Vol.6 オリックスと近鉄合併における問題点


 来季もしくはそれ以降に1リーグ制に移行かと思われた矢先に、ライブドアによる近鉄球団買収表明など、全く先の読めないプロ野球界だが、オリックスブルーウェーブと大阪近鉄バファローズが出資比率8対2で合併することだけは決まった。ここでは合併に関することだけに絞って考察していきたい。
合併に当たってはくだらないものを含めて、次のような問題があげられると思われる。
1.本拠地をどこにおくか
2.球団名をどうするか
3.保有選手枠をどうするか
4.ファームをどこに置くか
5.ユニフォームのデザインは
6.永久欠番の扱い

1.本拠地をどこに置くか
 オリックスは神戸市にあるヤフーBBスタジアムを近鉄は大阪ドームを本拠地にしている。出資比率からすればヤフーBBスタジアムを本拠地とするのが自然だし、大阪ドームの年間10億円に対して9000万円という安い使用料も魅力である。しかしそれでは莫大な建設費を要した上に維持費も高額で赤字に悩む大阪ドームの黒字化はほぼ絶望的になる。その救済のためにもやはりここは大阪ドームを本拠地にするしかないだろう。大阪ドームは多目的ドームのため必ずしも野球の観戦に適しているとはいえないものの、何といっても雨天中止がなく、少々場末にあるとはいえ大阪のキタとミナミの中間に位置し、地下鉄鶴見緑地線とJR大阪環状線の駅から歩いて10分以内と交通の便がいいのは魅力だ。少なくともこの点はヤフーBBスタジアムは敵わない。ヤフーBBスタジアムが例えば広島市民球場のように老朽化していれば、合併球団はそこから完全撤退していただろう。しかしヤフーBBはプロ野球の常打ち球場としては唯一の内野にも天然芝が敷かれた球場で、フェンスも低く、野球を観戦するには日本でも最高の球場である。神戸中心部から地下鉄で一山越えた郊外にあってアクセスは悪いものの、総合運動公園駅のすぐそばで不便さはない。
 結論としては平日のナイターは大阪ドーム、休日のデーゲームはヤフーBBを使用するのを原則とするべきだろう。現在の近鉄球団がやっているように大阪ドームなら真夏でもデーゲームは可能だし、ヤフーBBでナイターをしても夏休みなら集客は問題ないはずだ。過去から現在まで阪急時代を含むオリックス、近鉄両球団は色々日程を工夫し、集客に努めてきた。しかし観客動員は阪神タイガースの圧倒的存在感の前に毎年ことごとく完敗していた。その阪神タイガースは球団合併の話が持ち上がると「地域独占興行権(フランチャイズ)はひとつの地域のみ。ふたつの本拠地は認めない。」と不快感を表していた。それを言うなら現在の状況でも、オリックスと近鉄は阪神タイガースのフランチャイズを侵していることになる。タイガースとしては合併によって選手層が厚くなって、戦力が強大化する新球団を恐れているのだろうが、筆者は簡単にタイガースの人気が落ちるとは思えない。一応本拠地は大阪ドームにし、フランチャイズは大阪市とするが、甲子園と同時に試合をしないことを条件にヤフーBBの使用を認め、タイガースが高校野球のために甲子園を明け渡している期間中は大阪ドームの使用を認めるということで収めるのではないだろうか。
それにしても選手にとっては涼しいドームと天然芝の球場を楽しめるのは、なかなかの魅力ではないだろうか。各球場にとっては試合数が減少するため、経営的に苦しくなるのは仕方がないが、球団にとっては今後の新人選手獲得にも好ましい影響を与えるはずで、それは戦力強化→人気上昇→観客動員向上という好循環につながるはずだ。
結論:本拠地は大阪ドームただし限定的にヤフーBBも使用

