正常圧水頭症は、脳室内の水(脳脊髄液)が通過障害、吸収障害をきたすことで、脳室内に水がたまり脳の機能障害が起こります。
くも膜下出血、脳室内出血、頭部外傷に続発することが多いのですが、原因のはっきりしないものを特発性正常圧水頭症といい、特に高齢者の認知症やパーキンソン症候群が疑われているものの一部にこの疾患が隠れていることがあります。
主な症状である、『歩行障害』、『見当式障害』、『尿失禁』を三徴といい、数日から数週(症例によっては2、3ヵ月)かけて進行性に悪化します。初期には頭痛、嘔吐、軽眠傾向など感冒や髄膜炎などと紛らわしいことがあります。
ひとたび診断が付けば、『脳室腹腔シャント術』といって全身麻酔による約1時間ほどの手術で、脳室から腹腔に水の通路となるチューブを通し、次第に症状が改善します。また『腰椎腹腔シャント術』という腰椎麻酔でも行え、30分ほどでできる低侵襲な方法もあり、高齢者の特発性正常圧水頭症の治療として再び注目されています。
正常圧水頭症の脳室腹腔シャント術後は、一生を通じると約一割に、シャント感染、シャント不全などのいわゆるシャントトラブルという合併症が起こると言われています。
シャントは体にとって異物であり、顕微鏡的には微小な発泡構造になっているため、チューブ周辺に細菌感染が起こった場合、抗生剤により一時的に寛解しますが通常は、チューブを一旦抜去しなければいけません。血行性に感染することもありますが、シャントチューブの経路に、けがや褥創を作らないよう注意が必要です。
シャント不全とはシャントが閉塞し、シャントが作動しなくなってしまう状態です。髄液中の蛋白質が原因になったり、脳室内の脈絡叢という血管が脳室管に絡んで起こることもあります。
頭痛が続いたり数日のうちに、嘔吐を繰り返す、次第に意識が悪くなる、熱が続くなど、症状によっては受診が必要なことがあります。
くも膜下出血後の正常圧水頭症のCT(脳室:内部の黒いところ、の拡大あり)

脳室腹腔シャント後のCT(脳室内チューブが留置され、脳室拡大も改善)

脳梗塞後に起こった特発性正常圧水頭症のCT
脳室腹腔シャント術後のCT
脳室腹腔シャント術(全身麻酔下に赤線の如く、皮下にチューブを通す)
腰椎腹腔シャント術(腰椎麻酔で背部(左図)から腹部(右図)へ皮下にチューブを通す)