入院したばかりの患者さんが <脳に障害を受けた場合の機能回復の経過(模式図)>
「左半身が全然動かないんです。もう、一生治らないんですか?」と卑下したり、
入院して4、5日した頃、見舞いに来られた親戚の方が突然現れ、
「入院して治療が始まったというのに、逆に悪くなっているじゃないですか。どういうことですか?」と詰め寄って来ることがあります。こういう方は、大概、入院時に同席された方ではなく、きちんとした説明を聞いていないことが多いものです。
脳の疾患といっても、外傷から疾病まで様々ですが、脳挫傷、脳出血、脳梗塞などを含め、障害を受けた脳の経過に、共通した特徴があります。
くも膜下出血は、『脳血管攣縮』という特別な時期があることと、脳そのものに障害を起こしていない、慢性硬膜下血腫や、小さな良性腫瘍などは、脳が腫れる『脳浮腫』という状態を来たしていないため、この限りではありません。
@ まず、発症または受傷から2〜3日くらいまでは状態が悪化することがあります。外傷や出血の場合、一般に24時間以内に、出血が拡大する可能性があります。また、梗塞の場合、梗塞巣が拡がることに起因し、内頚動脈系は48時間、椎骨脳底動脈系は72時間くらいまでと、言われます。
A 次に、3日〜5日くらいの時期に、更に症状は悪化することがあります。これは脳浮腫という脳の腫れが起こるためです。ピークは3〜5日頃ですが、大体2週間くらい続きます。従って、この時期はあまり良くなりませんし、症状が重い方では、ほとんど変わりません。この時期、意識障害、麻痺などがしばしば悪化し、誤嚥性肺炎、消化管出血(ストレス性胃潰瘍)、けいれん、狭心症または心筋梗塞、腎障害、肝障害などの合併症を起こす事があります。
B 2週間経過すると少しずつ脳浮腫も改善し、2週間から2ヶ月くらいまでの時期に次第に機能が回復してきます。一概に言えませんが、70歳くらいを超える高齢者では頭打ちが早期に出現します。また、リハビリに伴い、頸肩腕症候群、関節炎などの合併症が出ることもあります。けいれんの多くは発症1年以内に出ることが多く、この時期も含め、しばらく注意が必要です。回復期リハビリテーション病院へ転院し、集中的なリハビリテーションを行うものこの時期です。
C 2ヶ月から半年までは、機能回復する可能性はありますが、高齢者ほどあまり改善は見込めません。歩けるようになったら、リハビリテーション病院も退院し、通常、自宅、もしくは通院にてリハビリテーションを行います。また、視床に障害のある場合、この時期の後半くらいから『視床痛、中枢性遮断痛』という幻肢痛が出ることがあります。手足にやりきれないような重苦しさを感じたり、焼けるような痛み、ビリビリするなど、いわゆる『いたしびれ』というやつです。通常の鎮痛薬はあまり有効でなく、テグレトールなどの抗痙攣薬や、トリプタノールなどの抗鬱薬で改善することがあります。
D 半年以降では、現状維持や鉤縮予防、除痛目的でリハビリテーションをすることがあります。若年者ではまだ、機能改善することがあり、最長1年半くらいまでのびることがあります。