2.球団名をどうするか
 過去球団の合併における代表的な例としては昭和32年2月にパシフィックリーグの高橋ユニオンズと大映スターズが合併して大映ユニオンズになり、同年11月にさらに毎日オリオンズと合併して毎日大映(大毎)オリオンズとなっている。毎日大映と称しているが実際は毎日の関与はほとんどなく大映の永田オーナーの個人所有といってよかった。これを見ると経営母体がその名を継承し、買収される側の愛称名を残すという図式になっている。もうひとつは昭和28年2月にセントラルリーグの松竹ロビンスと大洋ホエールズが合併し「大洋松竹ロビンス」となり、翌年には「洋松ロビンス」を経て、さらにその翌年には大洋ホエールズとなっている。これは松竹が経営から引いてロビンスを名乗る必要がなくなったからである。これからすると今回のオリックスブルーウェーブと大阪近鉄バファローズの合併では「オリックスバファローズ」とするのが自然である。オリックスは全体の8割を出資するのだから、オーナーの社名を名乗るのが当然であろうし、大阪ドームを本拠地にするのなら愛称名はみなと神戸のブルーウェーブより、バファローズの方が受け入れられるだろう。また実際に現在でもオリックス球団より近鉄球団の方がファンの数は多いし、この程度のことをしないと近鉄ファンは納得しないし、そうしないと今後のファン獲得が難しくなって、経営もじり貧になる可能性がある。一部で報道されていた新聞記者が勝手に書いたのであろう「大阪ダイアモンドバックス」といった全く新しい愛称は同様の理由で却下したい。
球団名は「オリックスバファローズ」でいいとして、筆者が気になっているのは、通算優勝回数はどちらを採用するのかという点である。高橋ユニオンズや大映スターズは弱小球団でそのような問題は発生しなかった。松竹ロビンスは昭和25年に優勝を果たしているが、前述のように経営から手を引いたことで、大洋ホエールズの優勝回数には含まれていない。しかし近鉄バファローズは日本一こそないものの4度の優勝を果たしているし、オリックスブルーウェーブは日本一を含む2回の優勝、さらにオリックスの前身である阪急ブレーブスは7回の優勝を果たした強豪球団である。もし今後優勝することがあれば「バファローズとしては5回目、オリックスとしては3回目、阪急時代を含めると10回目の優勝」という長たらしい説明が必要であろう。
結論:球団名は「オリックスバファローズ」

