高血圧について
血圧の基準値は、その昔、年齢をパラメーターにした計算式がありました。これを使って80歳以上の方を計算すると、上が160くらいでも正常域になってしまいます。長い治験の結果、適正でないと判断され、2004年に日本高血圧学会により、基準値上限が統一(JSH 2004)されました。
これを受け、更なる検討の結果高血圧治療ガイドライン JSH 2009が平成21年1月16日に発表されました。主な特徴は、白衣高血圧、仮面高血圧などを考慮し、家庭血圧を基準値に盛り込んだこと、心筋梗塞後の降圧を重視したこと、メタボリックシンドロームを危険因子に加えたことなどです。
| 降圧目標 | 診察室血圧 | 家庭血圧 |
| 65歳未満 | 130/85 mmHg未満 | 125/80 mmHg未満 |
| 65歳以上 | 140/90 mmHg未満 | 135/85 mmHg未満 |
糖尿病患者
腎臓病患者
心筋梗塞後患者 | 130/80 mmHg未満 | 125/75 mmHg未満 |
| 脳血管障害患者 | 140/90 mmHg未満 | 135/85 mmHg未満 |
<高血圧治療ガイドライン JSH 2009より>
病院や健康診断(検診)で測った血圧が高いからといって、すぐ治療を開始するわけではありません。検診などで血圧が高めであることを指摘されたら、先ず、できれば血圧計を買って、しばらくの間、お家でも時々測り、ノートに付けてみましょう。血圧計は薬局、ホームセンターで8000円くらいで売っています。決して高価なものを求める必要はありません。精度に不安があるのなら、器具を外来に持参し、看護師さんや担当の先生にお願いし実測値と比べて見ればいいのです。
測定部位で大別すると『上腕』、『手首』、『指』で測るものがあります。『上腕』で測るのは病院でも使われており、測定値の信頼性は一番高いでしょう。問題は冬場、厚着をしていると計るのが億劫になってしまうことです。『指』で測るものは人によっては結構エラーが出ることがあります。正確さと簡便さの中庸を取って軍配が上がるのは『手首』のものでしょうか。しかし、これは測り方を間違えると20mmHgくらい高く出てしまいます。説明書をよく読んで、心臓(上腕)と同じ高さで測りましょう。
では、いつ測ったら良いのでしょう?
多くの臨床家や患者さんの意見を反映し、JSH 2009は、この問題にも答えています。
「いつも決まった時間に規則正しく測る」という人がいます。入院中のように朝、昼、晩、四六時中血圧を測っているのならそれでもいいでしょう。しかし、生活の中ではそうはいきません。仕事もあるし忘れもする。
外来通院している方で、以前、「いつも夕方7時頃測る」という人がいました。120/70前後で良好な値です。ところが外来に来ると170/100くらいと高いのです。「外来に来ると緊張してしまって上がるんです。」といつも言っておられました。「どういう時測るんですか?」と聞くと、「風呂上りに測る」と言います。実は入浴後は全身の抹消血管床が開いているため血圧は10〜20mmHgくらい下がっていることが多いのです。「それでは今度は時間を変えて、時々、午前中とか午後にも測ってみてください。」とお願いしました。次回持参したノートには、案の定150/100くらい高い値が随所に見られ、お薬を調整させていただいたのです。
血圧は一般に、日中活動時に上がり、夜間睡眠時に下がる、人によってはいわゆる『早朝高血圧』、血圧の薬を飲む前が高く、昼前になると下がってくるなど様々です。時間、行動、感情、体調によって変動するので、いつも同じ時間にだけ測るという人は、そのほかの時間帯の情報が得られないことになります。
異なる測定法による
高血圧基準 | 収縮期血圧 | 拡張期血圧 |
| 診察室血圧 | 140 mmHg | 90 mmHg |
| 家庭血圧 | 135 mmHg | 85 mmHg |
自由行動下血圧 24時間 昼間 夜間 | 130 mmHg 135 mmHg 120 mmHg | 80 mmHg 85 mmHg 70 mmHg |
<高血圧治療ガイドライン JSH 2009より>
結論は・・・「思い立ったとき、時々測る」、これでいいのです。ただし、必ず●何時に測ったか横に記入すること、またそのとき、●気になる症状(頭痛、動悸、運動後など)があれば一緒に書いておくといいでしょう。
添付されている説明書などには、『朝起きて排尿後朝食前』と『寝る前』の2回測るように書いてあるものが多いようです。しかし、これにとらわれず、何時にどんなときに測ったかという記載さえあれば、いつ測っても構いません。測定した値は、大切な御本人の臨床データですから、紙の切れ端などではなく、きちんとノートに付けて外来に持参、担当の先生に診てもらいましょう。
高血圧を長いこと放置されていた人の中には、降圧治療を始めると、一日中だるい、眠い、立ち眩みがする、などの症状が出て、人によっては起立性低血圧で失神することもあります。このようなときは、お薬を減量するか、一時中断します。そして、少しずつ、体を慣らしながら降圧、数ヶ月かけて正常値に持っていくのです。
よく血圧の高い方に「血圧が高いので、お薬を始めましょう。」と言うと、「今、運動療法をやっているのでもう少し様子を見たいんです。」とか「血圧の薬を飲み始めると、これから一生飲まなければいけないと聞くので、もう少し待ってもらえないでしょうか?」という返答が返ってくることがあります。「漢方薬はだめですか?」とか、「何で血圧を下げると良いんですか?」と聞かれた方もいました。
漢方薬を否定はしませんし、希望される方には処方もします。しかし、安全だと盲目的に信じている人には警告があります。漢方薬は自然界にある生薬であるため、強い作用のものは無いようです。しかし精製物質ではないため、いろいろな薬効成分が含まれ、何がどう効いているか分からないという不安はあります。実際、漢方薬多用者による肝機能障害もあるのです。
高血圧はなぜ下げるか?当然、血圧が高ければ、細動脈に負担がかかり、破綻すれば出血、閉塞すれば梗塞ということは、どなたでも予想が付くと思います。
しかし、ここで面白い研究報告があります。純粋に、高血圧がなぜ良くないか?という疑問に答えるべく日本の循環器科の先生が発表されたものです。それは、動脈を内張りをしている『内皮細胞』というものを薄いフィルム一面に培養し、このフィルムを引張り張力をかけると、この細胞から多くの動脈硬化の発現物質が出てきたというものでした。裏を返せば、降圧剤で血圧がコントロールされた動脈の内皮細胞からは、動脈硬化の発現物質の出現が抑制され、将来の動脈硬化を予防するということになります。実際、治療当初は薬が効かず、降圧剤を4剤も併用させてやっと150くらいに下がっていたような患者さんが、半年、一年と日を追うごとに体質が改善し、最終的には1〜2剤で130くらいにコントロールされることは、臨床上しばしば経験されることです。
実験であって、まだ、体内の現象が証明されたわけではありませんので、真偽の程は分かりません。しかし、高血圧の診断が付いたら、早期から内服治療で血圧を適正にコントロールするということの大切さを裏付ける研究であると思います。
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