普通、25年間も同じことに集中
していれば、相当なレベルに達していても不思議ではない筈なのだが、私は未だに素人に毛がはえた程度で、免許皆伝には程遠く、全く情けな
くなる。とはいえ25年間、絶えず新たな
感動を与え続けてくれたサシバ、そして今なお尽きることのない興味を与えてくれるサシバという名の鳥に出会えたことに、心から感謝したい。
なお蛇足であるが、私が初めてサ
シバに出会ったのは、25年よりもはるかに前のことである。今から33年程前、千葉県の金谷にある鋸山に登ったとき、山頂に50
羽程度のタカ柱が出来ていたのをはっきり記憶している。ただ当時サシバはあくまでも日本に生息する580種の鳥の中の一つに過ぎなかった。
[世の中に絶えて桜がなかりせ
ば、春の心はのどけからまし」と在原業平は新古今和歌集で読んでいるが、「世の中に絶えてサシバがなかりせば」私は長い冬のトンネルがら、永久に抜け出せ
ないような気がする。今年もサシバの春がやってきた。サシバにはまだ一羽も出会っていないが、大自然の光と影のバランスのなかに、サシバの存在を意識でき
るような状況、それがサシバの春なのかもしれない。
つまらない前置きが長くなった が、今年はこれというテーマは設定せ ずに、決して無理はしないで、気の向くままに、春のサシバに迫って見たいと思っている。
昨年は春に25羽、秋に146羽
のサシバを観察している。数多く見るのが、目的ではないが、例年のことながら、このバランスには全く納得がいかない。無から有が生じない限り、春も秋の三
分の二程度の数のサシバは必ず通過している筈である。見落としているのは,高空か、ルートか時期なのか? これだけ解明の糸口が見当たらな
いと、夜中に上空を飛んでいる可能性だってありえない話ではないように思えてくる。
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3月16日(月) 晴
10:15−11:15 笛田公
園に、今シーズン初めて行ってみた。3月16日と言えば、私の記録で過去にもっとも早くサシバを観察した日である。この日現在、春のサシバを観察している
のは、今年
は徳島
と岐阜の二ヶ所しかないようだが、いずれもサシバはまだ確認されていないようである。もっとも過去においても、西日本のどの観察ポイントでも確認されてい
ないのに、サシバは鎌倉に現れるというケースは多い。この日は気温も15度程度で、ほぼ無風であってサシバが突然表れても不思議ではない条件を満たしてい
たが、結局一羽も確認することは出来なかった。公園にはカワラヒワとツグミが多く見られたが、トビ以外のタカ類は見られなかった。
久しぶりの観察で、目が疲れ、双眼鏡がやたら重たく感じられたが、とにかく今年もフィールドに立つことができたことは、嬉しいことである。
3月18日(水) 晴
この時期は南風が強い日が多く、
長期的な天気予報を眺めても、サシバ観察に適した、日はあまりないようだ。ただ南風が強くなるのは、昼頃からという日が多く、午前中にチャンスがありそう
だ。この日は8:45−10:15笛田公園で観察したが、弱い北西の風が吹いていて、寒くもなく、絶好の条件と思われた。結局サシバは見られなかったが、
ノスリが1羽、上空を旋回するのが見られた。徳島あたりでは、この時期渡りの主役はノスリで、一日に200羽以上の渡りが見られることがあるようだが、鎌
倉のノスリからは渡りという実感はなにも得られず、ただ悠然と旋回していた。アオゲラのけたたましい声を聞くのも、随分ひさしぶりのように感じられた。
ネットを眺めていたら、確か10年以上前の文献であるが、小笠原、伊豆七島の殆どの島で、サシバの存在が確認されており、かなりの数の島で繁殖も確認され
ているとのことであった。今の時期にやってくるサシバは、どこに向かうサシバなのであろうか?