3.保有選手枠をどうするか
 球団合併しても、両球団の選手をそのまま引き受けるのでは、経営上不利で合併する意味がない。したがって新球団がこれだけは必要という選手を確保して、残りを他球団に分配することになる。オリックスと近鉄が提案した案は必要な選手(プロテクト選手)を28人とした。これは1軍のベンチ入り人数に相当する。ただし今年オリックス、近鉄に入団した新人13人が含まれる。これは根来コミッショナーの要望と読売・渡辺オーナーの意向によるものだ。非プロテクト選手は「救済ドラフト」という形で、残り10球団と新球団がウエーバー制で1人ずつリストアップする。ウエーバー順は昨年セリーグ最下位の横浜、パリーグ5位の日本ハムからセ、パ交互で、2巡目まではオリックス、近鉄は除く10球団で行う。3巡目から新球団も参加して3、4巡目のトップに入り、特例で複数選手を指名する。ドラフトは4巡目で終了。リストアップされなかった選手の中に欲しい選手が残っていれば他球団は任意で獲得でき、最終的には新球団が引き取る。
 確かにこのようにすると選手の雇用が確保できて、いいことずくめのように思われる。パリーグ理事会では承認されたが、セリーグからは異論の声が相次いだ。28人から13人を引いた15人ではいいとこどりしすぎるというのである。球団経営に負担になる実力不足の選手を押しつけられることになる他球団が不満を表明するのは無理もない。しかし1リーグを前提とするには実力のある選手が残るという優勝劣敗が原則だ。レギュラーを目指して頑張っている選手には申し訳ないけど、そうしなければ球団経営は成り立たないのが現状だと理解するべきだ。
 増えた選手についてはファーム球団を別地域に増設することで救済してはどうだろう。現在、ファームは東のイースタンリーグと西のウェスタンリーグと別れて活動している。これを例えば、読売が西日本のどこかに本拠地を置くウェスタンリーグのチームを設置する。仮に1リーグ10球団とすれば、各球団が両地域にチームを組織すれば、ファームは20チームできることになる。もちろん選手年俸は下がることになるが、それでも野球をやってみたいという選手はいるはずだ。日本は優れたアマチュア野球の組織を持っており、競技人口の裾野が広い。地方の松山、仙台、富山などプロ野球の空白地帯に球団を置けば、地元の活性化にもつながるし、新たなファンを掘り起こすことが可能だ。テレビ放映もされないし、人気選手もいるわけでないので経営は楽ではないだろうが、それでも年俸が抑えられるし、ファーム球団に関しては、近鉄で反古にされた命名権を導入してスポンサーになってもらえばいい。
 また社会人野球との連携も深めるべきだ。社会人野球を取り巻く環境は親会社のリストラで厳しいものがあり、かつて人気を誇った都市対抗野球も世間の注目度が下がるばかりだ。しかしシダックスが野村元阪神監督を迎えて、一気に注目度を増した。それと同様、力の落ちた人気選手を雇用することにより、社会人野球に目を向けるファンの数を増やせば、凋落気味の人気を回復させることができるのでないか。選手にとっても高額年俸は望めないものの、独立してビジネスを立ち上げたり、解説者やコーチにお声を掛けられなかった選手にとっては、安定した収入源となるだろう。
 それにしても選手はともかくコーチやパリーグ職員は救いようがない。これはやむ得ない。
結論:ファーム球団を増設して雇用の確保を

4.ファームをどこに置くか
 これは明確に神戸に置くことになろう。つまりオリックスの2軍であるサーパス神戸を残し、藤井寺の近鉄2軍は廃止となろう。藤井寺球場はもともと近鉄の所有で大阪ドームに移転前は本拠地だった。周辺住民への配慮でナイター設備がついたのは近年のことだし、騒音防止の観点から鳴り物による応援は禁止されていた。藤井寺球場に行くにはJR天王寺駅の道路を隔てた反対側にある阿部野橋駅から近鉄南大阪線に乗るのだが、どの電車に乗ればいいのか知らない大阪市民は意外に多かったものだ。そんな藤井寺球場も老朽化が進み、2軍の練習場所としても適当でなくなってきた。移転先としては東大阪市内の近鉄沿線や、より広い場所を求めて南海沿線のりんくうタウン周辺まで考えていた。だが合併によってそんな苦労をする必要がなくなった。オリックスの2軍はヤフーBBスタジアムの横に立派な2軍用の球場があり、選手寮も比較的設備が新しい。周りは緑が多くて環境もいい。現在サーパス神戸はあじさいスタジアム北神戸という設備はいいものの交通不便な球場を主として使用しているが、使用料さえ問題なければヤフーBBを積極的に利用した方がより実戦的な練習ができるだろう。また穴吹工務店との契約が切れたのだから、サーパス神戸を名乗らずとも、出資している近鉄の名を出してもいい。ただ近鉄ブルーウェーブではややこしいだけだし、近鉄パールスにしてもオールドファンに喜ばれるとは思えない。別に愛称はかならず必要なものではないから、「近鉄神戸」でもいいと思うし、景気が回復しつつあるのだから、新たなスポンサーが出現するかもしれない。
結論:ファームは神戸に置き新たなスポンサーを募る

