インフルエンザ治療薬のタミフルについて

&&大久保医院新聞第80号、第81号の内容を転写しました。

★内容

1)新聞報道(平成17年11月):タミフルの重大な副作用について

2)日本は、タミフルの処方量が飛びぬけて多い原因について

3)タミフルはインフルエンザの万能薬か

4)タミフルの副作用報告

5)大久保医院でのインフルエンザの治療方針

6)タミフル服用時の注意点

 1)新聞報道(平成17年11月):タミフルの重大な副作用について

 インフルエンザの治療薬として広く使用されている抗ウイルス薬:タミフル(薬品名オセルタミビル)の副反応に関して11月に新聞等で報告され話題になりました。

「インフルエンザ治療薬タミフルを服用した日本の子供の死亡や精神神経症状の報告が、米国などと比べ突出して多い」と報道されました。このことに関して、製造元のスイス・ロシュ社は11月18日、日本でのタミフル流通量の多さがその理由のひとつであると弁明しました。

ロシュ社によると、過去5年間に日本で約2400万人がタミフルの処方を受け、この処方量は世界の75%を占め、このうち子供は約1200万人で、使用量は米国の約13倍に上ったとのことです。

 

2)日本は、タミフルの処方量が飛びぬけて多い原因について

 インフルエンザが日本に特別に多く流行するのでしょうか。否です。インフルエンザは日本にのみ流行する特有な病気ではありません。世界各国に毎年流行しており、日本以外の世界の国の患者総数は、日本のそれよりはるかに多いです。それにもかかわらず、大量のタミフルが処方されているのは、以下の2つの日本の医療環境の特異性と断言せざるを得ません。

@医者が、安易にタミフルを処方すること、

A患者さんがタミフルの処方を強く望むこと

欧米では、「インフルエンザには安静」が常識で、タミフルのような「抗インフルエンザ薬」は、感染症などの合併症の危険性が大きくなる免疫系が弱っている人達、高齢者や慢性の病気などの要因を持つ人達以外には、ほとんど使われていません。

 

3)タミフルはインフルエンザの万能薬か

 インフルエンザ罹患後48時間以内にタミフルを服用すると、発熱期間を1日短縮することが分かっています。タミフル服用で2次感染が減少するか、インフルエンザ脳炎脳症が減少するかは分かっていません。

 人間の身体は「免疫系」の働きによって、インフルエンザウイルスを撃退します。タミフルは、インフルエンザウイルスの増加(複製)を抑えることによって、「身体の免疫系」がインフルエンザに対抗する抗体を作り出して、それを撃退するまでの時間を短縮するだけなのです。別の言葉で表現すれば、タミフルには、直接ウイルスを殺す作用はなく、自己の防衛力(抗体産生力)で、インフルエンザウイルスを殺菌しているのです。

 タミフルを服用しなくても、健康な個体では、自己免疫防御力を最大限応用すれば、1峰性または2峰性の発熱で1週間以内にインフルエンザは自然治癒します。

 

4)タミフルの副作用報告

2001年2月より2005年3月末までに発売元の中外製薬より厚生労働省へ報告されたタミフルカプセルの副作用報告は、704例で、又2002年7月より2005年3月末までに発売されたタミフルドライシロップにおける副作用報告例は96例です。

副作用のなかで【重大な副作用】 [その他の副作用]として、添付資料に掲載の有害事象は、年代順に以下の表の如くです。

 

【重大な副作用】  [その他の副作用]

2001年12月

[その他の副作用]黄疸

2002年1月

[その他の副作用]鼻出血、結膜炎等

2002年11月

【重大な副作用】ショック、アナフィラキシー様症状、肝炎、肝機能障害、黄疸、皮膚粘膜症候群、中毒性表皮壊死症

[その他の副作用]幻覚、興奮、振戦、血尿等

2003年7月

【重大な副作用】急性腎不全、白血球減少、血小板減少

 [その他の副作用]蕁麻疹、紅斑、血便、妄想、譫妄、痙攣、嗜眠、発熱、低血糖等

2004年5月

【重大な副作用】肺炎、精神神経障害(意識障害、譫妄、幻覚、妄想、痙攣等)

 [その他の副作用]上室性期外収縮、心電図異常、眼の異常(視野狭窄、霧視、複視、眼痛等)

2005年7月

【重大な副作用】出血性大腸炎

[その他の副作用]動悸、皮下出血、浮腫

【コメント】副作用をおこした個々の症例報告が公開されていますが、それを読みますと、タミフルと同時に他の薬剤も併用されているものが多く、表の副作用症状は、タミフル単独の副作用とは断定できません。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

5)大久保医院でのインフルエンザの治療方針

(1)インフルエンザに罹患していると思われる患者さんが来院した際は、

症状出現6-12時間以内のときは、太陽病期の漢方薬(麻黄湯、桂麻各半湯、葛根湯)で半日〜1日経過を見ます。

症状出現6-12時間以上の場合は、インフルエンザ迅速テストで確定診断をします。このテストでインフルエンザが陽性の場合は、以下の2つの治療方針があることを患者さんに伝えます。

@ タミフル単独の処方

タミフルの副反応(小児の場合は精神神経症状を含む)、タミフルの効果(発熱期間の1日短縮など)を説明し、服用に同意なら、タミフル単独を2日分処方し、翌日に来院していただきます。

翌日、タミフルの効果が良好なら(解熱傾向)、1日分を追加します。解熱後に上気道の症状(咳、咽頭痛、頭痛など)がつらいようでしたら、漢方製剤を併用します。

タミフルの処方は原則として3日とします。

A 漢方製剤単独投与

タミフルの服用を望まない場合は、太陽病期の薬(時には太陽・少陽中間期の薬)の1日分の単独投与で治療を開始し、翌日来院させます。

太陽病期の症状が強く、発症48時間以内なら、タミフルの処方を考え、処方を望むか尋ねます。タミフルの服用を望むなら3日分タミフル(時に漢方製剤の併用)を処方します。タミフルの処方を望まない時は、漢方製剤治療下での以下の典型的なインフルエンザの熱型表を示し、今後の経過の予想を説明します。

なお@Aの治療で、2峰性発熱を呈した時は、CRPを測定し、それが高値のときに抗生剤を併用します。

 

6)タミフル服用時の注意点

1)      タミフルの薬理作用は、インフルエンザウイルスの増殖を抑えることにあり、菌を殺す作用ではないことを理解する。

2)      ウイルスを殺菌しているのは、生体に備わっている防衛・免疫力です。

3)      発熱(高熱)は、生体の防御・免疫力を高めるため重要な作用をしているので、インフルエンザを発症したら、発熱(高熱)を誘導し、その熱に耐える。解熱剤の使用は避ける。

4)      総合感冒薬(ルル、PL顆粒など)は、解熱剤が中心になっているので使用しない。

5)      発症したら、最低3日間は、安静にし、暖かい食事・飲み物を取り、防衛力を高める。

6)      服用後に表に示したような副作用と思われる症状が出たときは、直ちに服用を中止する。

7)      服用後の異常行動の報告があるので、服用後最低1時間は注意深く見守る。