3月19日(木) 晴
この日も南風で、期待薄の天候で
あったので、場所の下見もかね、辻堂海浜公園で9:45−10:45観察した。この場所で観察するのは初めてであるが、湘南平を通過したサシバが鎌倉に向
かう途中、当然ここの上空を辿ることが予測される場所である。駐車場が混んでいるうえ、高いのでこれまで敬遠してきたが、広い芝生の広場があって、ベンチ
なども完備しており、春のサシバの観察場としては絶好な場所だと思われる。 芝生には、ツグミやムクドリが群れていたが、この日は他に収穫はなかった。
3月21日(土) 晴
気温が低くやや寒かったが、無
風、快晴、絶好の条件だと思われた。9:00−10:30逗子の披露山公園で観察。昨日は高知で25羽のサシバが通過している。
桜の花はまだ開花まで少し間がありそうだが、ヤブ椿の花が満開で、メジロやウグイスのさえずりが聞こえていた。いかにもサシバが現れそうな雰囲気であった
が、残念ながら、一羽も発見できなかった。披露山公園は逗子八景の一つで、風光明媚、何時来ても素晴らしい公園である。ただ最近、湘南平と同様、サシバに
出会える確率が、かなり低下しているように感じる。近隣の開発が進み、マンション建設の大きなクレーンが、眼前に見られるが、そんなことが影響しているの
だろうか?

3月24日(火) 曇
8:30−9:30 笛田公園に
て観察。 既に高知、徳島、奈良で春のサシバが観察されており、鎌倉も時間の問題という感じはするが、このところどうも天候が芳しくない。この日も午後か
らは南風が予想されたので、早い時間帯での観察となった。笛田公園は北西の風がゆるやかに吹いていて、とても寒かったが、人出もなく、ひょっこりとサシバ
が現れそうな予感があった。しかし、この日もサシバの姿をとらえることはできなかった。 鎌倉山の桜はまだ1分咲きといったところだろうか?。この日はモ
ズの姿が目に付いた。
3月25日(水) 曇
9:00−10:00 湘南平展
望台で、今シーズン初めて観察した。風は殆ど無風であったが、止まって観察していると震え上がるような寒さであった。遠くは春霞?が立ちこめていて、箱根
も丹沢も江ノ島も見えなかったが、低空でふわったやって来る、春のサシバを観察するには、決して悪い条件ではないように思われた。9:38海側の中空をサ
シバが1羽通過した。シーズン6度目の観察でやっと目にするサシバはシルエットで今一つ、印象が鮮明ではなかったが、海岸沿いに、まっすぐ鎌倉方面に向
かったようであった。湘南平の過去の実績からみて、9時台と11時台が好調だと思われたので、1時間休憩して11時から観察を再開しようかと思っていたと
こ
ろ、雨が降り出して断念せざるをえなかった。
他に9:30頃正体不明のタカが上空を旋回したのでデジカメを取り出し写真判定に持ち込もうとしたが、残念ながら上手く撮れていなかった。

3月26日(木) 晴
9:30−11:00 長者ヶ崎
駐車場にて観察した。北の風が緩かに吹いており、快晴で気温が低いことを除き、春のサシバを観察するにはこれ以上ないという程の条件だと思われた。上空を
移動する鳥影も多く、緊張感を持続しながら観察したが、ノスリとミサゴが現れただけで、サシバは1羽も発見できなかった。かなり根をつめて観察し疲れたの
で、湘南国際村で、休憩して帰宅途上の12:10、自宅に程近い八雲神社の裏手から超低空でサシバが1羽現れ、住生住宅の方向に飛び去るのを目撃した。
肉眼で運転中であったが、距離も近くサシバに間違いはないと思われる。その後笛田公園で、30分程観察したが、南風が強くなり、二匹目のドジョウは現れな
かった。当然来ると思うところには現れず、まさかというところに出現するのが春のサシバの不可解なところである。
3月27日 (金) 晴
8:45−11:15 江ノ島駐
車場にて観察。北風が3m程度吹いており、とても寒かった。9:05サシバ1羽が防波堤の海側上空を通過した。一昨日はシルエット、昨日は肉眼での観察で
あったが、この日は双眼鏡ではっきりとサシバ
の輪郭をとらえることが出来た。3月に3日連続でサシバに出会えたのは、とてもラッキーなことである。上空に上昇気流が出ているのか、トビ柱やカモメ柱が
