眩暈(めまい)について

 眩暈(めまい)は、基本的に脳外科よりも耳鼻咽喉科、(脳)神経内科で扱われることが多いもので、該当各科の先生の方が詳しいと思われます。ただし、まれに『小脳、脳幹梗塞』、『聴神経鞘腫』、『小脳腫瘍』など、注意を要するものも含まれるため、こちらに掲載することにしました。眩暈の多くは恐いものではないのですが、最終的に梗塞や神経鞘腫かどうかということは『MRI』を撮ってみないと分からないことがあります。

<主な眩暈の種類>
眩暈の種類眩暈の性状時期、頻度など原因症状が似ているもの
立ち眩みフワッと、クラクラ、ときに失神立ち上がったとき、疲れているときなどに一瞬起こる脳貧血前庭神経炎、小脳腫瘍など
前庭神経炎グルグル、揺れる、フワフワなど様々、耳の症状なし風邪、疲れなどに続き、ある日突然起こり数日〜数週で徐々に改善不明、交差反応を含むウイルス感染、血流障害が関与良性発作性頭位変換性眩暈、小脳脳幹梗塞、突発性難聴、中耳炎、小脳腫瘍など
良性発作性頭位変換性眩暈(BPPV)頭を動かすとグルグル30秒〜1分回る、揺れる、傾いているある日突然、頭部外傷後に起こることも、習慣性のこともあり耳石の偏倚、半規管内結石前庭神経炎、小脳脳幹梗塞、小脳腫瘍など
メニエル病グルグル、フワフワなど、耳鳴り、難聴40歳くらいの男性に多く数ヶ月ごとに習慣性、30分〜数時間の発作内耳の内リンパ水腫前庭神経炎、突発性難聴、小脳脳幹梗塞、聴神経鞘腫など
小脳梗塞揺れる、ふらつく、嘔気嘔吐ときに呂律が回らない、手足の運動失調など高血圧の方が多く、ある日突然動脈硬化による血栓前庭神経炎、メニエル病、小脳腫瘍など
脳幹梗塞揺れる、ふらつく、嘔気嘔吐、呂律が回らない、ときに意識障害など高血圧の方が多く、ある日突然動脈硬化による血栓前庭神経炎、メニエル病、小脳腫瘍など
聴神経鞘腫フワフワ、揺れるなど半年くらい前から次第に増強前庭神経などの神経鞘の良性腫瘍化メニエル病、前庭神経炎、小脳腫瘍など
小脳腫瘍、
※悪性発作性頭位眩暈症
フワフワ、揺れる、ふらつきなど、ときに嘔吐、意識障害、※頭位による回転性数日〜数週間前から次第に増強、あるいは突発良性、悪性腫瘍小脳、脳幹梗塞、前庭神経炎など
頚性眩暈フワッと、クラクラ、グルグルなど首を動かすと眩暈がする、習慣性、肩こり椎骨動脈の循環不全、頚部交感神経節が関与良性発作性頭位変換性眩暈、立ち眩みなど

立ち眩み(起立性低血圧、脳貧血)

 脳の血管は常に一定の血流を保とうとする性質があります。大脳を還流する内頚動脈という血管は直径が5mmほどありますが、脳幹部、小脳、後頭葉を還流する椎骨脳底動脈系というのは1〜2mmと細い血管で、正常でもしばしば低灌流をきたすことがあります。この血管の灌流域には、視覚中枢、バランスの中枢、嘔吐の中枢、意識中枢があり、血圧が下がるなどして血流が悪くなると、目の前に星が降る、真っ白になる、眩暈がする、気持ちが悪くなる、失神するということが順番に起こってきます。これはまさに、お風呂でのぼせた時の症状です。お風呂でのぼせると、放熱しようとして体全体の末梢血管が開きます。すると、脳に届く血流が確保しきれなくなるという訳です。脳は心臓より40cmほど高い位置にあるため、臥位から立位になると交感神経が働いて、心拍数を上げたり末梢血管を収縮して脳血流を一定に保とうとします。風邪など体調が悪いとき、この反応が鈍くなり、しばしば症状が出ることがあり、低血圧の方では顕著です。また、ホルモンのアンバランスな思春期や、高齢で視床下部(自律神経中枢)の変性、梗塞などがあっても起こると言われます。膀胱は充満すると交感神経優位、弛緩すると副交感神経優位になりますので、体調の悪い方や、高齢者で排尿後に失神で搬送されるケースもしばしば認めます。本当の自律神経失調であれば、神経内科で処方を受けるべきでしょう。

