日時:平成14年9月28日
場所:天理市保健センター
はじめに
30年ほど前から、慢性副鼻腔炎が減少する一方、アレルギー性鼻炎が増加し、近年は,特に春先になると、スギ、ヒノキの花粉情報がテレビで報じられるほどポプラーな疾患となった。鼻アレルギー診療ガイドライン改訂第3版(1999)をもとに、一般臨床におけるアレルギー性鼻炎の診断と治療についてまとめてみた。
定義、診断、分類
アレルギー性鼻炎は鼻粘膜のT型アレルギー性疾患で、原則的には発作性反復性のくしゃみ、水性鼻漏、鼻閉を3主徴とする。
病名として、鼻過敏症、鼻アレルギー、アレルギー性鼻炎、されに花粉症などが用いられている。鼻過敏症は特異的および非特異的過敏症反応による疾患を意味し、範囲が広い。鼻アレルギーは、鼻腔ばかりか副鼻腔のアレルギーを含む。花粉症は花粉抗原による季節性アレルギー性鼻炎であるが、アレルギー性結膜炎を高頻度に合併している。保険診療ではアレルギー性鼻炎が用いられている。
鼻炎には、アレルギー性鼻炎以外に、急性鼻炎(鼻かぜ)、慢性鼻炎、血管運動性鼻炎、好酸球増多性鼻炎、アスピリン過敏症、乾燥性鼻炎、薬物性鼻炎、心因性鼻炎、妊娠性鼻炎、味覚性鼻炎、刺激性鼻炎、放射線性鼻炎、萎縮性鼻炎、特異性肉芽腫性鼻炎などがある。
アレルギー性鼻炎発症のメカニズム
遺伝的素因が重要。アレルギーにならない素因が優性に遺伝するといわれている。
IgE抗体産生が重要。抗原の粘膜内進入により、鼻関連リンパ組織内で産生される。抗原は抗原提示細胞に貪食され、これにより活性化されたU型ヘルパーT細胞(Th2)とBリンパ球の相互作用が最も重要である。
吸入型抗原が大部分で、食物抗原のアレルギー性鼻炎発症への関与はほとんどない。
IgE抗体が好塩基球と肥満細胞に固着することで感作が成立する。抗原のチャレンジにより、これらの細胞表面で免疫反応が起こりケミカルメデイエーターが遊離される。このケミカルメデイエーターが標的組織を刺激して起こる局所アナフラキシーが鼻アレルギーの発症をきたす。
好塩基性細胞から遊離されたヒスタミンが三叉神経末端を刺激し、くしゃみ反射をおこす。その刺激はまた副交感神経に伝達され遠心的に鼻粘膜に戻り、その末端からアセチルコリンが分泌され、鼻腺や血管に作用する。鼻腺への刺激は鼻汁過多となる。
一方、肥満細胞から放出されるヒスタミン、ロイコトリエンは血管に働いて血管透過性の亢進や静脈叢における血管拡張、血流鬱滞などをおこし、されに鼻粘膜の腫脹をおこして鼻閉がおこる。
鼻閉はアナフラキシー反応に続いて数時間後に起こる遅発性反応によってもおこる。走化性物質により好塩基球、好中球、リンパ球などがアレルギー局所へ浸潤し、それらが起炎性物質を放出し、炎症性の粘膜腫脹をきたし鼻閉がおこる。
検査、診断法
問診、鼻鏡検査、頭部X線検査、血液・鼻汁好酸球検査、血清IgE定量、皮膚テスト、血清IgE抗体定量、誘発テストなどがあるが、症状、経過を的確に聞き取ることが診断のポイントである。他種の鼻炎との鑑別が必要である。特に、鼻かぜ、副鼻腔炎など、アレルギー性鼻炎と治療法が異なるものは鑑別されなければならない。鼻汁中好酸球検査が有用である。血液好酸球や血清IgEはアレルギー性鼻炎単独では正常なことが多く診断の決め手とはならない。
原因抗原の検索には血清IgE抗体定量が侵襲が少なくて好い。高価な検査なので、通年性か季節性か、季節性ならば花粉の飛散時期に応じて、検査抗原を選ぶ。血清抗体が陽性でも、抗体価が低い場合は発病しないので、すべて原因抗原であるととらない。皮膚テストを行っている医療機関はあるが、誘発テストは一般臨床ではあまり行われていない。