絶えず見られた。まだまだやってきそうであったので、11時過ぎまで粘ってみたが、その後はミサゴがやってきただけで、サシバの姿をとらえることはできな
かった。


それにしても3月にやって来るサ
シバは灼熱の東南アジアから過酷な旅を終えて、やっと目的地に到達寸前だというのに、気温が4度などという状態の日が続くと、果たして餌を十分見つけるこ
とができるのか、よそごとながら心配になる。しかし最近野生化を目指して佐渡で放鳥されたトキの採餌能力は想像したよりはるかに高いそうだし、サシバも想
像以上にたくましいのだろう。
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4月1日(水) 曇
朝方降っていた雨があがったの
で、10:45−12:00 笛田公園で観察した。北東の風が3m程度、まだかなり寒かった。昨日目を酷使し体調も今一だったので、この日は写真撮影を主
体に殆ど肉眼で観察した。11:11中空を鎌倉山方面から源氏山方向に向かって一直線に飛ぶ鳥が、サシバのように見えたが、肉眼では断定できなかった。源
氏山付近で一度旋廻し、北東に消え去ったが、長谷での観察結果が気になるところである。(当日該当時間に長谷配水池では観察者なしとのこと故、タカSPと
する。)グラウンドにはカワラヒワやツグミが群れており、ハクセキレイが2
羽盛んに飛び回っていた。

4月2日(木) 晴
北の風が8m程度吹いており、サ
シバは期待薄であった。11:00−12:00藤沢の新林公園で観察した。桜がほぼ満開で、人手がかな
り多かった。この公園の裏手の丘はそれ程広くはない
が、人が立ち入れない森林になっており、
渡りの途中のサシバが休息するには、絶好な場所だと思われる。強風を避けて、止まっているサシバがいないか注視して見たが、それらしい影は見当たらなかっ
た。サシバ以外のタカの出現に期待したが、全く動きはなかった。日溜りで、のんびりと写真の練習、成果はなにもなかったが、こんな日も悪くはない。
4月3日(金) 晴
昨日は笛田公園にも行ってみた
が、北風が強く、サシバは飛ば
ないだろうと思っていたところ、長谷配水池で1羽観察されたとのこと。条件が悪くても、サシバは着実にどこかを渡っているようだ。鎌倉の天気予報では北風
8mとなっ
ていたが、実績は3,4mであった。
この日は出来れば眼下を飛んで行くサシバの写真を撮ろうと思って、湘南平展望台で9:30−12:00観察した。サシバを上から撮影できる場所、秋なら峯
山も考えられるが、春は湘南平しか思い浮かばない。サシバの写真撮影はあきらめていたのだが、一眼レフを購入したことで、サシバの見方が少し変わってきた
ような気がする。
展望台は南西の風が緩やかに吹いていたが、初めはかなり寒かった。桜はほぼ満開で、ものすごい人出、駐車待ちの車が行列していた。やむなく、すこし下の駐
車場に止
めて歩いたので、かなり疲れて、しばらくは集中して観察ができなかった。富士山は3合目あたりまで雪をかぶっていたので、富士山麓泊のサシバはいないだろ
うと思われた。サシバは10:47.11:04.11,42に、ほぼ頭上を各1羽通過していった。他にはチョウゲンボウが一羽出現した。サシバは予想外に
高く飛んでいったが、なんとか1羽の写真をとることが出来た。サシバのつもりで撮影したのだが、写真でみるとどこか違うような気がして、とまどってい
る。(結論として、11:42に通過したのは、サシバではなくハヤブサであった。)
4月4日 (土) 晴
既に高知では昨年春の実績のほぼ
9割に当たる3451羽が通過している。高知と鎌倉の関連は、残念ながら良くわからない。とはいえ無関係ではない筈だし、鎌倉にもそろそろ群れがやって来
ても良い頃だと思うのだが、どうも天候条件がいまひとつパッとしない。
この日の天気予報では9時の時点で南風、3,4mという予報であった。こんな風が終日続くなら、笛田公園は、ノーチャンスである。ただ6時時点の実績は北
の風が2mとなっていたので、風の変わり目のワンチャンスにかけ、8:45−9:45観察してみた。桜が満開で、寒くもなく、風向きを除けば、絶好の条件
に思われた。しかしハプニングは起きなかった。野球やサッカーで賑わう、週末の笛田公園は他の鳥は全く期待できないのが残念だが、目的が運動公園なのだか
