずかにあるといいながら、臨床上は問題になりません。抜歯の際も、通常、特に休薬の必要はありません。数年前までは、微小脳梗塞には血小板凝集抑制剤よりも有効というデーターがありましたが、新しい薬ではまた、巻き返しをはかり、逆のデーターも出ています。 しかし、ある程度の有効性は認められており、強い動脈硬化が認められず、症状が軽いものや、上記薬との併用などにより適応となるでしょう。
心房細動による心原性塞栓症の場合、処方されます。脳内でできる血栓が血小板血栓であるのに対し、心房内に血栓が形成され、散布されるようにして各臓器に梗塞を起こすもので、むしろ繊維素(フィブリン)などの凝固機能が関係することから、『抗凝固剤』が治療薬になります。『血小板凝集抑制剤』で代用されることもありますが、70歳以下で全身状態が良好であれば、積極的な治療として『ワーファリン』が推奨されます。処方初期には、トロンボテストという凝固機能テスト(PT−INR=2〜3:70歳以上は1.6〜2.6を目標)を行いながら、薬量を調整します。しかし、実際には体調などで薬効が変化するため、1ヵ月に1回を目途に検査した方が安全です。ここが少々煩雑なところです。作用時間は48〜72時間です。
ビタミンKと拮抗することで、ビタミンK依存性の凝固因子(Z、\、])を抑えるため、ビタミンKを多く含む食品を採ると薬効が低下します。『納豆』、『クロレラ』、『ブロッコリー』などを食べてはいけないというのはこのためですが、これを言い出すと緑黄野菜が食べられなくなりますので、実質的には、とりあえず『納豆禁止』とだけ覚えておいてください。