脳の働きと分布について(CT図との対応:Brain CT Region of interest)

 脳の働きについては、対応する領域がかなり分かってきております。異説も多々あり、まだまだ不明の部分もありますが、当科で責任病巣と脱落症状の対応から広く知られているものを参考までに掲載します。
上段のものは、私が福島市の脳神経外科病院に勤務していた頃作り、外来で配布していたものなので、近隣の方はご覧になったことがあるかもしれません。 下段のものは、もともと私がメディカル・スタッフの勉強会用に作ったものです。

いわゆる優位半球(言語、計算など高次機能を司る大脳半球)は、右利きでは90%以上、左利きでは40〜70%が左半球であると言われます。裏を返せば、右利きでは10%未満、左利きでは15〜50%の方が、右側に優位半球があることになります(興味深いことに左利きの方の6〜15%は両側にあると言われています)。(山田康子,鈴鹿有子,樋口正法.脳磁図を用いた左右半球の機能分布に関する研究J Kanazawa Med Univ)30:235-244,2005)
下図は、優位半球が最も多い『左』であることを想定し作成したものです。

 視床(脳の中心部)については、臨床上、よく問題となる『●後外側腹側核(VPL)が関係する視床痛』についてコメントしたものですが、大脳皮質の繊維の収束部位であるため、厳密には●後内側腹側核(VPM):顔面の知覚、●前核(AN)、背内即核(DM):記憶、情動などの前頭葉症状、●前腹側核(VA)、外側腹側核(VL):運動の統制など小脳症状、●正中中心核(CM)、束傍核(PF):意識活動
と、狭い範囲にかなり複雑な領域があります。
よって、両側の視床障害では、強い遷延性意識障害(昏睡、植物状態)が見られたり、急性期の視床出血では、対側のバリスムスと言われる不随意運動(手足が勝手に動くこと)などが見られることもあります。
このあたりは専門的なことなので、割愛します。

また、右側頭葉の相貌失認(人の顔が分別できない)に関しては、一般の方々にも興味深い事象なのでプリントに載せてありますが、後頭葉の2次視覚領域:18、19野(後頭葉視覚領域:17野の周辺)が関係するという記載から、紡錘状回の側頭後頭葉移行部が重視されるという報告が主流になっています。

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<外来や病棟でCTを説明する際に渡していたプリント>
脳の働きと分布



<やや専門的になりますが新しいバージョンをこちらに作り直しました>

★ 原典のpdfファイル ★

★ pdfファイルの解像度の良い図はこちらからどうぞ、brain CT:region of interest (pdf fail) ★


CT説明図

<これを専門用語で言うとこうなります
     (メディカル・スタッフの勉強会用に作成したプリントより)>
勉強会のプリント

 ここで『相貌失認』と、ちょっと聞き慣れない言葉が出てきましたが、これは人の顔が分別できなくなる障害です。
女性であれば、自分の女房なのか、別の女性なのか服装や声を確認しない限り、分からないのです。
 「何だそれ?」
という方にお尋ねします。
 あなたは、うちのジャンガリアンハムスターのももちゃんと、ピースケと、ポンピーの顔の違いが分かりますか?
背中の模様の違いなんていうのは反則です。
 それじゃあ、ゴールデンレトリバーあたりの品評会で、誰が誰(どの犬がどの犬)か、はっきり分かる自身がありますか?
「分かる!」という方は、かなりの愛犬家とお見受けしますが、普通は肯定的なお答えはないでしょう。私も分かりませんから。
同種のものは相手の相貌から個体を判別する能力があると言います。もちろん、動物の中には視力が極端に悪いものもあり、相手の匂いなどで分別するものがいる事は周知の如くです。
 釣り目、離れ目、ちっこい目などと言っても、実際にはごくわずかの違い、人の顔で1mm違うと、かなり印象が変わります。
人は、相手の顔の、ほんの0.何mmの差を、明らかな違いとして判別しているのです。
これが分からなくなったのが、『相貌失認』というわけです。
 局在は側頭葉の下面、紡錘状回の側頭後頭葉移行部とされています。

 尚、我々脳神経外科医は、頭部の外傷、特にびまん性軸策損傷などにおいて、大脳の中心部(脳梁付近)の挫傷で、しばしば短期記憶障害(言われたことをすぐ忘れる)の症例を経験します。初稿作成時、左下図の、脳の中心部『記名力障害』の病片として、古い文献からfornix(脳弓)としましたが、ここ数年、帯状回(特に前部帯状回)が中枢実行系として作業記憶(短期記憶)、自我認識と関連していることが指摘されておりますので、クリックで出てくるPDF版では、訂正してあります(平成30年1月19日)。

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