ら仕方がないのだろう。
4月5日 (日) 曇
9:45−11:30 笛田公園
で観察した。東北東の風が4m程度吹いていたが、それほど寒くはなかった。こんな日、サシバは鎌倉山の稜線にそって飛んで行くので、遠くて観察がしにく
い。南側を飛ぶことはないだろうと思っていたが、10:05なんと野球場の北側を超低空でサシバが1羽通過した。梶原方面からやってきたようだ。その後
10:45鎌倉山の上空を飛んだ1羽がサシバのように思われたが、遠くてはっきり確認できなかった。このタカspは最終的には源氏山方向に向かっていっ
た。
北風はだんだんと弱まり、条件的には良くなってきたので、期待したが、その後サシバは1羽も現れなかった。
4月6日 (月) 晴
9:00−11:00 笛田公園
で観察。北風が緩やかに吹いていて、寒さを感じることもなく絶好の条件だと思われた。鎌倉山の桜は満開の状態を保っていたが、まだ散る気配もなく、桜を見
るのにも絶好だと思われた。相当集中して観察したが、サシバは1羽も現れなかった。unbelievable!
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サシバは夜も飛んでいるのでは?
皆さんは、そんな疑問を持たれた事がありますか。Noというのが常識的な理解だろうと思われますが、秋と春に見られるサシバのバランスから見て、春のサ
シ
バが夜飛んでいる可能性も排除できないように私には思われるのです。それではサシバは夜飛ぶ能力があるのか?これはYesだと思われます。サシバは小鳥の
ように他の鳥から襲われる危険はありませんので、敢えて夜飛ぶ必然性はないように思われますが、沖縄本島から300km陸地のない渡りの中継基地である伊
良部島辺りでは風などの影響で、夜間に到着するサシバもしばしば見られるようです。風向きなどの飛行条件が良い場合、夜飛ぶサシバがいてもおかしくはない
のではと思う
のですが。それでは、夜飛ぶ鳥を観察する方法はないのでしょうか? ゴイサギやホトトギスのように鳴きながら飛ぶ鳥であれば、比較的容易にキャッチできる
のでしょうが、一般にはかなり難かしそうですね。
4月9日は春のサシバシーズンで唯一の満月で、今夜(6日)も
月がきれいに出ていましたの
で、半分は洒落、半分は真面目に月を眺ながら、月面を横切って行く鳥影がないかどうかを探してみました。残念ながらこの日はそれらしきものは発見できませ
んでしたが、夕闇の中、月に向かってサシバを探してみるのもおつなものだと思いますが。


すっかり新緑の季節になった。サ シバはまだ日本のどこかを渡っているようだし、5月末まで断続的に渡っているという可能性がある。とても興味深いが、残念ながらそれまで観察を続ける気 力、体力はない。区切りの良いところで、本日をもって、今シーズンの観察を一応終了することにしたい。
今年の春は合計30羽のサシバを 観察することができた。これはまあまあのレベルではあるが、到底満足できる数字ではない。
私の体力でも秋には150羽程度 は観察できるのだから、最低でも100羽は観察できて、然るべきなのに、現実は秋の5分の1程度しか見られないのが、春のサシバの不可解なところで ある。実際に観察は出来ないとしてもその原因が解明できればそれなりに納得できるのだが、今年も原因解明のヒント的なものが若干得られたとはいえ、決定的 なものは何一つ掴むことは出来なかった。
それでもサシバを探しながら、日
本の春の美しさに触れることができた。たまたま7回も通うことになった湘南平の自然、それは春という季節の中で7段階のそれぞれ趣きをことにする今まで全
く気がつかなかった自然の美しさであった。
今シーズンも多くの方から色々と
ご指導をいただき、深謝いたします。サシバだけでなく、カメラの技術的なことについても懇切丁寧なアドバイスをいただき、ありがとうございました。
5月、6月は鳥の声の収録と10年ぶりに写真にもチャレンジして見ようと思っております。アンニョン、サシバ。また逢う日まで。
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