| 月刊自然と人間2005年1月号インタビュー記事より イラクから「平和を問う」戦場の子どもを描く映画『戦争と平和』を語る |
1作目の『忘れられた子供たち−スカベンジャー』は「どうしたら個人が幸せになれるのか、どういう生き方がいいのか」――このことが僕にとって全然わからなかったからこそ、その答えを探すために撮影してできた作品でした。 2作目の『神の子たち』は、人間同士の絆について考えていた頃の作品です。「どうしたら家族が永遠に幸せにいられるのか」。これが僕にとっての大きな問いだったのです。 そして3作目の『戦争と平和』。この作品のテーマは、「戦争のない平和な世界になるには何が必要なのか」。僕はその答えを探すために現在ももがいています。 きっかけは2001年の9.11事件でした。どうしてこんなテロにアメリカが遭わなきゃいけないのか――それを半年間考えました。以降、アフガニスタンやイラクでの戦争のニュースや、そして10年以上変わることがなかったフィリピンの貧困の現実を目の前にして、僕はいつしか「アメリカ人の心が変わらなければ世界は変わらない」と考えるようになりました。 というのも、僕の映画はヨーロッパではさかんに上映会が催され、多くの人が観てくれていますが、アメリカではまったく受け入れられなかったのです。ロードショー公開もテレビ放映もない。フィリピンの貧困をはじめ、世界中で苦しんでいる人びとのことなんて、アメリカの人びとは見たいと思わないのでしょう。 しかしイラク戦争に端的ですが、いま世界を動かしているのはアメリカです。アメリカ人が戦争の現実に目を向けて、アメリカ人がアメリカを変えようと思わなければ世界は変わらない。だから何としてもアメリカ人に見てもらえる映画を製作しようと決意したのです。
戦争直前のバグダッドで 2002年の初夏から今までアフガニスタンに3回、イラクに4回ロケに行きました。とくに印象的なのは、イラク戦争直後のイラクの現状です。 03年2月、イラクに対する攻撃を阻止しようという数千万人の反戦の声が世界中で溢れ出し、世界中から、数百万の人びとが自分自身の命をかけて「人間の盾」としてイラクに行くことを知りました。僕は直感的に「人間の盾として欧米人や日本人などが1000人集まれば今回のイラク戦争は止められるかもしれない」と思い、その一部始終を映像に撮るため、3月12日急遽イラクに向かいました。 しかしバグダッドで見たものは、50人の「人間の盾」の人びとでした。他の人たちは盾となる配置場所をめぐりイラク政府と喧嘩別れして出国してしまっていたのです。僕は「この人数では戦争を食い止めることは無理だろう」と感じました。イラク政府の徹底した情報管理によりほとんどまともな撮影ができず、ついには命の危険も感じ、開戦直前の3月17日にイラクを出国したのです。 イラクの人びとは逃げることもできずに、恐怖と緊張感の中で開戦を迎え、極めて不安定な環境の中で生きていたと思います。またイラク人だけではなく、アメリカ軍にもたくさんの死者が出たし、現在も心に傷を負った人たちが絶対に消せない悲しみに沈んでいると思います。僕は今、戦禍のイラクに滞在できなかったことを後悔しています。そこでしか感じられなかったであろうことを体験できなかったことを痛烈に悔やんでいます。爆音を聞きながら、人びとは何を考えたのでしょうか。自分のことか、家族のことか、社会のことなのか。諦めたのか、死を覚悟したのか、それとも・・・・・。僕は戦争を体験してしまったイラクの人びとと米軍の若者たちに問いたいと思います。 「戦争とは何だったのか?」「平和になるためにはどうしたらいいのか?」と。 アメリカの人びとは何を思うだろう 米軍の捕虜や死体の映像をテレビで放映しなかったアメリカのメディアは、そしてそれを見ないまま戦争に関わることになってしまったアメリカ国民は、今、何を思うのでしょうか。僕は戦争後もバグダッド市内で撮影取材をしてきました。米軍による激しい空爆攻撃はほとんど終わった後でしたが、主な政府関係の建物や、病院、学校などは略奪に見舞われ、焼け落ち、廃屋と化していました。金持ちのスーパーマーケットの棚からは、食料、水、生活用品、ありとあらゆるものが奪い去られていました。戦争が生む被害は、爆弾や銃だけでは終わらないことを思い知らされました。 戦後、バグダッド市民はよく「フセインも嫌だ。ブッシュも嫌だ」と言います。そんな住民たちを前にすると、サダム・フセインの独裁恐怖政治が崩壊し、人びとが自由に発言し出したことは、明るい兆しにも見えてきます。しかし、イラクの戦争で傷ついた子どもたちは死を目前にして何を思ったのか。そして残された父や母、兄弟たちは何を考えどう行動して、その苦しみから立ち直っていったのか・・・・・そんな人びとも撮影していくつもりです。僕はこれからとことん「戦争と平和」について悩み苦しみながら、戦争を食い止めるために、そしてイラク住民のためになる映画を創る決意です。(インタビュー・編集部) |
| ドキュメンタリー映画「戦争と平和」 監督四ノ宮浩 |
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