前庭神経炎

 2、3日〜数日間の風邪症状や、体調不良に引き続き、朝起きたら突然眩暈がする、などという訴えがしばしばあります。眩暈がひどく起きられないというケースから、振り向きざまに景色が流れる、雲の上を歩いているような感じなど様々ですが、耳鳴、聴覚障害はありません。決定的な原因は分かっていませんが、風邪に引き続くことも多く、ウイルス、血流障害の関与、ウイルスに対する抗体が前庭神経を攻撃してしまう交差反応などが考えられています。経過の特徴が似ていますが『突発性難聴』は片側もしくは両側の耳鳴、耳閉感、聴覚障害を認めます。障害を受けた神経は修復されないと言われていますが、前庭神経特有の代償機能により症状自体は次第に改善します。スケートの選手が訓練により目が回らなくなるのは、この代償機能によるといわれます。眩暈は1日で消失するものから、徐々に軽減しながら2ヶ月くらい続くものもあります。多くは数日から2、3週で治ります。症状の重いものは治ったあとも、体調不良や気候の変動などの際、数日眩暈が出ることもあります。症状のある間は、メイロンの点滴や、メリスロン、セファドール、アデノシン、ケタスなどの循環改善薬、メチコバールなどの末梢神経改善薬(ビタミンB12 )などが処方されます。耳鼻咽喉科的な疾患です。
前庭神経炎

良性発作性頭位変換性眩暈(BPPV)と エプリー法

 頭部を強くぶつけた後に多いのがこのタイプですが、特に高齢者では必ずしも外傷が契機になるわけではありません。
 さきの前庭神経は卵形嚢というところにあります。この神経に『有毛細胞』というものがあり、字の如く毛の有る細胞です。この上に耳石という石が乗っており、体の傾きなどが分かる仕組みです。これらはリンパ(水)の入っている三半規管につながっています。なにかの原因でこの石がずれてしまうことがあります。すると、なんだか傾いているようだったり、フワフワした感じがします。場合によると、耳石の一部が遊離し、リンパ内に浮遊、半規管に迷入していることがあります(半規管内結石)。この場合、頭を動かすと遊離した石も半規管の中で転がり、中のリンパ(水)を動かすため、体が回転しているような強い眩暈を感じます。30秒〜1分でリンパの動きも止まり、眩暈も治まります。頭部打撲など、頭に強い外力の加わった外傷後にもしばしば認めます。これらは、2つの働きで自然治癒すると言われます。ひとつは、さきの前庭神経の代償機能です。もうひとつは、遊離した石は、動いているうちに自然と元の位置に戻るといわれています。どうしても戻らなかったり、症状の強いものには、エプリー法(Epley maneuver)という、頭を動かして石を元の位置に戻す手法があります。遊離した石は後ろ側の後半規管に落ちていることが多く、これを前方の卵形嚢というところへ戻してやれば良いのです。
 仰臥位(仰向け)で左右の横を向いた際、眩暈がする方が患側です。今、仮にこれを、右とします。顔を右45°に向け、座位から頭を少し下げるくらいに(できればベッドの端より頭を出して下げる)顔は右45°のままで仰臥位(仰向け)になります。1〜2分このままの姿勢を保ち、やはり頭を少し下げたまま今度は左45°を向きます。1〜2分このまま、さらに体を、仰臥位から左側臥位(横向き)になります。このとき、顔は左下を向いています。1〜2分経ったら、そのまま体の左下を見るようにして起き上がるのです(上向きに戻って起きない)。それぞれの体(頭)位変換はすばやく行います。直後には強い眩暈がありますが30秒くらいでおさまります。その日一日はなるべく起きていて、右(患側)を下にして寝ないようにします。午前中の早い時間にやってしまうと良いでしょう。また、2、3回繰り返しても構いません。
 もと力士だった、ちゃんこ屋さんのマスターがいらっしゃいます。ある日、もの凄い眩暈がするといって受診されました。MRIで小脳・脳幹梗塞を除外し、『BPPV』と診断、症状が非常に強いので動かせず、外来でそのままエプリー法をすることにしました。外来のベッドに、先ずその大きな体で横になってもらったのですが、ここからが大騒ぎ、「いや〜、大変です大変です!ジェットコースターに乗っているみたいです!無理です!横になれません!」と仰るところを「大丈夫ですから。」と無理に寝てもらいました。1〜2分もすると落ち着き、そのまま体位を変換、また眩暈がしますが、じき治まります。さらに体位を換え、最後はゆっくり起き上がってもらって、その日はなるべく患側を下にして寝ないでくださいと指示しました。一度で治ることもありますが、2、3回必要なこともあります。一度治っても、しばしば眩暈が起こることもあります。結局、この方は何度か繰り返していたので、やり方を覚えてもらって、症状が出たら自宅でやってもらうことにしました。