5.ユニフォームのデザインは
オリックスブルーウェーブのユニフォームは球団創設以来、青と黄をチームカラーにしている。アメリカのCI専門会社に依頼したというそのデザインは評判がよく、プロ球団の中でも上位にランクされる出来の良さだった。イチローがアメリカに去ってから、目先を変えようということか、レトロ調となり胸にラインが入り、ズボンのラインも細くなった。数字も丸文字が採用された。筆者の個人的な意見を言えば、このデザインは改悪だった。前のデザインが持っていたスマートさがなくなってしまったからである。やるならズボンのラインをやや細くするだけでよかった。
大阪近鉄バファローズは大阪ドームに移転してから、現在の水色とオレンジを配したコシノヒロコ氏がデザインしたユニフォームを使用している。ところがこのユニフォームは「まるで台湾プロ野球やん」と評判が悪い。藤井寺時代の紺赤白のトリコロールのユニフォームが懐かしい。
 オリックスのコーポレートカラーは紺に黄、それに赤である。このカラーを優先使用して、現在のブルーウェーブのユニフォームを基調にしつつ、バファローズの旧カラーである紺と赤を使用したユニフォームとするのがいいだろう。メジャーリーグのインディアンスのようなデザインが個人的にはいいと思う。それから帽子のマークは当然あの岡本太郎デザインの猛牛マークを採用するべきである。
結論:オリックスカラーを優先しつつもインディアン風を目指す

6.永久欠番をどうするか
 日本では球団譲渡が行われた場合、その前身球団の歴史は抹殺される伝統がある。これはダイエーホークス、オリックスブルーウェーブのホームページを見ればわかる。南海ホークス、阪急ブレーブスの歴史については一言も述べられていない。それどころか、「福岡ダイエーホークス株式会社発足」あるいは「オリックス野球クラブ発足」と書いているだけで、「南海ホークスを買収」あるいは「阪急ブレーブスから譲渡」とは書かれていないのである。このように日本では親会社の意向が強く作用され、実際の現場では前身球団の少なからず伝統を受け継いでいるにもかかわらず、それを無視しようとする傾向がある。
 ところで近鉄バファローズの背番号1はパリーグ唯一の永久欠番となっている。すなわち300勝投手鈴木啓示の背番号である。これは新球団でも継承されるのだろうか。おそらく前述のような理由から抹殺される可能性が高い。しかしこれでは鈴木氏に対して失礼といわざるを得ないだろう。鈴木氏が故人ならそれもできようが、未だ解説者として現役なのである。けれども「永久欠番を取り消しても構いませんか?」と本人に懇願すれば、内心苛立ちを覚えつつも、了承することだろう。
 しかしそれでは面白くない。ここからは筆者の趣味としか言いようがないが、永久欠番の追加を希望する。すなわち鈴木啓示氏の1に加えて、かつて阪急ブレーブスに所属し世界の盗塁王福本豊氏の7、オリックス時代に7年連続で首位打者を獲得し、現在シアトルマリナーズで活躍中の世界最高の右翼手イチロー氏の51のふたつである。福本氏の7については彼の現役引退後もしばらく欠番扱いだった。イチローが年間210本というとてつもない安打数を記録したときに、球団は背番号を51から7に変更することを本人に打診した。しかし謙虚なイチローは「まだそのような偉大な先輩の域にない」とその申し出を断った。このまま欠番になるのかと思いきや、その後、横浜ベイスターズから新藤選手がFA移籍してきた時に、なんと彼の背番号は7であった。十分な契約金を用意できないオリックスにとって、準永久欠番を彼に与えることで誠意を見せたかったのであろう。しかし新藤選手は全くの期待はずれの成績、というか本人の実力がこの程度だから仕方がないのだが、昨年限りで解雇された。
 こういういきさつだから7は難しいにしても、せめて1と51は永久欠番にしてもらえないだろうか。合併に当たってただ強いチームを作るだけでなく、阪急、オリックス、近鉄のファンを取り込みかつ満足されるこのような施策は是非必要である。

結論:鈴木啓示(近鉄)の1、福本豊(阪急)の7、イチロー(オリックス)の51を永久欠番とする
2004年7月4日筆


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