子どもの権利条約はいま?     三宅良子・DCI日本支部

                        (子どもの権利のための国連NGO)


 今年は子どもの権利条約の国内における実施状況について、「第三回政府報告書」が国連子どもの権利委員会に提出される年です。政府は月には報告書を出すと公表していましたが、今になっても未提出であるばかりか、いつ提出されるのか判然としない状態です。

 どうしてこのような状態に成ったのか、二つぐらいの要因が考えられます。一つは、与党単独で衆議院を通過させた「教育基本法改定案」の内容です。さらに、特別委員会でも議論されたいじめ問題、高校の未履修問題(中学校にもあるとか)、という重大問題との関わりです。これらについては、すでに子どもの権利委員会の回の勧告(九八月、〇四月)に含まれていました。したがって、改定教育基本法や浮上している重要問題が、子どもの権利条約や「勧告」と整合しているのかどうかが問われていると考えられます。

このような議論は全くなされないままに強行採決となったのですが、子どものための教育からお国のための教育に変えられる「与党改定案」が、子どもの権利条約や「勧告」と整合するはずはありません。さらに、未履修やいじめ問題の根っこにある「過度の競争の教育」については、「勧告」は回とも「最重要課題」として日本政府に改善を求めているのです。これを全く無視してきたのがほかならぬ日本政府なのですから、国連への報告書にどのように書くのか、当惑しているに違いないと推察されます。

つは、「外務省は子どもの権利条約の報告書を出すな!」「子どもの権利条約を廃棄せよ」などと声高に叫ぶ「児童の健全育成を守るNGOネットワーク」が誕生し、これと呼応するように、月には豊島区の子どもの権利条例制定に反対する自民党の区議団が、「日本は国際的には子どもの権利、国内的には健全育成」などと明記したニュースを全戸配布しました。又月には日野市でも同様な事態が生まれ、「権利条例は親子関係の破壊、学校秩序の崩壊につながる」というような文字が裏表のチラシにびっしりです。上記のような言い方は、教育基本法の改定を推進する人々の主張そのものであり、「権利」を曲解しているとしか考えられません。では、子どもの権利条約の言う権利とはどんな内容なのでしょうか?

子どもが成長・発達するためには何が必要なのか、その鍵は子どもの権利条約第十二条の「意見表明権」に内包されています。この十二条の「意見」(原文はview)は、赤ちゃんの産声が出発点です。赤ちゃんの泣き声は、「おなかがすいた」などなど胸のうちの思いや願いを表しています。年齢が上がるにつれて身振り手振りや言葉となっていきますが、その本質は同じです。だから、十二条とは子どもが自分の思いや願いを表せる権利であり、表明された思いや願いは親や先生をはじめ身近なおとなに受け止めてもらえる(尊重される)権利です。言いかえればありのままの自分を認めてもらえる権利です。例えば子どもが「ねえねえ」とサインを送ると「なあに」と応えてもらえる、その安心と信頼の人間関係のなかで、はじめて子どもは自分らしく成長・発達できるのではないでしょうか?

意見表明権の保障の重要性は二回の「勧告」にも明記され、「子どもを権利の主体にする」という意味は、上記のような人間関係が結べる日常が保障されることであり、自分らしく成長・発達する権利が保障されることです。改定教育基本法案の先取りのような競争と管理・監視の生活の中では、安心と信頼の人間関係は破壊されます。これは子どもが自分らしく成長・発達することを奪うものであり、まさに子どもの権利はないがしろにされてしまうのです。このような条約の理念を、バッシングが盛んないまこそ多くの人々に伝えることが重要です。同時に第三回政府報告書にたいする市民・NGO報告書を書いて、日本の子どもやおとなの実態を国連の場で明らかにすることが強く求められています。

市民・NGO報告書については、子どもを守る会にお問い合わせください)