 尚、まれに、外側半規管に結石をみるものもあり、Lempert法という手技をおこなうそうです。
 いずれにせよ、これらの手技は、耳鼻咽喉科では眼振鏡というものを装着して行い、はるかに上手にやってくれます。

エプリー法(Epley maneuver)
エプリー法(Epley maneuver)

メニエル病

 これも耳鼻咽喉科で扱う疾患です。30代〜50代の男性に多く、ストレスとの関係が指摘されています。ある日突然、回転性の眩暈(フワフワ感の訴えもありがあり)、耳閉感、嘔気、嘔吐、冷汗、頭重感を伴うこともあります。以来、数ヶ月ごとに、主に季節や気候の変化、低気圧などと関連し、発作を繰り返すといいますが、一回限りのケースもあるようです。眩暈発作は数分(30分くらいが多いようです)から数時間で、発作を繰り返すうちに耳鳴り、難聴も伴うようになり、これらの症状が慢性的に残ってしまうこともあります。原因はストレスなどから何らかの原因で内耳の内リンパ液の水分調整が不良のなる内リンパ水腫と言われていますが、なぜ起こるかは不明です。循環改善剤、血管拡張剤(メリスロン、セファドール、アデノシン、ケタス)、ビタミン剤(メチコバール)、利尿剤(イソバイド)などが使われますが、症状の重い方は、『めまい外来』など『耳鼻咽喉科』の専門外来を受診してください。

小脳梗塞

 脳梗塞なのでベースに高血圧を有する方を、多くお見受けします。高齢者では、浮動性の眩暈や気分不快で、寝込んでしまう方もおり、小脳が浮腫を呈し、意識障害を伴って搬送されるケースもあります。ふらつく、立てない、手足がぎこちないといった、手足、体幹の運動失調などの小脳症状、眼振(横を見てもらうと目が横方向に振れる)、呂律が回らないなど、運動失調の症状があればほぼ確実ですが、これらは不明瞭のこともしばしばあります。MRIで除外する必要があります。
診断されたら、脳梗塞に順じ保存的治療を行います。まれに、広範な脳浮腫から意識障害を来たすと、『後頭蓋窩減圧開頭』といって小脳周囲の骨を外さなければいけないこともあり、後頭蓋窩周辺は小脳を守る筋肉が発達しているため、脳浮腫が引けた後、『頭蓋形成術』という骨を入れなおす手術は不要です。
 尚、小脳虫部(中央)の病変では、頭の位置による回転性眩暈を起こすことがあり、悪性発作性頭位眩暈症と言われます。

