機関紙「子どもを守る

 

連載 ここから希望がC

―「歴史教科書」の採択結果からー

日本子どもを守る会

「子どもを守る」

「2005年12月号」

  

この夏、はじめて靖国神社の歴史資料館「遊就館」に行った。在日の中国人研究者の友人から「見終わって館を出たとき、気分が悪くなってうずくまってしまいました。」と言われていたが、さもありなん、と思った。私も「この道はいつか来た道」をたどる想いだったが、まわりの若い人達がそこで「健康な会話」を交わしているのを耳にして救われたような気分にもなった。

数日後、扶桑社の市販本『新しい歴史教科書』を買い求めて読んでみた。4年前のものより形態においても記述の仕方などにおいてもたしかに工夫が重ねられており、内容にさえたち入らなければ「いいじゃないか」という判断がなされる可能性がある、と感じた。扶桑社と「つくる会」の側からの目標は10%の採択率に迫る、ということのようだった。しかし、結果は「歴史」では0.39%、「公民」では0.19%の採択率にとどまった、という。この事実をどう考えたらよいのだろうか。

栃木県の大田原市や東京都の杉並区、一部の養護学校、中・高一貫校、私立中学校の採択には行政権力や「遊就館」的歴史認識が反映した結果だったが、基本的には草の根の運動に支えられた「良識の勝利」だった、と言えよう。遊就館や扶桑社の教科書における歴史認識は日本国憲法・教育基本法のそれに挑戦するものであるのだから、採択結果は民主主義の砦が健在だったこと、今後への希望を示した。

しかし、気にかかったこともあった。それはあの歴史教科書の採択率が10%にとどかなかったら、出版社は編集・出版を断念するといううわさが、まことしやかに流れたことである。事実はそうではなかったのだ。「つくる会」も扶桑社も「4年後に3たび挑戦する」と明言したのだから。(中野 光)