アレルギー性鼻炎の重症度は、くしゃみ発作、鼻漏、鼻閉の程度をそれぞれ4段階に評価し、鼻閉の程度とくしゃみ発作又は鼻漏の程度の組み合わせによって、最重症から無症状までに分類している。
治療
治療の目標は、完治はほとんど期待できない疾患であり、症状の寛解ないしは軽減を目指す。
1、患者とのコミュニケーション
病気や治療法などの理解を深め、生活指導をする。
2、抗原除去と回避
室内ダニの除去や、花粉の回避など
3、薬物療法
@、ケミカルメデイエーター遊離抑制薬(肥満細胞安定薬)
インタール、リザベン、ソルファ、アレギサール、ペミラストン
効果はマイルドで1〜2週間の連用で効果が現れる。眠気はない。
ソルファ、インタールの点鼻用がある。
A、ケミカルメデイエーター受容体拮抗薬
1)抗ヒスタミン薬
第1世代:ポララミン、タベジールなど
第2世代:ザジテン、アゼプチン、セルテクト、ニポラジン、ダレン、アレジオン、エバステル、ジルテック、アレテック、アレロック、アレグラ、
タリオン、クラリチンなど
一般に使用頻度が多い。中枢鎮静作用の軽いものが好まれている。ザジテン、リボスチンの点鼻用がある。
2)抗トロンボキサンA2薬:バイナス
鼻閉に有効
3)抗ロイコトリエン薬:オノン
鼻閉に有効
B、Th2サイトカイン阻害薬:アイピーデイー
IgE抗体産生を抑制するとされるが、作用は弱い。
C、ステロイド薬
局所ステロイド薬が一般的である。アルデシン、ベコナーゼ、ナイスピー、リノコート、フルナーゼ、フルタイド、シナクリンなどにお点鼻用がある。
経口的には、セレスタミンが症状の強いときに用いられる。
花粉症に対するデポステロイドの筋注は、他の治療が無効のときに限って認められている。
D、自律神経作用薬
1)α交感神経刺激薬:ナシビン、ナーベル、トーク、プリビナ、コールタイジン(副腎皮質ホルモン配合)点鼻用
鼻閉の一時的な改善を目的。乱用を避ける(特に小児)
2)抗コリン薬:アトロベント、フルブロンエアゾル
アレルギー性鼻炎や血管運動性鼻炎の水性鼻漏に対して用いる。
E、その他
ヒスタグロビン、アストレメジン、MS−アンチゲン、ノイロトロピン
効果は不確実
漢方薬:小青竜湯(麻黄中のエフェドリンが主作用と考えられている)
4、特異的免疫療法(減感作療法)
唯一、対症療法でなく、根本的な治療と考えられている。が、治療に長期間の通院を要することや、時に重篤な副作用のあることの割りに治癒率が高くないため、一般に普及せず、限られた医療機関でしか行われていないのが現状である。
5、手術
@鼻粘膜の縮小と変調を目的とした手術:レーザー手術、トリクロール酢酸塗布
A鼻腔通気度の改善を目的とした手術:粘膜下下甲介骨切除術、下甲介切除術、鼻中隔矯正術、鼻茸切除術など
B鼻漏の改善を目的とした手術:ビデイアン神経切断術、後鼻神経切断術、
治療法の選択
病型と重症度の組み合わせで治療のガイドラインが示されているが、画一的なものではないとされている。個々の症例に応じて選択されなければならない。
その他
1、妊娠
妊娠初期には原則として薬物投与は避ける。薬物投与がどうしても必要ならば,点鼻薬をごく少量用いる。
2、小児
アレルギー性鼻炎の小児用薬剤は種類が少ない。ドライシロップやシロップがあるのはタベジール、ポララミン、アリメジン、ベネン、ニポラジン、ペリアクチン、リザベン、アレギサール、セレスタミン、などである。最近の抗アレルギー剤には小児用のものはない。
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