脳幹梗塞

 脳梗塞なので上記同様、高血圧の方がほとんどです。浮動性の眩暈、眼振(小脳梗塞参照)、ろれつが回らない、手足の片麻痺などを伴うことがあり、大きなものでは意識障害、呼吸抑制を来たします。延髄外側に限局した小さいものではWallenbrg(ワレンベルグ)症候群といって、同側顔面と対側顔面以下の温痛覚(熱さ、痛み)、同側顔面以下の圧覚、振動覚(押された感じ、震える感じ)など深部感覚(日常的にはあまり困らない感覚です)の低下を認めることがあります。小脳との連絡路があるため、運動失調など小脳症状を示す例もあります。同様にMRIが有効です。
診断が付けば、脳梗塞に順じ保存的治療を行いますが外科的治療の対象になりません。

聴神経鞘腫

 聴神経は前庭神経、聴神経、顔面神経が束になって走行しています。主に前庭神経というバランスの神経に、脳幹部を出た後、内耳孔という骨の入り口までの間で、神経鞘腫(神経の鞘が腫瘍化したもの)という良性腫瘍ができることがあります。小さいもので1cmくらい、大きくなると3cm以上になることもあります。半年くらい前から、時々浮動性の眩暈を自覚し様子を見ていたが、次第に頻度が増して、受診するケースが典型的ですが、小さいうちはCTだけではわからないことがあります。良性腫瘍なので、全摘すれば完治しますが、大きいものでは聴神経、顔面神経を巻き込み、術後に聴覚障害、場合によると顔面神経麻痺などが出ることがあります。後頭蓋窩なので術式は神経血管減圧術に似ていますが、顔面神経刺激装置など特殊な準備も必要で、当院では大学病院へ紹介しています。
最近は、大きさが3cm未満のものに対し、ガンマナイフ(放射線療法)の有効例も報告されています。

小脳腫瘍と悪性発作性頭位眩暈症

 聴神経腫瘍などと経過が似ていますが、悪性であれば数週間と経過が短く、良性であっても、小脳のある後頭蓋窩はスペースが狭いため、比較的経過が短いことが多いようです。また突然の眩暈、ふらつきで発症し、嘔吐、意識障害などを伴い、小脳、脳幹梗塞と間違われることもあります。ときに、以前からある頭位をとると眩暈がするという訴える方もいます。小脳虫部(中央)の腫瘍では、この頭の位置による回転性眩暈を起こすことがあり、悪性発作性頭位眩暈症と言われます。

頚性眩暈

 これも今のところ決定打がありません。
 ひとつは、『椎骨脳底動脈循環不全』と同じ原因のものです。脳幹部、小脳(眩暈の首座)を還流する椎骨動脈というものは、頚椎外側の骨の中(椎弓)を通っています。頚椎症で高度の変形があると、この血管はしばしば圧排され、頚部の動きとともに狭窄〜閉塞することがあります。低灌流となった脳幹部、小脳の症状で、ふらつき、眩暈が出現するのです。関連疾患としてBow hunter's(バウハンター:弓引きの)症候群というものがあります。頚椎に同様の所見があると、アーチェリー(弓道でも同じですが)を構え、的を狙っているとき、急にふらついてそのまま失神してしまうものです。低灌流が高度になると失神するのでしょう。
 今ひとつは、この訴えの多くに肩こりを伴うことから、頚部交感神経節(自律神経で頚椎の両側周囲に張り巡らされています)の関与が疑われています。もっとも、頚椎症の方の多くは肩の張り(凝り)を訴えるのでその真偽は不明です。 さらに、鞭打ち損傷、頚椎損傷、脊柱管狭窄症など実際に頚髄の圧迫や障害で起こる眩暈は、体幹の位置覚の障害(後索のことを示すと思われますが)から起こるとする説もあるようです。

  1. 脳腫瘍
  2. 脳出血
  3. くも膜下出血
  4. 脳梗塞
  5. (特発性)正常圧水頭症
  6. 脊椎症(脊柱管狭窄症)
  7. 三叉神経痛、顔面痙攣
  8. 頭部外傷
  9. 慢性硬膜下血腫
  10. 頭痛について
  11. 眩暈(めまい)について
  12. 脳の働きと分布について(CT図との対応)
  13. 脳疾患の経過について
  14. 高血圧について
  15. <番外編>知らないと世にも恐ろしい怪奇現象???とは

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